“バクチク現象”は今も続いているーー『BUCK-TICK 2018 TOUR No.0』追加公演を見て

“バクチク現象”は今も続いている

 BUCK-TICKの通算21枚目に当たるオリジナルアルバム『No.0』はオリコンアルバムチャートの週間ランキング(2018年3月26日付)で2位を記録。メジャーデビュー31年目にして改めてバンドの底力を見せつけた。不動の5人で激動のシーンをサバイブし続け、BUCK-TICKというジャンルを築き上げたことも偉業だが、23年ぶりにアルバムがチャートのトップ3にランクインしたという事実にも驚かされる。これは彼らの存在や音楽がコアとなるリスナーのみならず、若い世代にも知られ、聴き継がれていることの証明だろう。“バクチク現象”は今も続いているのである。

 最高傑作と評されている『No.0』を携えて今年の3月からスタートした全国ツアー『BUCK-TICK 2018 TOUR No.0』の追加公演として東京・国際フォーラム ホールAで開催されたライブで感じたのは、手塩にかけた最新の楽曲たちをツアーで磨き上げ、最高の状態で届けるという濁りのないアティチュードだった。

 プロジェクションマッピングでネジやスパナが宙を飛び交い、組み上げられていく映像が映し出され、ステージに据えられた4つの白い布で覆われた謎の物体に照明が当たり、今井寿(Gt)、星野英彦(Gt)、樋口豊(Ba)、ヤガミ・トール(Dr)のシルエットが浮かんでは砕け散るというワクワクする演出の中、ライブはアルバムのオープニングを飾る「零式13型「愛」」で幕を開けた。布の中からメンバーが姿を表し、ステージ後方から軍帽にマント姿の櫻井敦司(Vo)が登場すると大歓声。打ち鳴らされるヤガミの力強いドラムはまるで鼓動のよう。スクリーンには胎児が映し出され、ドラマティックで重厚なナンバーが“愛”の誕生を祝福する。

櫻井敦司(Vo)
今井寿(Gt)
星野英彦(Gt)
樋口豊(Ba)
ヤガミ・トール(Dr)
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櫻井敦司(Vo)
今井寿(Gt)
星野英彦(Gt)
樋口豊(Ba)
ヤガミ・トール(Dr)
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 インダストリアルでグラマラスな「美醜LOVE」は結成当初からビート感を打ち出していたBUCK-TICKの進化形とも言えるロックナンバー。今井と星野が上手と下手に分かれ、櫻井がエロティックなボーカルで魅了する。間合いが絶妙なヤガミと樋口のビートが絡み合い、小気味いいギターのストロークが快感を加速させていく。誰が欠けてもこのムードは醸し出すことができないだろう。挑戦を続けながら、軸をぶらすことがなかったBUCK-TICKのバンド魂を前半にして見る思いがした。

 そして、いくらでも深読みができる楽曲を生み出しながら、初めて見る人をもその世界に引きずりこんでしまうポップセンスを持ち合わせているのも、彼らならではのバランス感覚。

 星野作曲による透き通ったイントロで始まる甘美なメロディの「Ophelia」では、スクリーンに水面に浮かぶオフィーリアの姿を描いたミレーの美しい絵画がーー。そのロマンティシズム溢れる世界を櫻井がみごとに表現した。

 そこから一変、今井のノイジーでエキゾティックなギターと身体を揺らさずにはいられないグルーヴに国際フォーラムが揺れた「光の帝国」では櫻井もダンス。〈闇の螺旋で遊んでたのに/いつもそうなんだ青空が邪魔をする〉と繰り返されるフレーズに心がザワついたかと思うとアバンギャルド精神炸裂の「ノスタルジア - ヰタ メカニカリス -」へと移行。炎が上がる派手な演出の中、櫻井と今井のボーカルの掛け合いも聴きどころの「IGNITER」が投下される頃にはBUCK-TICKワールドにどっぷり浸かっている。

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