超特急が語る、“黄金時代”に向けての大きな一歩「大人っぽい世界観や見せ方が広がってきた」

超特急が語る“黄金時代”への一歩

 約2年ぶりとなる超特急の3rdアルバム『GOLDEN EPOCH』の第一印象は「これが超特急?」。彼らがこれまでコンセプトとしてきた“ダサかっこいい”の比率をぐっと抑え、スタイリッシュに振り切ったサウンドと歌声が洪水のように押し寄せるアルバムだ。

 リリースに先駆けて公開されたリード曲「need you」のMVでは過去の代表的なシングルでの印象的な振付をコラージュしながらも、クールに進化&深化した6人の姿を見せつけた。これまでの超特急の軌跡を振り返りつつ、自らのGOLDEN EPOCH=黄金時代に向けて大きな一歩を踏み出した彼ら。番外編としてのにぎやかなユニット曲の話題も含め、話を聞いた。(古知屋ジュン)【最終ページに読者プレゼントあり】

いろんな自分が詰まってる(タカシ)

ーー2年ぶりのアルバムになりますが、メンバーのみなさんからは「こんな曲がほしい」というようなアイデアや希望は出されていたんですか?

ユーキ:僕らが戦う場所として、メインで考えているのはライブなんですよね。なので、たとえばイベントやフェスみたいなアウェーな場所でステージをやるときに、8号車(超特急ファンの愛称)だけじゃなくはじめましての人たちも巻きこめるようなパワーのある曲、たとえばおしゃれなEDM調の曲やR&Bだったり……があったらいいなというのは、最初からありました。今の僕らは年齢も20代中盤に差し掛かってきたし、できる見せ方も広がってきたので、このアルバムではこれまでの超特急らしいにぎやかな曲だけじゃなく、落ち着いた大人っぽい世界観にも挑戦してます。さっき言ったようにアウェーな場所であっても、いろんな層の方がはまる要素を持っているのが超特急の長所だと思っているので。

ーーなるほど。では最初に、アルバム5形態の共通収録曲を中心に聞いていきたいんですが。アルバムのリード曲「need you」は、韓国のNameless A.K.A NLさんが作曲やアレンジを手掛けていて、ドラムンベースの要素も入ったスタイリッシュな曲ですね。

タカシ:アルバムを出すと決まったときに、僕からは英語詞が多めな曲を歌ってみたいというのと、大人っぽくて色気のある曲を歌ってみたいなっていう希望を出してたんです。そういう意味では、この曲はまさにイメージ通りでしたね。

ーータカシさんの歌声のツヤ感が映える曲ですよね。振付はユーキさんと(世界的に活躍するダンサー&振付師)TAKAHIROさんの共作だそうですが。

超特急「need you」MUSIC VIDEO
超特急「need you(Dance ver.)」MUSIC VIDEO

ユーキ:僕が全編振付したものを、TAKAHIROさんにブラッシュアップしていただきました。TAKAHIROさんから「ここはもっと情熱的な感じがいいかも」「ここでエネルギッシュな動きを入れてみたら?」とかヒントになる言葉をいただきつつ、それを受けて自分なりの表現で踊ってみて……というやり取りを繰り返しながら肉付けしていきました。TAKAHIROさんはホントに師匠みたいな感じで温かくフォローしてくださって。

ーーその振付を実際に踊ってみた感想は?

タクヤ:ユーキは毎度毎度、感情が強く入るような振りを作るのでそこがユーキらしくて、好きですね。一カ所、いろんな振りがギュッと詰まっていて“めちゃめちゃ踊ってます!”みたいになるポイントがあるんですけど、個人的にそこがすごい好きです。でもユーキの振付は、踊るとかなり疲れるんですよ、3分半くらいで短めの曲なのに。

カイ&リョウガ:ホント、そう!

ユーキ:作ってから「あ、これ自分も踊るんだった」って思って。

ーーそこは計算してください(笑)。

ユーキ:そういう計算、してないっすね。

ユースケ:でも、そこがいいんだと思う。

ユーキ:曲はかっこいいんですけど、振付の裏テーマが“超特急に対する思いを詰め込むこと”でめちゃくちゃメッセージ性強く作っているので、そういうギャップが観てくれる人に伝わればいいなと思ってます。

ーー(安室奈美恵「Fashionista」やBABYMETAL「Distortion」などを手掛けた)安田大地監督によるMVの撮影を終えたばかりだそうですが、いかがでした?(注:取材は10月上旬)

カイ:全部グリーンバックで撮ってるんですけど、テーマが宇宙空間なんですね。“運命の人”を探し求めて宇宙船に乗って、それぞれの星に着く、みたいなイメージです。実はダンスシーン以外は、メンバー全員では撮影してないんですよ。1人ずつのシーンばっかりなので、みんなで撮らないってけっこう新鮮だなあと思いながらやってましたね。

