星野源、2018年最後のチャートで首位獲得 『POP VIRUS』は“根っこ”を語るアルバムに

 俎上に載せたいのは5曲目の「Pair Dancer」。まさに『ばかのうた』時代を彷彿とさせる朴訥としたミドルテンポです。でも単なる弾き語りではなく、ハイハットや効果音が印象的なトラックは海外のトラップやビートミュージックを意識したものになっている。ただのバラードとはいえず、ちょっとレゲエのような雰囲気もあって、なんともジャンルレスな、それでいて日本語の歌モノとして成立するナンバーなんですね。あまりにさりげないからさらっと聴き流してしまいそうになるけど、こういう曲を書く人が日本のエンタメの頂点にいるって、かつてなかったことじゃないでしょうか?

 『POP VIRUS』のジャケットは、心臓から咲いた花。でも、どう見ても大事なのは“根っこ”の部分ですよね。ファンクやソウルといった音楽的ルーツの話も当然あるだろうけど、星野源という個人がどんな根っこを持って今ここにいるのか、そこを改めて語っている1枚。そんな作品がここまで爆発的に売れていることに拍手喝采を贈りたい気分です。

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

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