石井恵梨子のチャート一刀両断!
星野源、2018年最後のチャートで首位獲得 『POP VIRUS』は“根っこ”を語るアルバムに
参考:2018年12月31日付週間アルバムランキング(2018年12月17日~2018年12月23日・ORICON NEWS)
2018年最後となるオリコン週間アルバムランキング。1位に輝いたのは初登場の星野源『POP VIRUS』です。発売当日、デイリーランキングで16.6万枚を記録した本作は、その後も売れに売れまくり、1週間で27.8万枚のセールスを誇る今年度屈指の大ヒットアルバムとなりました。いやー、凄い!
世間的なイメージでいえば、親しみやすさも含めて好感度MAX。音楽番組でダンサーを従えて「どうもー! 星野源でーす!」と笑っている好青年の姿が思い浮かぶでしょう。昨今のテレビ業界における(音楽番組だけではなくドラマともリンクした)彼の活躍は凄まじく、2016年の後半から昨年にかけて「恋」ダンスが全国に浸透したのは周知の事実です。
また今年に入れば小学生たちが〈どどどどどどどどど ドラえもん〉と合唱し始め、NHK連続テレビ小説『半分、青い』にハマった老若男女が「アイデア」を口ずさむようになる。やることなすことすべてヒットしている状態は、無敵のポップスターのそれですね。だから1週間で30万枚に近いセールスというのはまったく不思議なことではありません。でも、しかし……。
かつてを知る音楽ファンから見れば、“あの”星野源なんです。2000年代にインストバンド・SAKEROCKでキャリアをスタートさせ、2010年に『ばかのうた』でソロデビューした彼の歌には、メインストリームの姦しさからそっと距離を置く静けさがありました。もっといえば諦念に近いニュアンス。“いつかいなくなる自分”を知っていて、その事実すらドライに笑い飛ばすような、穏やかな悲しみのある歌うたい。少なくとも私はそう評価していたのですが、そこから闘病を経て一気にアッパーな方向に進んでいったのは納得がいきます。“いつかいなくなる”イメージを超越できたなら、“今この時代”のエンタメを本気で引き受けるほうが面白い。その後『YELLOW DANCER』が生まれたのは、なんとも小気味よいストーリーだったと思っています。
そこから3年で生まれた『POP VIRUS』。「恋」「Family Song」「アイデア」などの大ヒット曲を含む作品です。ただしこれ、「どうもー! 星野源でーす!」という笑顔がはちきれんばかりに炸裂するようなイメージの作品ではないんですよね。特に中盤の感触はソロ初期に近い。すなわち、穏やかな悲しみや諦念の漂っている音楽。そのうえで、アレンジが素晴らしく現代的で鮮烈! びっくりしました。