THE ALFEE、倉木麻衣、AKB48、すぎやまこういち……ギネス記録を樹立したアーティストたち
このように日本の音楽関連のギネス記録をいろいろ調べるうちに感じたことがある。シニア世代の奮闘が、目立つのだ。
『ドラゴンクエスト』シリーズの音楽で有名なすぎやまこういちは、2016年に「最高齢でゲーム音楽を作曲した作曲家」として世界記録になった。当時は84歳だった。長唄、清元、義太夫など伝統芸能の邦楽であれば高齢の演奏者は珍しくないし、人間国宝になるなどしてしばしば報道されたりもする。それが、ゲーム音楽である点が興味を引くのであり、かつては新奇な遊びだったゲームも成熟したカルチャーになったのだなと実感する。
また、2015年にあらゆる音楽のなかで世界最高齢バンドと認定されたのが、日本の3人組だった。ヴィブラフォンの鍋島直昶、ピアノの大塚善章、ベースの宮本直介からなるゴールデンシニアトリオは総年齢248歳、平均年齢82歳で記録を樹立し、昨年にもライブ演奏をしている。さらに昨年、「最高齢のプロフェッショナルクラブDJ」と83歳で認定されたのが、DJ SUMIROCKだ。彼女は昼間、岩室純子として中華料理店で調理にたずさわる一方、夜は新宿歌舞伎町のクラブでターンテーブルを操るのだった。
故・遠藤賢司は、まだ40代半ばだった1991年に「史上最長寿のロックンローラー」と題したシングルを発表していた。ギネスブックに載った99歳の白寿ロックンローラーが歌う設定の同曲は、加齢をネタにしたある種のジョークだった。だが、今ではTHE ALFEEがザ・カンレキーズになって自らの年齢を笑いにしつつ、本来のバンド活動をこれまでと変わらず当たり前のように続けている。少子高齢化が進む日本社会では、頑張るシニアが珍しくない。そうした裾野の広がりから、シニアの記録更新も多く生まれるということだろう。
■円堂都司昭
文芸・音楽評論家。著書に『エンタメ小説進化論』(講談社)、『ディズニーの隣の風景』(原書房)、『ソーシャル化する音楽』(青土社)など。