BABYMETAL、YUIMETAL脱退後の行方は? グループの“アイドル性”担った功績を振り返る
振付に関しては「ギミチョコ!!」などが典型的だが、中央で歌うSU-METALに対し、YUIMETAL&MOAMETALが、両脇を固めるように、あるいはじゃれあってまとわりつくようにするのが基本形だった。SU-METALはポニーテールだが、彼女の二歳下であるYUIMETAL&MOAMETALはどちらもツインテールであり、姉と双子の妹のように見える演出になっていた。
また、「紅月」などSU-METALのソロ曲は、声の張りや伸びを精一杯聴かせる作りになっていて、アスリート的に力量を披露するものだ。一方、BLACK BABYMETALと呼ばれるYUIMETAL&MOAMETALのコンビ曲はラップ中心で、パパに戦略的に媚びる「おねだり大作戦」、2人で作詞作曲した冗談みたいな数え唄「4の歌」、乱暴な言葉で怒る姿おかしい「Sis. Anger」など、コミカルなテイストのものばかり。その意味では、BABYMETALのアイドル的な部分の多くを、YUIMETAL&MOAMETALが担っていたといえる。
機転がきいて愛嬌のあるMOAMETALに比べると、YUIMETALはおっとりした印象だがダンスにキレがある。身長差があった初期は姉貴分と妹分という色分けがはっきりしていたが、歳下2人の身体およびメンタルの成長で同格に近づいた。そういった側面はあったが、3人体制でいる間は、姉と双子の妹的な位置づけは維持されていたといえる。
ただ、海外進出を果たした後に発表された2ndアルバム『METAL RESISTANCE』では、1stアルバム『BABYMETAL』に収録された「ヘドバンギャー!!」、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」のような健気さとユーモアを同居させた曲は減り、それぞれの方向性を曲ごとに振り分けていた。また、アルバムの核となった「Road of Resistance」や「KARATE」など、真っ当に前向きな姿勢を歌った曲が増えたのも特徴だ。
海外公演のセットリストでもそうした傾向の曲が中心となり、初期に日本で作られたBABYMETALのイメージとは力点が移動してきた。アイドルや萌えのカルチャーが当たり前に流通している日本と、メタルフェスのような海外の空気との差を意識して方向性を変えたのかもしれない。
そうした変化のなかで、YUIMETAL&MOAMETALはコミカルな合いの手を入れるよりも、ダンスでSU-METALのボーカルを支えることのほうが比重は大きくなった。「Road of Resistance」でステージ上の3人がそれぞれ旗を持って立つ姿など、姉妹というよりも同じ目標へ進む同志たちの風情だった。可愛らしさよりも凛々しさが優先されるようになったのである。だから、YUIMETAL離脱後のBABYMETALが、複数ダンサーを加える形でライブを行うようになったのは、それまでのユニットの流れを踏まえれば理解できることだった。
2014年3月1日のYUIMETALがステージから転落した武道館公演を、私も会場で目撃していた。当日はその後パフォーマンスに無事復帰したし、翌日の公演にも出演したので元気であることに安心した。そんな過去もあったので、昨年12月からの離脱は一時的なものだろうと思い、そのまま脱退につながるとは予想していなかった。
YUIMETALは脱退に関するコメントで「水野由結としての夢に向かって進みたいという気持ちもあり、今回このような決断をいたしました」と語っていた。双子の片割れ、同志の一人としての彼女とは違う自身の姿を、いずれ見せてくれるだろう。新体制になったBABYMETALも新たな道を歩む。それぞれの今後に期待するしかない。
■円堂都司昭
文芸・音楽評論家。著書に『エンタメ小説進化論』(講談社)、『ディズニーの隣の風景』(原書房)、『ソーシャル化する音楽』(青土社)など。