アメリカ音楽のルーツを辿る旅へーー宇野維正『アメリカン・ミュージック・ジャーニー』評
彼が訪れるのは7つの都市。ヒップホップが生まれた街ニューヨーク、ジャズの聖地ニューオーリンズ、ブルースの街シカゴ(作中ではアロー・ブラックとジャズ・ピアニストのラムゼイ・ルイスの出会いが描かれる)、カントリーミュージックの故郷ナッシュビル、先に挙げたU2やプライマル・スクリームやフー・ファイターズの作品でも当然のように重要なパートを占めていたロックンロールの街メンフィス、モータウンの街デトロイト、カリブ海を渡ってやってきた移民たちによるラテンミュージックの街マイアミ、そして首都ワシントンDCだ。
作中ではルイ・アームストロングとエルヴィス・プレスリーに多くの叙述が割かれているほか、前述したラムゼイ・ルイス、グロリア・エステファン、ジョン・バティステといった各世代、そしてアメリカの多様な文化的背景を象徴する有名ミュージシャンたちも登場。作品の終盤にはマイアミでの『Ultra Music Festival』の模様も収められていて、この作品が単に過去を振り返るだけでなく、現在の音楽シーンも視野に収めて、その上で音楽のルーツの重要性を語りかけようとしていることが示される。約40分というコンパクトな尺、吹き替えのナレーションと、あくまでも作品の作り自体は万人向けとなっているが、この広い間口の先に広がっている「アメリカ音楽」の深みの片鱗を感じ取ることができるはずだ。
■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」ほかで批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。新刊『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)、2018年11月28日発売。Twitter
■公開情報
『アメリカン・ミュージック・ジャーニー』
11月16日(金)より、イオンシネマにて公開
監督:グレッグ・マクギリブレイ
脚本:スティーヴン・ジャドソン
音楽: スティーブ・ウッド
声の出演:高橋広樹(アロー・ブラック)、坂口芳貞(ナレーション)ほか
製作:マクギリヴレイ・フリーマン・フィルムズ
提供:エクスペディア、ブランド USA、エアカナダ
配給:さらい
2018年/アメリカ映画/日本語吹替/40分/原題:America’s Musical Journey
(c)VisitTheUSA.com
公式サイト:americanmusicjourney.jp