m-flo、中田ヤスタカ、Crystal Kay……Anime Expo「OTAQUEST」で証明したアメリカ人気
そしてもちろんトリを務めたのはヘッドライナーである、お待ちかねのm-floだ。LISAが復帰して15年振りに最強のトライポッドが完全復活して話題となっているだけにファンの熱気も尋常ではなく、正直なところアメリカにもm-floのファンはこんなにも多いのかと驚いた。会場にはm-floや「LISA」の名前の入ったTシャツを着たファンの姿も多数見受けられた。
遂に始まったオープニングはVERBALと☆Takuの二人による「gET oN!」でいきなり会場のボルテージもマックスの盛り上がり。さらに「d.w.m」をパフォーマンスして「m-flo loves」時代からのトラックでたたみこみ、途中「she loves the CREAM」といったレアトラックを挟みながら「Lotta Love」の流れで、楽曲の層の厚さをみせつけてくれた。VERBALはPKCZ®として、Takuは中田のセットですでにステージ上に顔を出していたが、やはり二人揃ったケミストリーは神がかったサウンドとグルーブを次々と生み出していく。VERBALも反応のいいオーディエンスへの煽りをエンジョイしている様子だ。
長年、アメリカ公演を待ちわびていた観客の声援で「初めてアメリカでライブができたことを誇りに思っている。Thank you, LA!」とのVERBALの言葉もかき消されるほどだったが、MCではPKCZ®のプロデューサーでもあるEXILEのHIROへ「こんなに素晴らしいイベントをサポートしてくれて本当にありがとうございます」と感謝の言葉も。続いてCrystal Kayも再登場して大ヒット曲「REEEWIND!」をコラボレーション、今宵のライブのプレミアム感に拍車をかけた。
そして「DOPAMINE」「The Love Bug」のパフォーマンスに続き、IimoriやYUC’eもステージに上がって会場もますます熱気を帯びたところに、いよいよ登場したのがLISAだ。オーディエンスからLISAコールの大声援が起こる中、記念すべき3人での最初のパフォーマンス曲はLISA脱退後に4年半ぶりのコラボになった「TRIPOD BABY」、その後m-flo10周年記念のスペシャルライブにLISAが参加した時に共演した「SOUND BOY THRILLER」と、復活の歴史をたどるような選曲に思わずグッとくる。3人のパフォーマンスはオーガニックでいて、パワー溢れるものだったのはいうまでもない。「How Like Me Now?」「been so long」「Hands」といった初期作品のパフォーマンスののち、2月にリリースされたLISA復帰後第一弾シングル「No Question」では、言葉一つ一つを大切に歌い上げるLISAならではのボーカルが染み渡る。そして最後となった名曲中の名曲「Come Again」では会場のシンガロングも一段と大きくなり、大歓声の中でm-floプレゼンツ「OTAQUEST」は幕を閉じた。
Anime Expoだけに映画『ASTRO BOY 鉄腕アトム』や『アップルシード』へ提供した楽曲でm-floを知ったアメリカのファンも多かったかもしれないが、それらの楽曲には敢えてこだわらず、いい意味で媚びない選曲でリアルなm-floの姿で勝負して大盛況を収め、しかもヒップホップの本場であるアメリカ・ロサンゼルスでのライブを成功させたと言うことには、「アメリカ初公演」以上の深い意義があるだろう。
一つのプロモーションが全国的に行き渡りやすい日本と違って、アメリカの音楽界で成功することは、実はアメリカ人にだって容易なことではない。どんなビッグアーティストでも最初は各地方を地道にツアーしプロモーションすることから始めなければいけないし、広大なアメリカは人種も音楽テイストも多様だ。しかしAnime Expoは全国から来場者が集まり、日本との親和性も強く、今までのアメリカ進出の難易度を効率よく克服してくれるのに絶好の機会。m-floがこのAnime Expoを初アメリカ公演のイベントに選んだことは、非常に賢明な決断だったように思う。
今年のAnime Expoで発表されたガンダムの実写版ハリウッド映画化のニュースが世界的な話題になったように、Anime Expoはアニメ業界だけではなく世界のエンタメ業界が注目するイベントになっている。日本人アーティストのアメリカ公演はオーディエンスのほとんどがアメリカ在住日本人、ということも珍しくはないが、世界中から注目されているAnime Expoのオーディエンスの圧倒的大多数、ほとんどがアメリカ人であるということも最後に付け加えておきたい。
(取材・文=D姐/写真=鈴木香織)