リョウガ:オールCGなので、でき上がりが想像できないんですよね。ワイヤーを使った撮影もあったので、そこはけっこう苦労してるんですけど。

ーー楽しみです。「Booster」は、すでにフェスなどでも披露されていて「かっこいい!」と話題になってましたが。

リョウガ:この曲を最初に披露したとき、ユーキの歌い出しに会場が沸いたのは覚えてるな。

ユーキ:曲が始まって踊り出して、ダンサーの僕がラップしだすところで「えっ、歌うんだ!?」みたいにお客さんがビックリする感じとかは、ありましたね。どこでもこの曲はお客さんが特に様子をうかがってるというか“見入ってる”感じがあるなって。

カイ:僕から「メンバーそれぞれがフィーチャーされる、新しい曲があったらいいんじゃないですか?」と提案していて、そこから生まれた曲なんです。

ーーメインダンサーが1人ずつラップをやるというのも新境地ですよね。レコーディングは順調だったんですか?

タクヤ:それぞれ、わりと長い時間ブースに入ってたよね。この曲に限らずですけど、僕ら一応ダンサーというポジションなのに、このアルバムではブースに入ってる時間が長くて、ちょっとした戸惑いもありつつ(笑)。でも以前に比べたら、慣れたほうなんじゃないですかね。

ーー歌もラップもバッチリ?

ダンサー全員:ラップは楽しいです!

ユーキ:でも歌はちょっと……これからの伸びしろに期待していただければ。

カイ:ユーキは〈耳元に直 Zero Distance〉でどハマリしてたよね?

ユーキ:なぜか“耳元”で噛みまくって、何回もテイク重ねました。

ーーそんな苦労もありつつ(笑)。「ขอเสียงหน่อย(コーシエンノイ)」もイベントで披露されていますが、アグレッシブなEDMサウンドだったりボーカルや重厚感のある振付が印象的ですよね。テンポがスローめだといろいろ遊べる部分もあって、ダンサーもボーカルも腕の見せどころといえる曲じゃないですか?

タカシ:面白い曲ですよね。この曲ではローテンションではないけれども、ちょっと落ち着いた感じを出せたらいいなと思っていました。取ってつけたように落ち着いた感じではなく、少し余裕を見せたいというか……。これまでの超特急にはなかったタイプの曲なので、曲を聴き込んで自分の中に落とし込んで。どう歌うかは悩みに悩みましたけど。

ユーキ:振付は元Beat Buddy Boiのakihic☆彡さん(AKB48の「UZA」などの振付を担当)って方に作っていただきました。この曲は踊っててめちゃくちゃ気持ちいいんですよね。曲自体のグルーヴ感もそうなんですけど、振付の“音取り”の仕方がすごくセクシーな感じがするんですよ。ダンスの面では今までにやってこなかったようなスタイルなので苦戦しつつも、また新しいことに挑戦してますね。

ーー“今までにない”感が炸裂してる曲が多いですけど、その中でも心に染みるような切ないバラードの「霖雨」や、セクシーさのにじみ出る「Full moon」は異色中の異色といえる曲じゃないでしょうか。

カイ:「Full moon」は歌詞が女性目線で書かれていたりするのもこれまでになかったテイストだし、そうかもしれないですね。

タカシ:レコーディングしてて思ったのは、がむしゃら感が通用しない曲が多かったんですよね。アップテンポの「PUMP ME UP」とか「超特急です!!!!!!!!」なら、そういう表現の仕方もアリだと思うんですけど、この「霖雨」や「Full moon」、「ขอเสียงหน่อย(コーシエンノイ)」も別の意味でそうかもしれないですけど、テンション的に“行ききる”感じで歌ってしまうと曲全体のバランスが崩れてしまうので。そのコントロールがすごく難しいなと思いました。

ーーおなじみのシングル曲も「Jesus」以外はアルバムバージョンに生まれ変わってますけど、新しい息吹を吹き込むという部分で苦労されなかったですか?

タカシ:いろんな曲で歌いまわしで悩んだ結果、レコーディング期間の最後らへんには本来の自分の歌声がよくわからなくなって、頭がぐちゃぐちゃになってましたね(笑)。

ユースケ:時期的にライブとも並行してたんで、ライブのあとにもレコーディングしてたよね。大変だったと思います。

タカシ:そうやったね……なんとかいい感じに仕上がってよかった! と思いましたけど。それほど、いろんな自分が詰まってるといっても過言ではないアルバムですね。

ーー率直に言って、このアルバムでのタカシさんのボーカリストとしての成長ぶりに驚いたんですよ。この表現力の幅は元々引き出しとして持っていたものなんでしょうか?

タカシ:全部の曲が同じように聞こえる、全部の曲が予想できちゃうような予定調和みたいな感じが、一番僕的には嫌いなんですよね。これだけ曲のバリエーションがありますから、アルバムを聴いてもらうにあたって、いろんな楽しみ方をしてほしかったですし。他のみんなはダンスで表現してくれますけど、僕は耳に訴えかけて表現が成り立つので……それはいろんな曲と出会ったり、制作チームだとかいろんな方と話した中で生まれた表現で、それをいろんな曲に詰め込んだという感じですかね。

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