嵐 櫻井翔のラップの強みは? ラグビーW杯中継ソング「BRAVE」を機に改めて考察

 嵐の新曲「BRAVE」が、『ラグビーワールドカップ2019』日本テレビ系の中継番組テーマソングを務めている。同番組では、嵐・櫻井翔がスペシャルサポーターを担当しており、11月3日の中継では「BRAVE」を初オンエア。ファンの間で大きな話題を集めている。

 「BRAVE」は、エッジの効いたエレキギターのサウンドを主軸に、ドラムのキックがダイナミックに鳴り響く楽曲である。櫻井は同楽曲について「嵐のシングルとしては珍しく、荒々しくて男くさい楽曲」とコメント。ファンの間では、嵐が2002年10月に発表した楽曲「PIKA☆NCHI」を思い出したという声も上がっている。また、曲中には松本潤の依頼で書き下ろした「Daylight」以来、シングル表題曲としては約2年ぶりとなる、櫻井のラップパートも。自身が書き下ろしたリリックについて、櫻井は「スクラムを組む際の掛け声をイメージしたりと、力強く闘う全ての選手へ想いを重ねて書いたつもり」と振り返っている(参考:嵐、荒々しくて男くさい新曲「BRAVE」がラグビーW杯中継ソングに)。

 そんな櫻井によるラップ、通称“サクラップ”は日本語を一音ごとに明瞭に発音し、各小節の流れを崩さぬよう丁寧に歌われるフロウや、小刻みに韻を重ねる高度なライミングが特徴だ。サクラップは嵐の楽曲を賑やかに彩り、グループの人気楽曲のオリジナリティを引き立たせる要素のひとつと言えるだろう。2017年10月放送の『チカラウタ』(日本テレビ系)では、Sexy Zone・菊池風磨が“名曲中の名曲”と称してサクラップが印象的な「Still…」を紹介。スタジオの共演者に対して、櫻井のリリックにおけるワードセンスを「素敵すぎる」と熱弁する場面もあった。

 そんなサクラップは、先述したような聴き取りやすさから、ヒップホップに馴染みのないリスナーでも楽しめるのが強みでもある。しかし近年、海外トレンドを大いに吸収した、これまでとは一味違う雰囲気のサクラップ楽曲が誕生した。それが、嵐が2017年10月にリリースしたアルバム『「untitled」』のリードナンバー「『未完』」だ。

 同曲のラップパートにおいて、前半ではローテンションでのトースティングを展開。そして後半からは、一音ごとの発音を崩したフロウで歌い出し、細かな韻を踏み続ける各小節末では、言葉尻で調子を上げる。こうした滑らかなフロウは、近年の海外ヒップホップシーンにも通用するものだ。同曲でこのようなラッブが披露されたのは、『「untitled」』がグループでも随一の挑戦作だったことが影響しているのだろう。多くのリスナーに愛されるポップスの一部を担うフロウから現行のヒップホップにも通用するドープなフロウまでを巧みに操る櫻井のラップスキルが、同曲をもって改めて証明されたように思う。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる