PrizmaXはホリックとの絆を支えに“Nonstop”で進んでいく AiiA 2.5 Theater Tokyoレポ
期待と不安。
12月15日、AiiA 2.5 Theater Tokyoに詰めかけたホリックたち(PrizmaXファンの愛称)の脳内に浮かんでいたのは、その二言に尽きるのではないだろうか。
ハリウッド大作『レディ・プレイヤー1』の公開を皮切りに、役者として目覚ましい活躍を見せる森崎ウィンを擁するダンス&ボーカルグループPrizmaX。この夏にメンバー4人の新体制で動き出してからは、『SUMMER STATION』『PotodamaX』といったイベント出演や各メンバープロデュースの楽曲連続配信もあったが、正式なワンマンは約半年ぶりとなる。今のPrizmaXは一体どんなモードで、どこに向かおうとしているのだろうか。本稿では、この日行われた公演のうち、1部を中心に振り返りたい。
DJでもあるパフォーマー島田翼がセレクトしたハウス系のBGMから、タバコに火を着けるSEを挟み、MCなし、全19曲ぶっ通しというコンセプトの『PrizmaX Nonstop』が幕を開けた。オープニング曲はその翼のプロデュース曲「rewind」だ。
この日まず驚かされたのが、グループの顔であるウィンの歌声だった。譜割の細かいこの「rewind」から泣きのバラード「Never」、壮大なスケール感を見せる「South Cross」(後述)、ポップな中にも生々しい感情が滲む「I hate you」(後述)といった楽曲まで。柔らかみのあるハイトーンボイスが彼の持ち味だが、単に歌で担う音域を広げただけではなく、表現する感情の幅を一気に広げたその歌声は、包容力と力強さを兼ね備えたものへと進化を遂げていた。役者としての活動も近年ないほど多忙と思われる中でのこの変化には正直、意表を突かれたようにすら感じたものだ。
そしてリーダーでありラッパーの清水大樹やパフォーマーの島田翼、福本有希を含め、いっそうタイトに進化したダンスパフォーマンスも目を引いた。これは実力派ダンサーをゲストに迎えた前回のワンマン『PrizmaX Hall Tour Level 7 ~FUSION~』でも感じたことだが、振りのシンクロ感、躍動感がぐっと増した印象だ。2曲目「It's Love」からは、そのLevel 7のダンサーから(w-inds.らとの仕事で知られる)MASATOやSHOHEIが参加。この日は翼、有希、ダンサーズのソロをフィーチャーするコーナーもあり、じゃれ合いながらも時折火花を散らすような激しいパフォーマンスを見せていた。ほかにも、エキゾチックなムードを漂わせる「Orange Moon」では、スカーフを(おそらく女性に見立てた)小道具として使い、なまめかしい空間を作り出していたのも印象深かった。
メンバーの仲のよさが伝わる、ゆるめのMCが持ち味でもある彼ら。MCなしと謳ってはいたが曲と曲のブリッジ部分でしゃべりだす者も多く、有希とウィンが“どちらがホリックを好きか”で小競り合いを繰り広げるうちに次の曲がスタートしてしまい、司令塔の大樹に「歌え!!(笑)」とツッコまれたシーンでは、客席から盛大な笑いが起こっていた。そしてこのライブで導入された秘密兵器(?)が、マイクを持たないパフォーマーのヘッドセットだ。翼が「まだ行けんだろ? ホリック!!」と会場を熱く煽れば、チャラ男キャラの有希が「ハニーたち、今日は僕らと何しにきたの?」と問いかけ、ホリックが「デート!!」と答えるくだりでも、ホリックたちを飽きさせることがなかった。
この日の会場であるAiiA 2.5 Theaterは、2015年に彼らのワンマンライブ‟Level”シリーズをスタートさせた場所でもあるのだが、この日は終盤の「Someday」(2部では「Mysterious Eyes」)でその 『PrizmaX Level 1 〜アイアシアターで会いアSHOW〜』の演出を思い出させるかのように客席後方の階段からメンバーが登場するシーンがあり、ホリックたちと握手やハイタッチをしたり、ペンライトを借りて一緒に踊ったりと会場は大盛り上がりに。ウィンが曲中で1人の観客をロックオンして目を見つめながら歌ったりするおなじみの光景もあり、この密な距離感も、ホリックたちとのふれあいを大切にしてきたPrizmaXのステージならではの魅力といえる。
この日のステージで印象深いシーンはいくつもあったのだが、各メンバーのプロデュース曲を中心に、より4人の個性をステージに反映させていたのは特徴的だった。近年ファンクやドゥーワップといったサウンドをリバイバル的に取り入れてきた彼らだが、翼プロデュースの「rewind」は90年代にブームを呼んだUKガラージの流れを汲んだもので、才気溢れるダンサーであり、ディープな音楽マニアでもある彼のセンスとこだわりが光っていた。この日、時折歌声も聴かせていた有希のプロデュース曲は、ウエディングソング的な王道のラブバラード「South Cross」。自身が作詞を手掛けた同曲の歌詞では意外にロマンチスト(?)な彼らしく、ストレートで一途な愛のメッセージを伝えていた。X-tra a.k.a.清水大樹としてソロでも活動中の大樹は、ドープなヒップホップナンバー「Candy」でメンバー全員をバックダンサーのように従えつつ、クールなラップで会場をアンダーグラウンドな空気感に一変させた。メンバーの名前をアナグラムで盛り込んだリリックや、ホリックにメッセージを送るような振りなども、グループ愛の強い彼らしいアイデアだと改めて感じた。きわめつけは、ウィンプロデュースの「I hate you」。コーラスを幾重にも重ねたポップなサウンドにのせ、“自分のもとを去ってしまった人”への愛憎や後悔といった複雑な感情を歌い上げ、鮮烈なインパクトを与えていた。最近のインタビューで「ドキュメンタリーをディズニーにしたい」とも語っていたが、自らのリアルな悩みや葛藤をポップなエンターテイメントへと昇華させる手腕には舌を巻いた。