星野源とマーク・ロンソンに共通する音楽へのリスペクト エンターテインメントに溢れた幕張2マン

星野源とマーク・ロンソンに共通する音楽へのリスペクト エンターテインメントに溢れた幕張2マン

 星野源とマーク・ロンソンが出演したイベント『LIVE in JAPAN 2018』が12月17日、千葉・幕張メッセ国際展示場9〜11ホールで開催された。“海外、国内のトップアーティストのダブルヘッドライナー”という新たな試みとなった本公演。70〜80年代のルーツミュージックを現代的なポップミュージックに昇華し続ける両者のステージは、音楽に対するリスペクトと華やかなエンターテインメントに溢れる、大充実の内容となった。

 最初に登場したのは、2016年のサマーソニック以来、約2年ぶりの来日公演となるプロデューサー・DJ・アーティストのマーク・ロンソン。レディ・ガガ主演の映画『アリー/スター誕生』のメイン楽曲「シャロウ〜『アリー/スター誕生』愛のうた」の制作に参加するなど、「アップタウン・ファンクfeat. Bruno Mars」(2014年)の世界的ヒット以降も順調にキャリアを重ねている彼のアクトは、マイリー・サイラスをフィーチャーした新曲「ナッシング・ブレイクス・ライク・ア・ハート」からスタート。さらに“ダンス・ミュージックがさかんな最高な都市へのオマージュ”をコンセプトにしたディプロとの新ユニット“シルク・シティ”の、デュア・リパをボーカルに迎えたシングル「エレクトリシティ」につなぐ。その後も、ソウル、ディスコ、ハウス、ヒップホップ、エレクトロなど時代と地域を超越したトラックを巧みにエディットしながら、極上のダンスミュージックを生み出していく。「Make some noise!」と叫び、クラップを要求するなど積極的にオーディエンスを煽りまくるステージングも印象的だ。

 最初のピークを演出したのは、マイケル・ジャクソンのトリビュート・ミックス。「今夜はドント・ストップ」「ビリー・ジーン」などをつなぎ、観客の歓声を集める。さらにエイミー・ワインハウスのソウルフルな歌が心に響く「ヴァレリー」も。そして、フロアをもっとも沸かせたのはやはり「アップタウン・ファンク」。ドゥーワップ的なコーラスが聴こえてきた瞬間に大歓声が沸き起こり、80’sダンスミュージックをアップデートさせたトラックによって会場全体が巨大なダンスフロアに変貌した。

 「大好きなクリスマスソングを」というMCとともに放たれたラストチューンはジョン・レノン&ヨーコ・オノの「ハッピー・クリスマス(戦争は終わった)」のカバーだ。来日直前にリリースしたばかりの新曲で、マイリー・サイラスと、子供のころからの親友ショーン・レノンが参加したこの豪華楽曲、マークのセットは終了。極上のファンクネスに貫かれた選曲、“絶対にこの時間を盛り上げてやる!”という気合いに溢れた素晴らしいプレイだった。

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マーク・ロンソン
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 星野源のオープニングナンバーは、マーティン・デニーの「Firecracker」。YMOがカバーしたことでも有名なこの曲は、星野自身のルーツミュージックでもある。マリンバの演奏も相変わらず切れ味抜群だ。さらに「地獄でなぜ悪い」を高らかに歌い上げたあと、最初のMC。

「ライブするのはツアー以来、ほぼ1年ぶり。今日は楽しみにしてきました! そしてマーク・ロンソン、最高でしたね!」「年末ではありますが、明日は新しいアルバムのフラゲ日なんです。忙しい日々を過ごしていると思いますが、いろいろ忘れて、楽しんでいただけると嬉しいです」

 続く「桜の森」は、星野、長岡亮介のギターカッティングセッションからスタート。日本的な叙情性とソウル、ファンクのエッセンスを取り入れたアンサンブルが鳴り響き、観客は手拍子で応える。ホーンセクションを交えた大編成のバンドなのだが、軽妙にしてしなやかなグルーヴが心地いい。さらにニューアルバム『POP VIRUS』の収録曲「肌」をライブ初披露。ギター、ドラム、ストリングスがそれぞれ異なるビートを刻み、ソウルフルかつトライバルなアンサンブルへとつなげるこの曲は、ポップと独創性を高いレベルで組み合わせてきた星野源の真骨頂と言っていい。このブッ飛んだ楽曲をエンターテインメントに結びつけるセンスはやはり別格だ。

 「久しぶりのライブでどうなるかと思ったけど、めちゃくちゃ楽しいです! みんながバラバラの動きで好きなように踊ってくれてるのも嬉しい。バラバラに楽しんだ後は、みんなで同じダンスを踊ってみるのはどうでしょうか?」という言葉に導かれたのは、大ヒット曲を連発。まずは、エキゾチックなイントロ、高揚感を誘うメロディライン、圧倒的な解放感をたたえたバンドサウンドが鳴り響き、ほとんどの観客が揃いの振り付けで踊った「恋」。そして、“ジーッ”というアナログシンセのノイズ音からはじまり、いきなり真夏の日差しの下に誘い込まれるような音像によって、フロア全体の温度がグッと上がった「SUN」。どちらもまちがいなく星野の代表曲であり、10年代を象徴するナンバーなのだが、ポップスのセオリーを逸脱するようなアレンジ、サウンドメイクには(何度ライブで聴いても)ビックリさせられる。このバランス感覚もまた、彼の音楽の大きな魅力なのだ。

 ここで星野は再び、マーク・ロンソンについて話し始める。マイケル・ジャクソンのメドレーで思わず胸が熱くなったこと。『YELLOW DANCER』を制作しているとき、コンビニで「アップタウン・ファンク」を聴き、「こういう音楽が受け入れられるなら、僕が作ってるアルバムも大丈夫かもしれない」と思ったこと。さらに3年経って、『POP VIRUS』に辿り着いたこと。その言葉からは、自らのルーツを新たな音楽として昇華してきた星野、マーク・ロンソンの強いつながりがはっきりと伝わってきた。

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星野源
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 そしてライブ初披露となる「アイデア」、『YELLOW DANCER』収録のダンスチューン「Friend Ship」で本編は終了。アンコールに応えて再びステージに登場した星野は「Week End」を披露し、『LIVE in JAPAN 2018』はエンディングを迎えた。日本、アメリカでポップミュージックの先端を担うアーティストがお互いのスタイルをまっすぐにぶつけ合う、きわめて有意義なイベントだったと思う。

(写真=マーク・ロンソン:©︎Masanori Naruse、星野源:西槇太一)

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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