THIS IS JAPANが掲げる、2010年以降のオルタナティブ「継承しながら新しいものをブチ込む」

THIS IS JAPANが掲げる“オルタナティブ”

THIS IS JAPANの自我がデカくなってる(杉森ジャック)

一一このバンドには作曲者が二人いて。よりアンニュイで陰りのあるタイプの曲を書くKoyabinさんにとって、今の方向性ってどうなんでしょう。

Koyabin:あー、プライベートで言えば僕はいろんな音楽が好きで、当然オルタナティブロック以外も聴くんですよ。『DISTORTION』以前は、自分の好きなアレもコレも全部詰め込んでやろうと思ってたし。でも今は全部捨てて、すごくシンプルな曲を書ける心境にあるのかな。単純なエイトビートでも自分の趣味趣向って勝手に入ってくるだろうし。だから、ざっくり言うと「THIS IS JAPANっていうバンドに曲を書いている」っていう気持ち。今までは「俺の曲を書かなきゃ」って感じでしたけど、今はまずTHIS IS JAPANっていうバンドがいて、「このバンドはこういう曲やったらいいんじゃないかな?」って。

杉森:あぁ、確かにTHIS IS JAPANっていうものの自我がデカくなってる気がする。生き物として。俺たちがその手綱を上手く引かなきゃいけないし、もっとブッ飛ばしていきたいし。

一一バンドがまずはイメージを見せてくれる。そして、その先にはメインストリームが見えてますよね。「自分たちの好きなことだけやればいい、別に売れたくもないです」っていう感覚はまったくない。

杉森:そうですね。それは思います。間違いなくメインストリームに向かいたいし、当然向かうべきだと思ってますね。

一一だから今回は踏み込んだ歌詞が多いし、迷いがない。

杉森:はい。音を削ぎ落とした結果、歌もより聴こえてくるだろうし、歌いたいことをちゃんと自分たちで確認できてないと。だから歌詞はめちゃくちゃ自分を追い込みましたね。「TALK BACK」って曲で〈ベルベットアンダーグラウンド この声はそこまで聞こえるか〉って冒頭で歌ってて。さっきの伝承音楽の話ですけど、やっぱりオルタナティブロックの開祖って、いろんな説があるけど、俺はThe Velvet Undergroundだと思っていて。彼らは出てきた時そんなに売れなくて、後になってから評価されたバンドですけど、要は世間の流行からはっきりとズレてたと思うんですよ。それでもあの音楽をやりきったことが後世の人に伝わって評価されて。そういう、The Velvet Undergroundから始まったオルタナティブイズム、流行りからズレてようが何だろうが自分たちの中心にあるものを曲げずにやりきるっていう思想。そういうものを掲げるのがTHIS IS JAPANの使命かなと今は思ってます。

一一「TALK BACK」が素晴らしいのは、屈託が聴こえてこないこと。どうせ万人ウケしないっすよ、みたいな卑屈さがまったくない。

かわむら:僕ら、「カンタンなビートにしなきゃ踊れないのか」って曲もあるし、いろんな捉えられ方をしますけど、そこまで卑屈じゃないんですよ。いわゆるメインに対して不満をぶつけたいとか、何かをやっつけてやろう、みたいな気持ちは基本的にないんですね。「他のことは関係ないよ」っていう気持ちだけ。

杉森:うん、何かに対する怒りとか屈折って、嫌なものとの関わりがあるから生まれるわけで。それすら関係ない、自分の中で最高だって思えるものをただただ掲げていこうぜって。だから歌詞にお洒落なメタファーとかは必要なかったし、「俺はこう思ってんだ!」ってことだけでいいのかなと。

一一「TALK BACK」は頼もしい宣言が続く歌ですけど、ひとつだけ、〈絶望 通り越して〉っていう言葉も出てきますよね。

杉森:あぁ……もちろんTHIS IS JAPANで鬱屈を歌うつもりはないし、2010年代の今の日本で〈絶望〉って歌っても「はぁ?……知ってるわ」って話だと思うんです(笑)。でも、もともとロックとかパンクの本質に、挫折したり、落ち込みまくったところからの反抗、這い上がり精神みたいなものがあると思うんですね。それってむしろロックバンドにしかできないことで。今、DTMから始まって、打ち込みもエレクトロもボカロも何でもあるじゃないですか。そんな時代に、生身の4人がアンプとか運び込んで、古いギターとかわざわざ鳴らしてやるのがバンドであって。そこにあるものって、やっぱり這い上がってやろうっていう泥臭さ、だと思うんですね。もがきながら、なんとか上に辿り着きたいっていう。そういう気持ちがこのアルバムを作る中ですごい俺の中にあったし、それが端的に出たのが〈絶望 通り越して〉っていう言葉だと思います。絶望してる場合じゃねぇよ、っていう。

一一這い上がって、世の中をひっくり返したい。それは、ロック本来のロマンティシズムでもあると思います。

かわむら:杉森はロマンチストだと思いますよ。綺麗なものを見たがってるし、見せたがってる。で、僕らもそれに対しては「いいじゃん、格好いいよ」って言えるし。

杉森:うん。俺たちは音楽を「不満を言うためのもの」とも「闘うための道具」とも捉えてなくて。たぶんそれってハードコアの思想に近いと思うけど、それよりは、みんなパンクロックが好きで。激しいんだけど、なんか笑える部分とか茶化してる部分もあって。何かを訴えかけたいというより、めっちゃ楽しい、とにかくアガる、みたいな。そのド直球だけでいいし、それが最終的にメインに到達するならいいんじゃない? っていう気持ちですね。

(取材・文=石井恵梨子/写真=稲垣謙一)

『FROM ALTERNATIVE』

■リリース情報
『FROM ALTERNATIVE』
発売:2018年5月2日(水)
価格:¥2,000(税抜)
〈収録曲〉
1. MONKEY MUSIC
2. Z.Z.Z.
3. コースアウト
4. TALK BACK
5. IDLING
6. SHOTGUN SONG
7. RIDE
8. 妄想DAYTIME(album mix)

■ツアー情報
『THIS IS JAPAN TOUR`18 “FROM ALTERNATIVE”』
7月13日(金) 名古屋 HUCK FINN 
7月14日(土) 岡山 PEPPERLAND
7月29日(日) 仙台 FLYING SON
8月1日(水) 心斎橋 Live House Pangea
8月9日(木) 下北沢 SHELTER

■ライブ情報
『THIS IS JAPAN × 新宿Motion × しばたさおり企画 “SHINJUKU  ALLRIGHT!!!” 』
6月17日(日)新宿Motion、LIVE HOUSE Marble

<出演>
THIS IS JAPAN、 Emily Likes Tennis 、Teenager Kick Ass 、potekomuzin、 POLTA 、宇宙団 and more…
問い合わせ:新宿Motion  TEL:03-3202-8308(OFFICE)

オフィシャルサイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる