謙虚さを忘れそうになったときに読みたい“人生の教科書”ーー『LDH OUR PROMISE』レビュー

 EXILE TAKAHIROが「人生の教科書」と語った本がある。それは、LDHの社員と所属アーティスト全員に配られる『LDH OUR PROMISE』と呼ばれるものだ。A5判で100ページのシンプルな本。そこで語られているのは、EXILE HIROが多くの挫折と失敗から得た、人生のルールだ。同じ夢を抱く仲間と、そして社会に対する「どう生きるか」を宣言する“約束”ともいえる。

『LDH OUR PROMISE』(小学館)

 門外不出だったこの本が、小学館によりほぼ原文で再編集され、さらにLDHのアーティスト30名のインタビューが掲載された『LDH OUR PROMISE』として発売された。大切にしている言葉とその考え方、そして現役アーティストたちのエピソードトーク。タレントのサクセスストーリーを追ったエッセイとも、企業理念や社訓を取り上げたビジネス本とも違う、人生の挑戦者たちによる現在進行系の生き様に触れられる1冊だ。

 その誠実な内容と、ロジカルで冷静な語り口に、驚く人も多いのではないだろうか。エンタテインメントの世界で「スターになる」という人々には、どこか野心的で尖った印象が持たれがちだ。だが、彼らの口から語られる言葉は実に謙虚で、礼儀正しく、客観的。最初の章から、EXILE/三代目J Soul Brothersの岩田剛典が「自分の代わりはいる」とハッキリ語るほど。

 アーティストであっても、社会の一員であることに変わらないこと。何歳であっても、どんな立場であっても、1人の人間であることはブレないこと。人に愛され、人のために生きようとしなければ、誰の心を動かすこともできないこと……語られるのは、私たち一般人にも通じる、人として大切な根幹の部分ばかりだ。おそらく、何度も何度も試練をくぐり抜けるなかで、平易な表現に磨き上げられたのだろう。LDHが運営するエンタテインメントスクールEXPG STUDIOに通う子どもたちにも、無理なく読めるほどシンプルな言葉で表記されているのが印象的だ。

 教訓的な言葉が並んでいるにも関わらず、押し付けがましさがないのも、この本の気持ちよさ。冷静に読み進められるフラットな語り口ゆえに、彼らのファンではなかった人にとっても「なるほど」と共感できる内容になっている。事実、Amazonのカスタマーレビュー欄には、「正直LDHにはあまり興味がなかったのですが、友達からのすすめで買ってみました。LDH所属のアーティストたちがいかにして、数々の“困難”を“武器”に変えていったか。そこにはタレントさんではなくとも大事な心構えが書かれています」など、LDHファン以外の読者からの書き込みも目立つ。

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