稲垣、草なぎ、香取のしなやかな行動力 映画『クソ野郎と美しき世界』15万人動員達成までの歩み
稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾の映画『クソ野郎と美しき世界』。2週間限定公開で動員数15万人を目指していたが、公式サイトによると4月14日現在18万人を超え、その数字を見事に達成した。この数字は、それだけ多くの人が彼らの覚悟に触れた証とも言えるだろう。彼らが今何を思い、どんな風に新しい地図を広げていこうとしているのか。やわらかな物腰の奥に見える、彼らのしたたかとも言える強い思いに、度肝を抜かれた人も多かったことだろう。彼らは根っからのエンターテイナーなのだ。
そして今改めて思うのは、しなやかさを備えた彼らの行動力。本作は、かつての彼らでは考えられないほど、テレビの宣伝はされていない。ならばと、彼らは劇場に足を運ぶ。ラジオにゲスト出演する。雑誌に登場する。自らSNSで発信する……この数週間で、なんど「◯年ぶりに登場」「本誌初登場」という言葉を目にしただろうか。この道が通れないのであれば、次の道を探す。仮に元の道より遠回りだとしても、そこから見えた景色も経験も飲み込み、自分たちの血肉にしていく。 まるでベーグルをもぐもぐと食べるように。
「なんかワクワクするんだよね。素直に“これ面白そうだな”と思うことが出来るって。自分の細胞が喜ぶ方に進めている気がします」とは、『文藝春秋』5月号で3人が対談した際に、草なぎが語った一言。「草なぎくんの言うように、細胞が活性化しているのは、僕も実感している」と稲垣も答えた。この発言に感じるのは、彼らの本能的なエンターテインメント性だ。そもそも細胞の集合体である私たち人間は、“一人”という単体の状態は存在しないのかもしれない。なかでもアイドルという生き物は、ファンや作り手が細胞のように集ってできている。細胞が喜ぶ方へ、細胞が活性化する方へ……新しい地図の歩みはまさに、ファンが喜ぶ方へ、作り手が活性化する方へと突き進んでいるように見える。
香取は、ラジオ『斉藤一美 ニュースワイド SAKIDORI』(文化放送)に出演し、「自分たちが想像していた以上に力になってくれる方がいて。ファンの方々が会員になってくれた数字がドンドン伸びていったときに、自分は1回ゼロになってスタートしようって思ってたのが申し訳ないくらいに。こんなにいるんだから!」と、自分は“1人”ではなかったと力強く語った。また、新しい地図がスタートして以来、アーティスト香取慎吾としての才能にもスポットライトが当たった。それも、今までと違う道を歩き出したからこそ。斉藤は、約20年前に台本の隅に絵を描いていた香取を覚えていると話した。きっと、斉藤が香取の絵に注目していたことも、こうして共演しなければ香取の耳には届かなかったかもしれない。すべてが連動しているのだ。新しい細胞に血が流れ込めば、別の形のエネルギーが生まれる。そのさまが、これから何かまた別のことが生まれるのではないかという高揚感につながっていく。
コメンテーターの姜尚中が「ちょっとうらやましい」と話したように、彼らのことを眩しく思う大人は少なくないかもしれない。いつの間にか同じ細胞ばかりを使い、自分の可能性を広げる冒険に出ることを恐れてしまいがちだ。もちろん、平穏に過ごすこともひとつの幸せ。だが、それ以上のことはできないと諦めるのは、まだまだ早そうだ。