LiSAは“最高”を更新し続けるーーベスト盤から紐解く“ロックヒロイン”としての歩み

LiSAは最高を更新し続ける

 アニソンシーンを越えてロック/ポップスなど、様々な音楽シーンで目覚ましい活躍を見せるLiSA。彼女のキャリア初となるベストアルバム『LiSA BEST -Day-』(以下『BEST -Day-』)、『LiSA BEST -Way-』(以下『BEST -Way-』)がリリースされ、5月21日付のオリコン週間アルバムランキングで1位、2位を独占して大きな話題を呼んでいる。女性アーティストのベストアルバムが1位、2位を独占するのは同チャートがはじまって以来史上4度目の快挙。また、LiSAにとっては本作が初の週間1位を記録した作品でもあり、改めて彼女の人気の高さを伝えるような状況が生まれている。

LiSA BEST -Day-&-Way- 全曲試聴MOViE

 まず特徴的なのは、今回の2作は本来2枚組になるはずの作品を単純に切り分けたものではなく、それぞれが独立した作品として楽しめること。パンク精神に基づくラウドでファストな「ロック」と、キュートな「ポップ」の両方を行き来する存在感をして“ロックヒロイン”と呼ばれることも多いLiSA。その活動に一貫して感じられる「ロック」と「ポップ」、「激しさ」と「明るさ」、「キャッチーさ」と「マニアックさ」といった相反する2つの要素を象徴するように、本作にはジャケットを白/黒で色分けした2つのパラレルワールドが広がっている。そしてもうひとつは、2枚に振り分けた楽曲が、通常のベスト盤のように発売順や人気順に並ぶのではなく、LiSA自身の手によって時代や音楽性を越えて再構成されていること。本作は、彼女自身の手によって再編集されたLiSAの歴史になっているのだ。

 中でも印象的なのは、両作ともにキャリアを代表する楽曲から作品がスタートすることだろう。『BEST -Day-』の1曲目は『魔法科高校の劣等生』のオープニング曲となった「Rising Hope」。この楽曲は実際に筆者が目にしたSUMMER SONICや、ROCK IN JAPAN FESTIVALといったロックフェス出演時にもアンセムと化していて、彼女をアニソンシーンの外側へと連れ出す楽曲のひとつとなった。

LiSA 『Catch the Moment』-Music Clip RADIO EDIT ver.-

 そして『BEST -Way-』の1曲目は、映画『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』の主題歌として大ヒットした「Catch the Moment」。その両方を最初期からLiSA楽曲にかかわる田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)が作曲しているという意味でも、ベスト盤らしい幕開けだ。また、自身最大のキメ曲を冒頭に持ってくる構成は、彼女が大きな影響を受けたパンク系のアルバムによく見られるもので、ここにもLiSAの根っからの音楽嗜好が垣間見える。

LiSA 『シルシ -MUSIC CLIP short ver.-』

 『BEST -Day-』と『BEST -Way-』は各14曲入りのフルボリュームながら、以降も人気曲が詰まっている。たとえば、相思相愛の関係となって久しい『ソードアート・オンライン』シリーズに提供した「crossing field」、「シルシ」、「Thrill, Risk, Heartless」、「No More Time Machine」は、初の表題曲でのバラードとなった「シルシ」を筆頭に、それだけで音楽性の広がりが感じられる。そのほか、1stシングル「oath sign」や現時点での最新シングル「ASH」といった『Fate』シリーズへの提供曲など、約7年間の間に残してきた人気曲の多さには改めて驚かされる。

 また、LiSAはもともと地元の岐阜でバンド活動を開始し、挫折を経てTVアニメ『Angel Beats!』の劇中バンド、Girls Dead Monsterの2代目ボーカルでデビューのきっかけを掴んだことで知られている。これまで彼女の作品にかかわってきた田淵智也、渡辺翔、堀江晶太(PENGUIN RESEARCH)、じん、マオ&御恵明希(シド)、MAH(SiM)といった気鋭クリエイターたちが手掛けた楽曲は、2010年代にアニソン/ボカロ/ロックシーンの垣根を壊してフラットに音楽を楽しむ状況を用意した象徴のひとつとも言えそうだ。彼らがアニソンに持ち込んだ音数や展開が多い、モダンでクオリティの高いロック/ポップサウンドは、2010年代のアニソンの可能性を広げることにも繋がった。つまり、LiSAのこれまでのキャリアは、志を同じくする様々な人々や仲間と出会えたこその道のりでもあったのだろう。

 そして、彼女自身がライブハウスからの叩き上げとして持っていた圧倒的なライブパフォーマンスの魅力と、2010年代に入ってより顕著になった深夜アニメ人気の一般層への広がりが合致したことで、彼女は日本を代表するロックシンガーのひとりとして、国内のみならず、世界でも多くのファンを獲得することになった。6月よりスタートする『アジアツアー LiVE is Smile Always~ASiA TOUR 2018~[eN]』では、国内以外でシンガポールや台北、香港といったアジア圏での開催も決定しており、世界での広がりも高まっている印象だ。

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