ヤバイTシャツ屋さん、音楽的特徴とその魅力とは? 高品質の“ヤバT流ロック”を考察

 さらに、ボーカル面にも目を向けてみたい。こやまとしばたありぼぼ(Vo/Ba)の男女ツインボーカルは、実はこのバンド最大の武器だと個人的に思っている。こやまのボーカルは聴き手に不快を与えない、ある種聴き心地のよい歌声と言える。それに対して、ありぼぼの歌声は非常に個性的でどこか浮世離れ感すらある。筆者が彼女の歌声を聴いたとき、実は最初に思い浮かべたのが初音ミクだった。極力抑揚を抑え、まっすぐに歌うその甲高い声はボーカロイドのそれにも通ずるものがある気がし、それが先の浮世離れ感につながったのかもしれない。そのこやまとありぼぼの声が混ざり合うことで、ほかにはない(あるいは真似できない)唯一無二のハーモニーを生み出す。だからこそ、ヤバTは強いのだと断言できる。

 さて、ここまで演奏面、楽曲/メロディ面、ボーカル面を通じてヤバTの特異性を紐解いてきたが、いかがだろうか。どの要素も確実に“2000年代以降”の日本のロック/ポップスをルーツにしているという点においては、ヤバTがテン年代に誕生したのは必然だったと言えるはずだ。そりゃあこんなバンド、海外からは生まれようがない。きっと彼らは12月19日にリリース予定の3rdフルアルバム『Tank-top Festival in JAPAN』でも、相変わらず高品質の“ヤバT流ロック”を提供してくれることだろう……先行配信された「かわE」を聴きつつ、アルバムの到着を心待ちにしたいと思う。

■西廣智一(にしびろともかず)
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。Twitter

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