星野源『POP VIRUS』はさらに多くの人々へと拡散していく 『紅白』披露の「アイデア」を観て

星野源『紅白』パフォーマンスを観て

 そしてソロとして出演した「アイデア」のパフォーマンスでは、メインステージだけでなく、ステージ奥の左右に設置された回転する2つの舞台を巧みに使ったステージを披露。弦楽隊4人によるストリングスを生かした『YELLOW DANCER』以降の王道サウンドを鳴らす序盤を経て、2番のAメロ部分からは右側の舞台が回転してSTUTSがMPCを叩き、星野源もそこに駆け寄っていく。続いてステージ中央でフューチャーベース風のシンセに乗せて三浦大知が担当した振り付けをダンサーが表現すると、その間に左の回転式ステージへと移動した星野源が、今度は真っ暗な空間の中で、ギターの弾き語りをはじめる。出演者も含む大人数での豪華絢爛な演出が多い『紅白歌合戦』において、暗闇の中でシンプルな照明を受ける姿は逆に新鮮で、そこから華やかなバンドサウンドに再び突入する終盤へと繋げることで、星野源の最も内省的な部分と、最もポップな部分の両方が表現されていくような感覚が生まれていた。アウトロではマリンバを自ら演奏し、ドラを鳴らして華やかな雰囲気のままでステージを終えた。

 このパフォーマンスを観て思い出すのは、複数のカメラの前を星野源が通り抜ける形で撮影された「アイデア」のMV。複雑な楽曲構成を視覚化したあの実験的な映像が、『紅白歌合戦』の舞台で表現されていく様子は、新種のポップウイルスが世代やジャンルを超えて広がりゆく様子を象徴するようだった。2019年2月からの5大ドームツアーを筆頭に、『POP VIRUS』はこれからますます多くの人々へと拡散していくのだろう。そうした作品の魅力を、音楽的にも視覚的にも巧みに表現した『紅白歌合戦』でのステージは、2019年以降の日本のポップミュージックにも、大きな影響を与えていきそうだ。

■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。

■リリース情報
『POP VIRUS』
発売:2018年12月19日(水)

初回限定盤A (CD+Blu-ray+特製ブックレット) ¥5,000(税抜)
初回限定盤B (CD+DVD+特製ブックレット)¥4,800(税抜)
通常盤 初回限定仕様 (CD+特製ブックレット)¥3,100(税抜)
通常盤 (CD)¥3,000(税抜)

<CD収録曲 >
1.Pop Virus
2.恋
3.Get a Feel
4.肌
5.Pair Dancer
6.Present
7.Dead Leaf
8.KIDS
9.Continues
10.サピエンス
11.アイデア
12.Family Song
13.Nothing
14.Hello Song

<初回限定盤付属映像(Blu-ray/DVD共通)>
・星野源 Live at ONKIO HAUS Studio
1. Night Troop
2. 肌
3. 桜の森
4. Snow Men
5. KIDS
6. SUN
7. 海を掬う
8. 恋
9. プリン
10. アイデア
11. Friend Ship

・創作密着ドキュメンタリー「ニセ明と、仲間たち」
星野源と友人によるコメンタリー付

初回限定盤A、B、通常盤 初回限定仕様付属特製ブックレット
ここでしか読めない5th Album『POP VIRUS』のロングインタビュー(聞き手:高橋芳朗)、
星野源によるエッセイ、全曲解説のほか、撮り下ろし写真を収録

『POP VIRUS』特設サイト

■ライブ情報
星野源DOME TOUR 2019『POP VIRUS』
2月2日(土)京セラドーム大阪
2月3日(日)京セラドーム大阪
2月16日(土)ナゴヤドーム
2月17日(日)ナゴヤドーム
2月23日(土)札幌ドーム
2月27日(水)東京ドーム
2月28日(木)東京ドーム
3月10日(日)福岡 ヤフオク!ドーム

■関連リンク
星野源 オフィシャルサイト

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