北野創の新譜キュレーション 第3回
神崎エルザ starring ReoNa、halca、XAI……飛躍に期待の若手女性アニソンシンガー新譜5選
続いては、第8回「東宝シンデレラ」オーディションでのアーティスト賞受賞を経て、2017年にデビューを果たしたXAI(サイ)をピックアップ。彼女が所属する<TOHO animation RECORDS>は、NHK『第1回アニソンのど自慢G』で優勝した経歴を持つYURiKAやシンガーソングライターの大原ゆい子といった新進気鋭の女性アニソン歌手を抱えており、それぞれ照井順政(ハイスイノナサ)や鈴木慶一に楽曲提供を受けるなど、“アニソンらしい楽曲”という固定観念に捉われない音楽を次々とクリエイトしています。
XAIの楽曲もそういった流れを汲むもので、劇場版アニメ『GODZILLA 怪獣惑星』の主題歌に起用された昨年のデビューシングル「WHITE OUT」では、BOOM BOOM SATELLITESの中野雅之がサウンドプロデュースを担当。この5月にリリースされたばかりの2ndシングル曲「THE SKY FALLS」も中野が楽曲を制作しており(作詞はねごとの蒼山幸子)、ブンブン直系の激しいギターがバーストするデジタルロックサウンドにエモーショナルな歌声をぶつけています。サウンド・歌唱ともに神秘的な雰囲気に満ちた中野提供のカップリング曲「Let me free」ではXAI本人が英詞をあてていたり、CDの「アーティスト盤」ではSeihoとSEKITOVAそれぞれのリミックス音源を収録したりと、刺激的な試みが多数。アニソンに先入観を持っている人にこそ耳にしてほしい作品です。
そして最後に紹介したいのが、アニソンファンにとってはもはやお馴染みの存在とも言える鈴木このみです。『ノーゲーム・ノーライフ』や『Re:ゼロから始める異世界生活』ほか数々の人気作でタイアップ曲を歌ってきた彼女ですが、今年でデビュー6周年を迎えながらもまだ21歳という若さ。それゆえにか吸収力や向上心もすさまじく、近年のライブではみずからギターを弾いたり、昨年末にリリースした初のベスト盤『LIFE of DASH』に自作のナンバー「夢へ繋ぐ今」を収録するなど、アーティストとして着実に成長を続けています。驚くべき歌唱力と表現力で迫るライブパフォーマンスは、LiSAと同様により広範に認知されてしかるべき凄みがあるので、機会があればぜひ体験してほしいところです。
そんな彼女のニューシングル曲「歌えばそこに君がいるから」は、声優デビュー作でもあるTVアニメ『LOST SONG』(TOKYO MXほか)のオープニングテーマ。作詞は鈴木をデビュー時から支える作詞家の畑亜貴との共作で、彼女が演じる主人公・リンの心情やアニメの世界観に寄り添いながらも、自身の歌にかける情熱と“歌う意味=生きる意味”をみずからの言葉で形にしていて、聴き手の心にストレートに刺さるメッセージ性がとにかく熱い! 畑と同じく彼女とは縁深い白戸佑輔が作編曲したストリングス+激しいバンドサウンドのアンサンブルも、沸々と湧き上がるようなエモさを宿しています。カラッとパンキッシュな夏ソング「Sky Blue OASIS」を含め、そのカッコ良さに理屈抜きで吹っ飛ばされるシングルと言えるでしょう。
■北野 創
音楽ライター。『bounce』編集部を経て、現在はフリーで活動しています。『bounce』『リスアニ!』『音楽ナタリー』などに寄稿。