SOIL&"PIMP"SESSIONSが『DAPPER』参加ゲストと提示した、現在進行形のジャズミュージック
ライブ後半では、さらに興奮度の高いステージが展開された。「Pride Fish Ball」では打ち込みのビート、シンセベースによるエレクトロスタイルを披露。みどりんのドラムソロをきっかけにした「SAHARA」ではメンバー全員がド派手なソロを聴かせる。演奏の技術の高さはもちろんだが、それぞれのプレイに華があり、ステージと客席をつなぐ社長のアジテーションも相まって、すべてがライブの高揚感につながっているのだ。ジャズはもともとダンスミュージックであり、誰もが気軽に踊れて騒げる音楽。SOIL&”PIMP”SESSIONSの根底には“ジャズでオーディエンスを楽しませたい”というシンプルにして真っ当な動機があるのだと思う。
ライブアンセムと呼ぶべき「SUMMER GODDESS」、そして、Sly & The Family Stoneを想起させるリラックスしたファンクチューン「FUNKY GOLDMAN」で本編は終了。アンコールでは「『DAPPER』に参加してくれたシンガーのなかで、野田洋次郎くんだけが来れなくて。代わりに社長が歌います」(タブゾンビ)、「よし、歌っちゃおうかな」(社長)という小芝居(?)から、野田本人が登場し、「ユメマカセ feat.Yojiro Noda」を披露。R&Bとアシッドジャズをなめらかに繋ぐようなサウンドを捉え、なめらかで奥深いメロディを描き出す、野田洋次郎という希代のシンガーの豊かな魅力を実感できる、素晴らしいコラボレーションだった。
ラストの「Strasbourg/St.Denis」では“メンバーそれぞれがソロ演奏→挨拶をしてステージを去る”という演出を施し、最後に残ったみどりんが「ありがとうございました!」と一礼、この記念すべきライブは幕を閉じた。2016年にサックスの元晴が脱退、充電期間に入ったSOIL。本格的な復帰作となった『DAPPER』、海外公演を含む今回のツアーによって彼らは、第2期SOILと呼ぶべき状況をしっかりと作り上げてみせた。海外のジャズシーンとリアルタイムで同期しながら、メンバーの個性を存分に発揮し、国内のマーケットにもアプローチする。きわめて高いミッションを自らに課しながらSOILは、ここからさらに新しいフェーズへと進むことになりそうだ。
(写真=横山マサト)
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。