稲垣、草なぎ、香取の映画『クソ野郎と美しき世界』、エンドロールにある“5本目のドラマ”
稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾の映画『クソ野郎と美しき世界』が、4月6日より公開された。鑑賞後に思ったのは、“この映画について何から語ればいいのだろう”という圧倒感。見どころも、そこから感じられるものも、多すぎる。何よりも作り手のエネルギーが凝縮されていて、作中に登場する歌喰いのように、消化不良を起こしそうになった。そんななかで一つだけ言えるのは、こんな作品に出会えるタイミングは、2度とないだろう、ということ。本作は、4本の短編からなるオムニバスムービー。だが、エンドロールにこそ5本目のドラマがあるように思えた。
エンドロールで聞こえてくるのは、稲垣と草なぎが歌う「地球最後の日」。やさしいふたりの歌声は、物語の読み聞かせを聞いているような心地よさ。児玉裕一監督は舞台挨拶で「この歌で、2時間映画を撮りたい」と言ったほどストーリー性のある歌だ。歌詞の中に出てくる巨大な遊星が近づき地球にぶつかるという日には、大事な人に愛を告白したくなる……という心理は、SMAPという平和が当たり前に続くと信じていた私たちが、衝撃を受けた日に近いものがあるように思えた。つながりこそが、人生のすべて。そんな歌に身を委ねながら流れるエンドロールには、大きくNAKAMAの文字。そして、SMAPファンなら見覚えのあるスタッフたちの名前も。黒いスクリーンに浮かび上がる白い名前の数々。それは、かつて旅人が星の光をたよりに歩んでいたように、新たな地へ旅立つ3人にとって道標となる光だったのだろう。そして、一つひとつの小さな光が集まり、こうして大きなスクリーンを彩る映画になった。
「新しい地図を始めるっていうときに、いろんなクリエイターの方々が集まってくれて、 最初に会ったときの感動は忘れないですもん。そうそうたる人たちで……あのときいた(笑)?」。 公開前日の4月5日、香取はラジオ『澤本・ 権八のすぐに終わりますから。』(TOKYO FM)にゲスト出演した。パーソナリティを務める澤本善光と権八成裕は、かつてSMAPが出演してきた数々のCMを手掛けた敏腕CMプランナーコンビ。『SMAP×SMAP』 最終回では契約期間外にも関わらず、出演場面をつなぎ合わせたソフトバンクのCMを放送した立役者でもある。権八はSMAPの楽曲『ユーモアしちゃうよ』 などに作詞提供するなど、彼らの活動に深く携わってきた人物だ。「あのときいた?」という香取のいじりは、それほど親交がある証だろう。『クソ野郎と美しき世界』では企画として名を連ねている。
「こんなことやりたいって思い描いた人は、きっと今までにたくさんいただろうな。けど、できないでしょうね。それがこのタイミングがあって、いろんな方々の協力と、みんなの心がつながるってこういうことなんだなって」そう香取が語ったように、今回の映画はきっと今回このタイミングだからこそできあがったもの。まさに、地球最後の日に愛を叫ぶような気持ちで立ち上がった人々によってできあがった、3人への愛の形といえるだろう。