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嵐、2018年シングル曲に共通するテーマが示すもの 荻原梓『君のうた』評

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 10月24日に嵐が56枚目のシングル『君のうた』を発売した。2018年に入ってからは『Find The Answer』『夏疾風』に続く3枚目のリリースとなる。

 表題曲の作詞はASIL。ASILは「I SEEK」や「miyabi-night」「Midsummer Night’s Lover」など、ここ数年の嵐の楽曲制作に参加している作家だ。作曲を担当したのは多田慎也とA.K.Janewayの2名。A.K.Janewayは、最近ならば『「untitled」』ツアーでの曲と曲の合間に差し込まれていた「Junction」であったり、各ツアーでの「OVERTURE」などライブで使用するトラックをメインにここ5〜6年の嵐と関わってきた。

 一方で、多田慎也が嵐の楽曲に関わりはじめたのは2007年の「いつまでも」(シングル『Love so sweet』収録)まで遡る。ちなみにそれが彼にとっての作家デビュー作で、以降は「風」「声」「トビラ」「マイガール」といった楽曲に参加した後、長らく嵐楽曲とは縁がなかったが、昨年のアルバム『「untitled」』収録の「バズりNIGHT」でクレジットされて久々に仲間入り。そこからの今作という流れだ。その間に彼は自身のアーティスト業と作家業を並行しており、個人活動が活発化する最中にAKB48「ポニーテールとシュシュ」をスマッシュヒットさせるなど、近年のJ-POPシーンを代表するメロディメーカーとなって戻ってきている。

 編曲の佐々木博史は2008年の「忘れられない」(シングル『Beautiful days』収録)から常に嵐楽曲には欠かせない存在。嵐サウンドの一翼を担っていると言っても過言ではないだろう。

 こうして見ると、今回の制作陣は嵐にとってみれば“お馴染みの顔ぶれ”で固められている。この“いつもの仲間たち”感が、曲から醸し出されるそこはかとない安心感に一役買っている……というのは少々詭弁ではあるが、しかし実際のところ長年追いかけているファンにとってみれば今作は耳に馴染みやすいサウンドではないだろうか。彼らが歌い続けてきたサウンドやメロディの性質を崩さずに真っ向から勝負している。

 さて、そのサウンド面に注目してみよう。

 複弦系の爽やかなギターの音色で始まり、高音のコーラス、ストリングスも登場して柔やかな雰囲気からスタートする。“朝の日差し”、“透き通る空気”、こうした情景が連想されるイントロだ。すぐにAメロに入り〈移ろいゆく風景の中 ずっと大切な人〉という歌い出し。ここでの駆け上がっていくメロディは秀逸だ。この旋律がまず何よりも美しい。リスナーの心を掴む最初のフックでありながら、ワンコーラスすべてのトーンをすでにここでほぼ決定付けている。この特徴的なAメロがなければ、Bメロもサビもどことなく凡庸な印象でとどまっていただろう。他にもサビ直前のフィンガースナップや、〈温もりを〉でのクイッと変化をつけたメロディなど耳に残る曲作りも光っている。

歌手としての嵐

 今作は、全体的にメンバー5人の歌声が良く活きているように思う。それがよく分かるのが2番のA〜Bメロで、松本潤→二宮和也→相葉雅紀→櫻井翔→大野智とメンバー1人ずつバトンを繋いで歌声を披露している。例えば、前述した特徴的なメロディを描く〈小さく確かな鼓動〉と〈雨跡の空模様〉の部分は松本と相葉が歌うが、この上昇していくメロを伸びやかに歌い上げる2人の歌声は非常に印象的。もちろん、彼らからバトンを受け取り次へと渡す二宮と櫻井の2人も素晴らしい。Bメロをまるっと担当している大野も持ち味の歌唱力を存分に活かしている。メンバーの個性と5人のバランスが味わえる楽曲になっているだろう。

 特筆すべきは落ちサビ部分の相葉ソロパートで、少し鼻にかかりながらも真っ直ぐに発声する彼特有の歌声が、終盤に向けて曲がギアをひとつ上げるための良いカンフル剤となっている。前へと突き進むような力強さが感じ取れる。

      

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