今のボカロシーンだけが持つ“特異性”とは何か? キノシタ×ぬゆりが語り合う

キノシタ×ぬゆり語る“ボカロの今”

ジャンル異なる2人が同一シーンにいる“ボカロ”の魅力

――ちなみに、2人が使っているソフトと、お気に入りのギター/シンセ音源などがあれば教えてもらえますか? 

ぬゆり:DAWはCubase 9.5ですね。ギター音源としてはProminyの「Hummingbird」をよく使っています。

――ぬゆりさんのギター音源は打ち込みなんですね。実際には弾いていない?!

ぬゆり:はい、弾いてないです。和田たけあきさんに弾いてもらったものはもちろん実際に弾いてもらっていますけど、アコギの音は実際には弾いていないんですよ。

キノシタ:へええ、「Hummingbird」、買います(笑)。僕は動画ソフトはAdobeのcc(Adobe Creative Cloud)、絵は昔から「ペイントツールSAI」を使っています。DAWはCubase 8ですね。好きなシンセサイザーはNexusです。

――2人は4月にリリースされた『心華EP ~春とら!~』で同じ作品に参加することになりました。この収録曲についてはどんな風に考えていったのでしょう?

キノシタ:「ハナイロ☆シャイガール」の場合は、心華ちゃんのキャラを見たときに、一見元気っぽいけど、実は内向的な部分があるんじゃないかな、と少し思ったので、その方向で曲を作っていきました。

――キノシタさんはアイドルへの楽曲提供もしていますが、キャラを見て「この子はどんな子だろう?」と想像する作り方は、もしかしたらその作業にも近い感覚なのかもしれません。

キノシタ:あくまで自分の思う感じで想像してみる、ということですけど、近い部分はあると思います。あと、この曲では春っぽさも意識しました。おおもとのストーリーが曲より先にあって、そのストーリーをまとめてから、曲を作っていきました。先に台本のようなものがあって、曲を作った上でさらに歌詞を乗せていくという感じです。場合によるんですけど、歌詞を書くタイミングで最初の台本にはなかったものが入ってくることもあります。今新曲を作っているんですけど、それも3回ほど書き直していて、結構こだわって作っているところです。

ぬゆり:へええ、面白いです。ストーリー自体は自分も最近考えるようになってきたんですよ。僕の場合はボーカロイドのキャラクターではなく、別の人のストーリーを想像するという感じですけどね。

――そのあたりはやはり、随分違いますね。

キノシタ:あと、「ハナイロ☆シャイガール」では春っぽさを意識するために、電波ソング系の音ではなくて、軽いロック調の曲を意識しました。そのうえで、「春っぽいだけでは面白くないかな」と思って、Bメロの部分にカントリー調のパートを入れていきました。ぬゆりさんの「ディカディズム」は、心華ちゃんの曲ではありますけど、Flowerも一緒に使っていますよね。そこが「いいなぁ」と思いました。

ぬゆり:「ディカディズム」のときは、コンピ参加のお話をいただいたときに、心華のデモ音源を聴いてみたら、自分の音楽性と合うか不安だったんです。それでFlowerと一緒でもいいなら、という形で参加させていただくことにしました。でも、実際に使ってみると、心華も結構凶暴にできることが分かって(笑)。じゃあ、強い曲を作ってみよう、と制作していきました。リズムの取り方を、四つ打ちから変化させていったり、掛け合いの部分を意識しました。

――音楽的にはジャンルが異なる2人が一緒のシーンにいるというのは、ボーカロイドならではなのかもしれませんね。

ぬゆり:もしかしたら、一緒にCDに収録される機会はなかったかもしれないですよね。

キノシタ:そうですね(笑)。でも、全然音楽性は違いますけど、サビの作り方は僕もシンパシーを感じていました。

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