多人種が参加するストリートダンスの祭典、『HOUSE OF EXILE』に見る真のミックス文化

HOUSE OF EXILEの意義

 毎年恒例のニューヨーク・ストリートダンスの祭典『HOUSE OF EXILE』が、今年も5月19日に開催された。場所はマンハッタン56丁目にあるクラブ、Terminal 5。収容人数3,000人のハコだ。ぐずつく天候をものともせず、開場前には観客が列を成した。

 『HOUSE OF EXILE』は、EXILEがストリートダンスの本場ニューヨークに2014年に設立したダンススクールEXPG(EXPG STUDIO BY LDH)主催のダンスショーケースだ。EXPGはおそらく全米唯一のストリートダンスに特化したスクールゆえ、EXPGメンバーやインストラクターによるステージのみならず、活きの良いストリートダンサーたちによる白熱のダンスバトル、あらゆるカテゴリーのダンスパフォーマンス、超大物ミュージック・ゲストのステージを含み、毎年、大いに盛り上がる。

01-EXPG-NY-instructors-6-of-6
02-EXPG-Next-Generations-3-of-7
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03-PocketQuarter-Finals-2-of-5
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 まずはイベントMCもこなすシーボ(CEBO)、トゥイート・ブギ(Tweet Boogie)も加わったEXPGインストラクターたちによるにぎやかなステージで幕を開け、続いて同校キッズ・クラスの精鋭6人によるEXPGネクスト・ジェネレーションズ(EXPG Next Generations)のパフォーマンスとなった。ステージ狭しと溌溂と踊った6人の顔ぶれが、まさにストリートダンスの未来形と言えた。黒人、白人、アジア系、人種ミックス……かつてはラティーノと黒人の独壇場だったニューヨークのストリートダンス・シーンは、もはや “カラーブラインド” となりつつあるのだ。

 color-blind(カラーブラインド)とは、本来は色彩を正しく認識できない色覚異常を指すが、転じて「人種の違いを意識しない」という意味でも使われる。

 キッズのパフォーマンスに続いて、これも毎年恒例のダンスバトルが始まった。厳しい予選を勝ち抜いた8人のダンサーがステージに上がり、賞金1万ドルとストリートのプライドを賭けたバトルを開始する。今年は女性ダンサーが1人勝ち上がってきた。なんとフィンランドからやってきたというブロンドのダンサー、インシー(Inxi)だ。アジア系ダンサー、ポケット(Pocket)もいる。

 まずは第1回戦。審査員を務める3人のベテラン・ダンサー、セクゥ(Sekou)、キム・ホルムス(Kim Holmes)、ミスター・ウィグルス(Mr. Wiggles)の眼前で、自分が選んだ曲と相手が選んだ曲でそれぞれ90秒ずつ踊る。いずれも接戦の結果、インシー(Inxi)、ジャングル(Jungle)、カストロ(Castro)、E-ソロ(E-Solo)が勝ち残った。続く2回戦を経て、インシーとジャングルが決勝戦に臨むこととなった。

あらゆる人種のダンサーが集結

 今年は5組のダンスパフォーマンスがおこなわれた。

04-Banji-Twerk_Team-1-of-6
05-RAW-Street-Style-8-of-16
05-RAW-Street-Style-13-of-16
06-Derrell-Bullock-3-of-9
07-Vogue-Legends-13-of-26
07-Vogue-Legends-20-of-26
08-Jungle-semi-final-4-of-5
08-Marc-Marvelous-4-of-12
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バンジー・トワーク・チーム(Banji Twerk Team):女性8人のグループによるトワークダンス。架空の "チーク大学" のチアリーダーという設定で、NYニックスのチームカラーの青とオレンジのコスチューム。このチームもアジア系、黒人、白人の混成。

ロウ・ストリート・スタイル(Raw Street Style):Litefeet, Flexin, Krumpの3人を中心に総勢9人のダンサーが集ったユニット。警官の「手を上げろ」というセリフを挿入し、全員が両手を上げて後ずさるシーンなど、まさにニューヨークの黒人/ラティーノたちのraw(生)なストリート・シーンを再現したパフォーマンス。

デレル・ブロック(Derrell Bullock):マドンナやマイリー・サイラスなど女性アーティストとの仕事で知られるデレル自身を含む、黒人男性2人とアジア系、黒人、白人の4人の女性ダンサーによるセクシーなHouse/R&Bダンス。

ヴォーグ・レジェンズ(Vouge Legends):ヴォーグの大御所ホセ・エクストラヴァガンザ(Jose Xtravaganza)を中心とするユニット。ヴォーグはファッション・モデルがランウェイを闊歩する際のポーズを取り入れたグラマラスなダンス。マドンナの大ヒット曲『ヴォーグ』(1990)のビデオでフィーチャーされ、今や伝説のダンサーとも呼ばれるエクストラヴァガンザを含む7名のラティーノ/黒人ダンサーが艶やかで退廃的なヴォーギングを披露。

マーク・マーヴェラス(Marc Marvelous):現在のダンス・シーンの最高峰に君臨するのが、NYブルックリン出身のダンサー/コレオグラファーのマーク・マーヴェラス。アッシャー『OMG』『No Limt』のビデオでアッシャーと息の合った見事なダンスを披露し、他にもクリス・ブラウン、アリシア・キーズ、リアーナなど錚々たるアーティストとの仕事を手掛けている。今回のDr. EW, Frankie G, Eric Negronとのステージも、まさにマーヴェラスならではの洗練された都会的R&Bダンス。

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13-T-PAIN-22-of-31
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12-Ludacris-23-of-47
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10-DJ-Time-by-DJ-Envy-7-of-11
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10-DJ-Time-by-DJ-Envy-7-of-11
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 上記のダンス・パフォーマンスに続き、ニューヨークの人気Hip Hop/R&Bラジオ局、Power 105のDJエンヴィ(DJ Envy)によるDJタイムがあり、続いてシンガー/ダンサーのキャシー(Cassie)が登場し、NY校に続き今年新たに開校するEXPG/LA校のビデオを紹介。その後はスペシャル・ゲストのリュダクリス、T-Painのステージへとなだれ込んだ。共にベテラン・ラッパーとしての底力を、会場の若いオーディエンスに存分に見せつけた。

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