稲垣、草なぎ、香取が超えていく自ら築いてきた歴史 『7.2 新しい別の窓』初回放送を見て

 稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾の新レギュラー番組『7.2 新しい別の窓』(AbemaTV)が4月1日、ついにオンエアされた。“世界初SNSバラエティ番組“と銘打ち、7.2時間の生放送に挑戦。ゆずやユースケ・サンタマリア、ヒロミ、江頭2:50、斉藤和義など、彼らを応援しようとゲストも大集結し、ライブあり、笑いあり、そして涙も……と、まさに3人と同じ時を生きていると思える7.2時間だった。

新しい地図公式HPより

 「新しいことを始めようとしてるみなさんじゃないですか。新しい何かに挑む方が好きなので、自分たちもそうしてきたし」。3人と横浜でゲリラライブを行なったゆずは番組に出演した理由を、そう語った。「夏色」「いつか」「タッタ」を歌い上げ、久しぶりにダンスを披露した香取が「3人で踊るのは『タッタ』が初めてかも」と話すと、北川悠仁が「この曲、初めてできて一番最初に踊ったのって中居(正広)さんなんですよ、縁がある!」と話を広げるなど、生放送ならではのトークでファンを喜ばせた。さらにステージを下りた後も、5人で足湯トークを披露。『NHK紅白歌合戦』という大舞台のトリを飾ったことのあるメンバーが、「これ放送してるの?」と笑いながら素の会話を繰り広げていく。国民的スターとなった彼らの中には、今もなお横浜の伊勢崎町で路上ライブをしていたころのゆず少年、そして新百合ヶ丘駅前でストリートダンスを披露していた10代のころの草なぎと香取が生き続けているのだろう。もちろん、変わらぬ美意識を貫く稲垣も。やってみたいこと、発信したいこと、どういう自分でありたいかを模索し、表現し続けてきた彼らは、多くのファンと出会い、同じ夢を見ることでスターになっていったのだ。

 挑戦し続ける人と、応援したい人。Webの力で立場に関係なく直接その思いが繋がる時代になった。番組では、香取が気になっていたSNSのフォロワーに会いに行くという新番組も実施された。Instagramで絵画のような写真を投稿している女性(myview_injapan)に、初めてダイレクトメッセージを送り、赤羽駅で待ち合わせ。「いつも見てます」と香取のほうが言うのは、実に新鮮な風景だ。3人は以前、パラ駅伝でと共に応援をしたYouTuberのはじめしゃちょーにも同じように挨拶をしていた(参考:YouTube)。彼らの言動はいつだってフラット、そして挑戦者に対するリスペクトを感じる。だからこそ、日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ)のスペシャルサポーターとして純粋に奮闘する姿に、私たちの心が揺さぶられるのかもしれない。番組中盤、スペシャルゲストとしてパラリンピックで5つのメダルを獲得した村岡桃佳選手も駆けつけた。クリエイターも、アスリートも、そしてエンターテイナーも、自分自身を超え続ける挑戦者という点で通じ合うのだろう。それぞれのジャンルで高みを目指している姿は美しく、そしてお互いにその努力を認め合う姿は素晴らしい。

 番組の後半では、さらに同じエンタメの世界で走り続けてきたユースケ・サンタマリア、ヒロミと3人によるホンネトークも。今週、香取の『おじゃMAP!!』(フジテレビ系)、草なぎの『ぷっすま』(テレビ朝日系)が終了した。そして『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)、『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)と立て続けに長寿番組が、その歴史に幕を閉じたことから話題はバラエティ番組の最終回に。人がいつか死を迎えるのと同じように、始まったものはいつか必ず終わりを迎える。だが、誰もができればそのときは来ないでほしいと願ってしまうもの。彼らも番組に対して、そんなふうに愛情を持っているのだと語られる。「やれるもんだったらずっとやってたいもん。でも求められないと出られないじゃんね」というヒロミの言葉に、香取も思わず「やっぱりショックだし、さみしい」と『おじゃMAP!!』終了に対する思いを打ち明けた。

 “ホンネトーク”というタイトルではあるが、やはり言葉を選んで話されるのは『72時間ホンネテレビ』から感じること。コメント欄に目を通しているという3人は、すべてを知りたいと思うファンの気持ちも察した上で、少しずつゆっくりと噛み砕いて伝えてくれているのだろう。きっと見守り続けていけば、彼らのタイミングで何かが語られるかもしれない。“今話せるだけの”ホンネトークで充分だ。なぜなら、ホンネを発信するには心の準備が必要だ。それが大切な人と離れ離れになったときの心境ならばなおさらだ。「ダメな草なぎにギターがあってよかった」先日、突然この世を去った大杉漣と親交の深かった草なぎは悲しみの淵に沈んでいたのだと香取が話した。それが公の場で語られるのも、きっと草なぎがその思いを斉藤和義と共に歌えるまでに心が回復したからだろう。「まだ気持ちの整理はつかない」とはいえ、魂を込めて「僕の見たビートルズはTVの中」を熱唱する草なぎからは、前を向いて歩みを進める強い覚悟が見て取れた。大切な人とも、大好きな番組という居場所も、別れは突然やってくる。だからこそ憧れの人と歌えている今を、最愛の仲間といるこの瞬間を、かけがえのないものだと実感したのだろう。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる