>  >  > 椎名林檎『(生)林檎博'18-不惑の余裕-』レポート

椎名林檎のライブにはエンターテインメントの全てが含まれていた 『(生)林檎博’18-不惑の余裕-』

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 東京事変のメンバー浮雲(長岡亮介/ぺトローズ)によるピチカート・ファイヴ「東京は夜の七時」のカバーを挟み、ブラックベルベットにラインストーンが施されたワンショルダーのマイクロミニドレスに着替えた椎名が再登壇。コンガが効いたアフロビートの「長く短い祭」を浮雲とデュエット&ダンスしながら花火を打ち上げ、アニメ『さすがの猿飛』(フジテレビ系列/’1982年)の主題歌「恋の呪文はスキトキメキトキス」からの本人出演CMソング「ちちんぷいぷい」では、「RINGO!」のコール&レスポンスで会場に一体感をもたらし、いよいよクライマックスへ。最新曲「獣ゆく細道」ではスクリーンに映し出された宮本浩次と色とりどりの花々に蝶が舞うシルクスカーフのロングドレス姿の椎名が情熱的ながらも冷静な魂の絶唱を交わし、昨年の紅白歌合戦で歌唱した複合商業施設「GINZA SIX」のオープニングテーマソング「目抜き通り」では、トータス松本がステージに登場。大歓声が沸くなかで華麗でゴージャスなハーモニーを響かせ、NHKの人気情報番組『ガッテン!』のテーマソングとして書き下ろした「ジユーダム」で、日常を軽やかに愉しむ「トンチ」ならぬ「トンカチ」を両手にチューブラーベルを鳴らしながら、ユーモアたっぷりに締めくくった。

 地球に落ちて来た女=銀河帝国軍の女王が、平成の日本で様々な人と出会い、それぞれの愛や孤独、生き方を共鳴し合いながら、美しい旋律と律動を結んでいく物語。監督・脚本・主演、椎名林檎による、壮大でスペクタルなスペースオペラは、今ある生活、人生の中に幸せを見つけ、自分のやり方でゆっくりと、自由に、確かによくしていこうというメッセージとともに幕を閉じた。

 アンコール、鮮やかな青の着物に着替え番傘を抱えて登場した彼女は、2000年リリースの3枚組シングル『絶頂集』に収録されていたレアなオルタナティブロックナンバー「はいはい」をバンドスタイルでプレイ。そして「20年もこの名前でやり続けているとは思わなかったです。たくさんの方に必ずしも聴いていただきたいという思いできたわけではないものですから、20年も経って、こんなにたくさん来てくださるとは思わなくて。もっとぽつねんとしてると思っていました。本当にありがとう。感無量です。また来てね」と笑顔で語りかけると、場内からはこの日一番の拍手と歓声が沸き起こった。ラストナンバーは、東京事変の1stアルバム『教育』収録のピアノバラード「夢のあと」。スクリーンには、アメジスト、ダイヤ、オパール、ルビー、エメラルドなどの鉱石が呼吸をするように光り輝いていた。椎名は観客の方に手を差し伸べながら、〈ただ同じときに遇えた幸運を繋ぎたいだけ〉と歌い上げた。娘として、母として、音楽家として、女王として。彼女はこれから先も同じ時間と場所で共鳴している大切な人との結び目で世界を守り、未来を造っていくはずだ。

 レーザービームが交錯する終演後の場内には「丸の内サディスティック」のEDMバージョンが流された。エレクトロニックとアコースティック、野生と人工、本能と理性、男と女、生と死、光と影、怒りと喜び、善意と悪意……。一般的には相反すると言われるものが、ロックやソウル、クラシック、ジャズ、シャンソン、ラテン、エレクトロと様々なジャンルの音楽の中で鳴らされ、映像や照明、ファッションも新しく刺激的で、ミュージシャンやダンサーたちは身体性を存分に発揮していた。ライブコンサートであることは間違いないが、ドラマを感じるミュージカルのようでもあり、ファッションショーとしても楽しめる。ここには、エンターテインメントの全てが含まれていたのではないかと思う。本当に全てが。

(写真=太田好治)

■永堀アツオ
フリーライター。音楽雑誌「音楽と人」「SONGS」「MyGirl」などでレギュラー執筆中。「リスアニ!」「DIGA」「エンタメステーション 」「CINRA」「barks」「EMTG」「mu-mo」「SPICE」などでも執筆。サザンオールスターズ、でんぱ組.inc、miwaのFC会報のライティングも担当。

椎名林檎 オフィシャルサイト

      

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