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BRIAN SHINSEKAI「ピクチャー・オブ・ユー」に潜む新たな作品テーマ 歌詞やMVなどから読む

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 2018年1月のデビュー作『Entrée』以降、80年代ニューウェイブからの影響を引き続き持ちつつも、ベルリン/アムステルダムを拠点にするLeo Melcherts Jrと組んでチルトラップに挑戦した「Solace」や80’sディスコ/ファンク風の「三角形のミュージック」といった新機軸を取り入れた曲を次々に発表。新たなモードへと向かいつつあるBRIAN SHINSEKAI。彼が12月19日に最新配信シングル「ピクチャー・オブ・ユー」をリリースした。

 9月末に愛知県蒲郡市のラグーナビーチで開催された音楽フェス『AirAsia presents メ~テレ MUSIC WAVE「SUNNY TRAIN REVUE ~テレビがフェス作っちゃいました~」』で初披露され、プリンスやブルーノ・マーズ辺りに通じる華やかでファンキーなディスコサウンドとクラブミュージックの要素を融合させて「観客とより繋がりたい」という気持ちを伝えるようだった「三角形のミュージック」に続いて、「ピクチャー・オブ・ユー」でも顕著なのは、引き続き「ライブを意識した楽曲」になっていること。今回はライブ会場で観客が手を叩く様子が想像できるハンドクラップをビートに取り入れて、「三角形のミュージック」とは異なる種類のライブ感を生み出している。そこに欧州的なピアノポップスのコード感や、生感を大切にしたピアノの音色、80年代ニューウェイブ直系のエレクトロ/シンセポップサウンド、そして岡村靖幸を連想するやや湿り気のあるセクシーなボーカルが加わって生まれる全体の雰囲気は、陽だまりや春風のような優しい温もりを連想させる。

 また、歌詞では彼らしい緻密な筆致で「写真」をテーマにしたストーリーを描写。冒頭で〈君を探していたら風景ばかりが/3ギガのスライドショー〉と歌われている通り、ここでの写真はおそらくスマートフォンのカメラ機能で撮影したものも含む幅広いもので、多くの人々が共感できる間口の広いテーマ「君への恋/君への愛」が、今や誰もの生活に溶け込んでいる日常的なツールを使って表現されている。また、1番と2番の歌詞のコントラストも印象的で、1番では恋に夢中になっている瞬間の視点で描かれる歌詞が、2番では〈忘れられない時間が映し出すのは/儚いメモリー/やがて年老いた時/過去の喜びが君を救うように〉と、一気に時計の針が進んでいく。写真という「瞬間」を切り取って残すものを題材にしているからこそ、ファインダーやスマホをのぞき込んで写真を撮った瞬間と、その瞬間から過去のものになっていく写真の中の「君」、そしてだからこそ残り続ける何物にも代えがたい一瞬の尊さが、楽曲から立ち上がってくる。加えて、もうひとつポイントになっているのは、サビの〈May I take a picture picture/May I take & hold you〉という歌詞から伝わる、曲の主人公が「シャッターを押す作業」と「恋人を抱きしめること」を同じものとして捉えていること。「永遠の愛」という時を越えたテーマが、現代的な方法で表現されている。

 とはいえ、この曲で最も印象的なのは、『Entrée』では時に完璧主義的な表情も垣間見せながら、耽美で壮大なストーリーを描いていた彼が、今回の「ピクチャー・オブ・ユー」ではより日常に寄り添うような楽曲を作っているということだ。それを象徴しているのが、全編にちりばめられた温かいピアノの音と、「彼女の写真を撮りたいけれど風景ばかり撮ってしまうシャイな青年」という主人公の人物像、そして〈夢は格好つけたファンタジーじゃ手に入らないんだよ/その自然体の崩れた笑顔が世界を変えるよ〉という歌詞。『Entrée』の頃にこんな詞は書けなかったんじゃないかと思えるほど優しげで等身大の魅力に溢れたサウンド/歌詞が、ラブソングというテーマ性と相まって楽曲の間口の広さに繋がっている。

BRIAN SHINSEKAI – ピクチャー・オブ・ユー (Short Ver.)

 すでに公開されているMVでは、その雰囲気を再現するように、恋に奥手なカメラマンが女の子の笑顔を撮るために奮闘する様子をBRIAN SHINSEKAI自身が熱演。ここでも感じられるのは、完璧主義的な自分を捨てて「新しいことに乗り出そう、それを楽しもう」という雰囲気で、もしかしたらこれは、今の彼自身の気持ちとリンクしているのかもしれない。

 1月10日に公開されたスタジオライブ映像「TINY LOUNGE CONCERT」では、まるでヴィンセント・ムーンがPhoenixやArcade Fire、R.E.Mといった様々なアーティストを迎えて撮影したライブ映像シリーズ『A TAKE AWAY SHOWS』を思わせるようなラフな雰囲気で、キーボードに陣取ったBRIAN SHINSEKAIとバックを務めるROMANTIC TAMURA CHANによる2人編成でクラップなどを生かしたパフォーマンスを披露。また、その映像に加えられているインタビューには、BRIAN SHINSEKAIが飼っている愛猫「カール君」の話題や、Q&Aでのちょっとした勘違いで笑う様子などが収められ、彼の素の表情がより一層伝わるようなものになっている。

BRIAN SHINSEKAI / ピクチャー・オブ・ユー【Studio Live at ain’t no♯】

 この「ピクチャー・オブ・ユー」だけを取ってみても、BRIAN SHINSEKAIの音楽が紡ぎ出す世界観は、今まさに様々な形へと広がりつつあるようだ。そして「Solace」や「三角形のミュージック」が特にサウンド面での新たな興味を感じさせてくれるものだったとしたら、今回の「ピクチャー・オブ・ユー」は、彼が「日常の風景」「等身大のラブソング」に挑むことで、“新たな作品テーマ”の扉を開いていくような楽曲に仕上がっている。

■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。

■リリース情報
「ピクチャー・オブ・ユー」
配信:2018年12月19日(水)
配信リンク

オフィシャルサイト

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