『ごちうさ』DJイベントにみる、“アニクラ”文化の歴史と発展
TVアニメ『ご注文はうさぎですか?』(以下:ごちうさ)より、2018年1月13日に東京・豊洲PITにてDJイベント『ご注文はDJ Nightですか??』が開催される。同イベントは、アニメ作品規模で開催されるDJイベントとしては過去最大を誇るものだ。
『ごちうさ』は、『まんがタイムきららMAX』(芳文社)で連載中である同名人気漫画のTVアニメ作品。喫茶店ラビットハウスを舞台に、天真爛漫な少女・ココアや、オーナーの孫娘で内気な少女・チノの日常を描いた物語である。同作の劇場版である『ご注文はうさぎですか?? ~Dear My Sister~』も、11月11日より全国でロードショーされている。『ご注文はDJ Nightですか??』は、同アニメの主題歌「Daydream café」をはじめとする『ごちうさ』シリーズの楽曲のみがプレイされるアニソンクラブイベント(=アニクラ:クラブミュージックに代わり、DJによってアニメソングや声優アーティストによる作品、キャラクターソングなどがプレイされるクラブイベント形態の一種)。同作のキャラクターソング「Eを探す日常」を手掛けたPandaBoYのほか、アニソンDJとしても活動するDJ WILDPARTYとDJ和が出演。さらに、同作に登場するマヤのキャラクターボイスを務める声優 徳井青空も出演し、自身初のDJプレイを行うことを発表した。そんな『ごちうさ』は、これまでDJ文化と関わりの深い作品展開を行なってきた。
『ごちうさ』関連の作品として、2015年8月に『ごちうさDJブレンド/ご注文はうさぎですか?キャラクターソングメドレー』がリリースされている。同作は、TVアニメ第1期主題歌やキャラクターソング全18曲をノンストップで繋いだミックスCDで、アニメ作品によるミックスCDのリリースは極めて稀なものだ。また同年12月には、出演声優の水瀬いのりらがチノの誕生日を祝うイベント『CHINO Birthday Party』を開催。イベントでは、ゲストとして招かれたラテアート職人がチノのイラストが描かれたラテアートを製作する際、バックDJとしてPandaBoYが登場し、『ごちうさ』楽曲でのDJプレイを披露。BGMを用いるのではなく、DJを招いていることや先述のミックスCDのリリースなど、制作陣のDJ文化への敬愛を感じられる。『ごちうさ』楽曲の歴史を語る上で、DJという要素を欠かすことはできないといえるだろう。
秋葉原MOGRAと『Re:animation』により発展したアニクラ文化
そんな『ごちうさDJブレンド』のリリースや、『ご注文はDJ Nightですか??』の開催は、近年のアニクラ文化の発展に礎を持つ。そして、その発展には、東京・秋葉原に所在する秋葉原MOGRAが深く関わっている。同店は、2009年8月にアニソンDJバーとしてオープンし、アニソン原曲を用いる『アニソンインデックス!!』や、リミックス楽曲の使用を主とする『ANISON MATRIX!! -アニソンマトリクス』などのイベントを毎月開催。川崎・club 月あかり夢てらす(神奈川県)とともに、当時の関東において黎明期であったアニクラシーンの発展に大きく貢献してきた。また、MOGRAとともに、シーン発展の一翼を担ったのが、都市型野外音楽パーティの『Re:animation』(リアニ)だ。同イベントは2010年12月より始動した、リミックス音源を主とするアニクラであり、これまで新木場ageHaなどにて不定期で開催。現在は全国各地で開催されているアニクラだが、当時はまだクラブでアニソンを流せる環境や文化的背景の理解が整ってはいなかった。そんなアニクラ文化の発展要因のひとつとして、ファッション、音楽、アニメを軸に、2000年代半ばから後半にかけて渋谷にて開催されたイベント『DENPA!!!』の存在がある。あわせて、MOGRAやリアニの影響によるアニソンDJの増加及び彼らによる地方での小規模アニクラの開催、そしてMOGRAやリアニのフォロワーの増加が挙げられる。アニクラはこのような歴史を踏み、2010年初期から中期にかけ、地方都市や海外でも開催されるようになった。