2010年代前半の音楽シーンを生々しく記録 『文化系のためのヒップホップ入門2』書評

 ここ数年、とりわけ今年に入ってから、ヒップホップをめぐる書籍の充実度は特筆すべきものがある。本書もそのなかのひとつだ。最後に、ヒップホップ関連書籍をいくつかピックアップして紹介しておこう。

 日本語ラップの実作を具体的に学びながら、ヒップホップ論にも通じていくZeebra『ジブラの日本語ラップメソッド』(文響社)は、プレイヤーの視点とロジカルな方法が組み合わさった秀逸な一冊。ジョーダン・ファーガソン著、吉田雅史訳『J・ディラと《ドーナツ》のビート革命』(DU BOOKS)は、圧倒的な影響力を誇るビートメーカー、J・ディラの生涯とクリエイティビティの全貌を描き出す。ディラを題材に、「サンプリングミュージックを論じる」という課題に挑み、優れた成果を残しているのも魅力だ。小林雅明『ミックステープ文化論』(シンコーミュージック・エンタテイメント)は、ヒップホップの重要な表現媒体かつプロモーションツールとしてのミックステープがいかに生まれ、変化してきたかを一冊に凝縮した、音楽産業そのもののあり方に再考を促すクロニクルだ。

 作詞・作曲、プロダクション、プロモーション、産業構造等々、ヒップホップが育んできた美学や方法はいたるところに浸透している。現在のポップミュージックに与えた影響の大きさを考えれば、これらの書籍はどれも必読だ。ヒップホップファンならずとも、手にとってみてほしい。

■imdkm
ブロガー。1989年生まれ。山形の片隅で音楽について調べたり考えたりするのを趣味とする。
ブログ「ただの風邪。」

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