西廣智一の新譜キュレーション
U.D.O.、Mantar、Annisokay……ジャーマンメタル&ラウドシーンの過去と未来をつなぐ新作10枚
Helloween以降の、ジャーマンメタルの“今”
続いては、“Helloween以降”のバンドの新作から。Primal FearはGamma Rayの初代シンガーであるラルフ・シーパースと、80年代初頭から活動するSinnerの中心人物マット・シナー(Ba / Vo)を中心に1997年に結成。今回紹介する『Apocalypse』は通算12枚目のスタジオアルバムで、先に述べた「アニソンにも似た明快なメロディとスピード感の強いパワーメタルサウンド」がそのまま実践された正統派ヘヴィメタルアルバム。ところどころにシンフォニックな要素も感じられ、バンドとしても常に進化を続けていることが伺える力作です。
ラルフと入れ替わりでGamma Rayに加入したヘニュ・リヒター(Gt)と2012年から加わったマイケル・エーレ(Dr)が、サイドプロジェクトとして2016年からスタートさせたのがThe Unity。昨年発のデビュー作『The Unity』に続き早くも発表された2ndアルバム『RISE』は、それぞれ長いキャリアを持つメンバーたちによる、安定感のある叙情的なメロディックメタルが楽しめます。しかも、単なる“Helloween以降”のジャーマンメタルでは終わらない、HR/HMが本来持つ懐の深さ、ジャンルとしての幅広さも備わっており、ジャーマンメタルというワードに苦手意識を持つリスナーでも楽しめる1枚と言えるでしょう。
2003年に結成されたPowerwolfはヘヴィで荘厳なサウンドとわかりやすいメロディ、このジャンルには珍しいブラックメタル的白塗りメイク、英語やドイツ語、ラテン語を駆使した壮大な物語性を持つ歌詞世界が特徴のパワーメタルバンド。そのスタイルは7thアルバム『The Sacrament Of Sin』でも健在で、重厚さやパワフルさ、ドラマチックさに重点を置いた作風は、“Helloweeni以前”と“Helloween以降”がバランスよく混在した、ジャーマンメタルの最新形なのかもしれません。なお、本作は初回限定盤のみEpicaやBattle Beast、Heaven Shall Burn、Kadavar、Amarantheなどドイツ国内外のメタル/ラウド系バンドがPowerwolfの楽曲をカバーしたボーナスディスク付き。こちらも興味深い仕上がりになっているので、興味があるリスナーはぜひチェックしてみてください。