the GazettEが表現する、研ぎ澄まされた狂気 さらなる深化を遂げた『NINTH』ツアー“第2層”レポ

the GazettEが表現した、研ぎ澄まされた狂気

 数カ月ぶりに観て感じたそれは完全に“仕上がった”とでもいうべきなのだろうか。「Falling」を筆頭に、猛り狂うリフが応酬する「NINTH ODD SMELL」も「GUSH」も、さらに研ぎ澄まされた狂気が襲ってくる。

 ステージから矢継ぎ早に投下される狂気を前に、フロアは頭と手を振り乱しながら応えていく。RUKIが「MY DEVIL ON THE BED」で操っていたステッキを投げ捨てる、打ち鳴らされるリズムの嵐からの一瞬の静寂、RUKIの一声で畳み込む「裏切る舌」という流れで会場のボルテージは最高潮に。と思えば、「BABYLON’S TABOO」で混沌とした世界へと堕とされる。

 ホールツアーでも印象に残っている「虚 蜩」から始まった中盤のセクションは、この日のハイライトだった。RUKIの艶めかしい歌声とドラマチックなアンサンブルに耳を奪われ、まばゆい照明も相俟って目をも奪われる。赤い二本の筋が青白く変わっていくと「その声は脆く」へ。丁寧に歌い上げるRUKIと、歌に寄り添っていく4人。ドラマチックなギターソロを経て、真っ白に照らされるステージは神々しく、そして、ピアノの調べで始まった「REDO」のメロディアスさと小気味なアレンジに、the GazettEの優美な引き出しをあらためて思い知らされた。

RUKI
REITA
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RUKI
麗
葵
REITA
戒
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 そんな余韻をぶった切るように、RUKIの足下から無数の真っ赤なレーザーが彼の周りを囲んでいく。まるでレーザーの檻だ。不穏なおどろおどろしさの中、蠢くようなリズムで始まる「THE MORTAL」。この曲もまた、ホールツアーで印象的な表情を見せていたが、これまた不気味さが増していた。淡々としながらもゆっくりと激情をまさぐっていく様にゾクゾクする。

 開演が遅れた旨を謝罪したあと、終盤へ向け、オーディエンスの心をさらに着火させる。

「ハコライブは久しぶりだと思うんですけど、わかってますね? みなさんのカッコいい姿だけを観にきているので…… かかってこい!!」

 「TWO OF A KIND」からのラストスパート。「INCUBUS」「ATTITUDE」とアッパーなナンバーを畳み掛けていく。

「こん中に暴れきれてねぇヤツ、いるんじゃねぇの? やるのは今しかねぇぞぉ! 恥なんか捨てちまえっ!!」

 ラストは「UNFINISHED」。怒涛のようなビートが一気に駆け抜けて本編は幕を閉じた。アルバム『NINTH』の世界観が今ここに完成されたといっても言い過ぎではない圧巻のステージだった。とはいえ、この“第2層目”はまだ始まったばかりだ。来月の新木場STUDIO COASTまで続いていく。

 アンコールは少し懐かしいナンバー「生暖かい雨とざらついた情熱」などを披露した。

 終演後、ステージに降りてきたスクリーンに映されたのは、真っ赤なガムテープで隠されていた“第3層目”だった。高田馬場AREAに、目黒鹿鳴館……まさに多くの者を欺いたような衝撃的なライヴハウスツアー『LIVE TOUR18-19 THE NINTH PHASE#03 激情は獰猛』が発表された。正直、どんな内容になるのかまったく予想がつかない。ただ、とんでもないことになる……そんなことは言うまでもあるまい。

■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログTwitter

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