SOIL&"PIMP"SESSIONSが『DAPPER』参加ゲストと提示した、現在進行形のジャズミュージック
最新アルバム『DAPPER』を引っ提げた全国ツアー『TOUR 2018“DAPPER”』のファイナル、中野サンプラザ公演。『DAPPER』に参加したすべてのボーカリスト(Awich、三浦大知、野田洋次郎(RADWIMPS)、Nao Kawamura 、Shun Ikegai(yahyel) & Kiala Ogawa(kodama)、EGO-WRAPPIN')が登場したこの日のライブでSOIL&"PIMP"SESSIONSは、ジャズを基軸にしながらR&B、ヒップホップ、エレクトロなどを自在に融合させた、現在進行形のジャズミュージックを完璧に提示してみせた。
SOIL&"PIMP"SESSIONSを改めて紹介すると、トランペットのタブゾンビ、ピアノ/キーボードの丈青、ベースの秋田ゴールドマン、ドラムのみどりん、アジテーターの社長によるジャズバンド。さまざまなフィールドで活躍するミュージシャンたちによる多彩にして奥深いジャズミュージックを幅広い層のリスナーに浸透させてきた彼らの功績は、この日のライブのチケットが即完売したことからも明らか。実際、オリジナル曲のジャズバンドが2000人キャパのホールを埋めることは、きわめて稀だろう。
ライブは『DAPPER』の収録曲「Method」から始まった。リズム、テンポを規則的に変化させるメトリック・モジュレーションを応用したアンサンブルと耳触りのいいピアノ、トランペット、サックスの旋律が絡み合うこの曲は、ロバート・グラスパー以降と称される現代のジャズをポップに再構築した、つまり、SOILの真骨頂とも言えるナンバー。先鋭的なアレンジとわかりやすいポップネスを共存させた演奏にいきなり唸らされる。さらに近未来的フュージョンと言いたくなるような「Explorer」(丈青はショルダーキーボードでソロを披露)、ラテンフレイバーを反映させた「Mature」と続く。最初の3曲だけでこのバンドの持つ多様性がダイレクトに伝わってきた。その直後に披露された「Moanin‘」(アート・ブレイキー)のカバーも秀逸。原曲のイメージをまったく壊すことなく、プレイヤーのセンスと技量をさりげなく込める演奏は、まさに粋(いき)だ。
マイルス・デイヴィスの名曲「So What」のイントロを挟み、「この日本には素晴らしいボーカリストが存在しています!」という社長の声とともにフィーチャリングアーティストが次々と登場するコーナーへ。まずは「Drivin’feat.Nao Kawamura」。アルバム『インナーヴィジョンズ』(1973年)あたりのスティービー・ワンダーを想起させるベースライン、美しい憂いを帯びたトランペット、幻想的なエレピが絡み合うなか、ソウルフルなボーカルが響き渡り、会場の雰囲気は一変する。さらにヒップホップとジャズの有機的なコラボレーションが実現した「Heaven on Earth feat.Awich」、現行のオルタナR&Bとリンクした「Glitch feat.Shun Ikegai from yahyel & Kiala Ogawa from Kodama」へ。2010年代以降のジャズはさまざまなジャンルと融合しながら変化してきたわけだが、SOILはその潮流をしっかり捉えつつ、独自の進化を遂げてきた。『DAPPER』におけるコラボレーション楽曲は、その最新のスタイルをリアルに体現しているーーこの日のステージからも、その事実がまっすぐに伝わってきた。
ひときわ大きな歓声が起きたのは、三浦大知が登場した瞬間だった。90年代ヒップホップ的なバウンシーなビートと完全に一体化しながら躍動感のあるボーカルを気持ちよく響かせ、シャープな動きで観客を沸かせる。「comrade feat.三浦大知」のパフォーマンスはまちがいなく、この日のライブの大きな見どころだった。
フィーチャリングコーナーの最後を飾ったのはEGO-WRAPPIN'。官能性に満ちたメロディライン、エキゾチズムと叙情性が溶け合うようなバンドサウンドを軸にした「drifter feat.EGO-WRAPPIN'」からは、個性と才能がぶつかり合うことで生まれる、濃密なエネルギーがはっきりと感じられた。ジャズをベースにしながら、幅広い大衆性を獲得するに至ったEGO-WRAPPIN'とSOIL。両者の邂逅は必然だったと言っていい。