“バクチク現象”は今も続いているーー『BUCK-TICK 2018 TOUR No.0』追加公演を見て

“バクチク現象”は今も続いている

 愛、宇宙、生と死、反戦などのテーマを含んだアルバム『No.0』は決して軽いタッチなものではない。後半にいくにつれ、ライブはシリアスさを増し、シングルとしてリリースされた「BABEL」は人間のエゴイズムや欲望を浮き彫りにした重厚でダークな世界観。〈我はBABEL〉と歌う櫻井は威嚇するのではなく、崩れ落ちるような人間の脆さを表現していたのが印象的だったし、スクリーンに映し出されたサンドアートと共に披露されたバラード「ゲルニカの夜」はその切なさや痛みが増幅するような演奏だった。本編を締めくくったナンバーは「胎内回帰」。ラスト2曲には絶えない争いへのメッセージが込められており、歌からも紡がれる音からも真摯な想いが伝わってきた。

 30周年のツアーと言えども過去の代表曲を織り混ぜて観せるのではなく、あくまで最新作をライブで立体的に届けることに焦点を絞り、旧曲もその世界観に沿ったもので構築したBUCK-TICK。深遠でありながら、同時にロックバンドとしての不埒さや遊び心も感じさせる構成とパフォーマンスで見る者を釘付けにした。

 アンコールでは櫻井の猫愛が溢れ出したナンバー「GUSTAVE」が披露され、今井が猫じゃらしを口にくわえてパフォーマンス。星野や樋口も猫の真似をし、会場も猫ポーズで盛り上がるなど、お茶目な一面で沸かせる場面も。ダブルアンコールの最後の曲が〈ある日 君と出会って/ある日 愛を知る〉、〈ある日 夢が終って/ある日 目を閉じる〉と歌う8年前にリリースされた楽曲「Solaris」だったのもこのツアーにふさわしすぎるエンディングだった。

 人間の切なさも愚かさも儚さも愛おしさもすべてを受け入れ、最終的に生命の輝きを浮かび上がらせるようなライブ。10月からスタートする『TOUR No.0 -Guernican Moon- 』ではどんな景色を見せてくれるのだろうか。

(写真=田中聖太郎写真事務所)

■山本弘子
音楽ライター。10代の時にパンクロック、グラムロック、ブルースに衝撃を受け、いまに至る。音楽がないと充電切れ状態に陥る。現在、Webサイト、音楽雑誌などで執筆中。

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BUCK-TICK オフィシャルサイト

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