coldrain、Sons Of Texas、OUTRAGE……新旧メタルバンドが考える伝統の保守と進化

 4組目はフランス・マルセイユ出身の4人組バンド、Dagobaです。結成は1997年ということで、今年20周年を迎えたばかり。そのサウンドはアメリカのモダンメタル……PanteraやMachine Headなどグルーヴィーなサウンドを信条とするメタルバンドと、Fear FactoryやStrapping Young Ladといったインダストリアルテイストのメタルバンドからの影響が強く、そこにヨーロッパのバンドらしい、クラシカルかつシンフォニック要素が加えられた個性的なスタイルを確立。これまでに6枚のアルバムを発表しており、今年5月には初来日公演も実現しました。

Dagoba『Black Nova』

 通算7枚目となる本作『Black Nova』は<Jive / Epic>(フランス国内)、<Century Media Records>(フランス以外)と大手レーベルからのリリース。90年代以降のモダンなヘヴィメタルを軸に置きながらも、EDMやインダストリアルテイストのシーケンスサウンド、劇的かつシンフォニックなシンセサイザーを効果的にフィーチャーすることで、単なるモダンメタルで終わらない独自性を作り上げています。これは最初に紹介したNothing Moreにも言えるのですが、その楽曲構成や音の組み立て方はどこか映画のサウンドトラック的でもあり、そういったドラマチックなスタイルは古き良き時代のHR/HMと通ずるものがあると言えるでしょう。ホラー映画を思わせるアートワーク含め、その個性的な世界観はヘヴィでダークでラウドな音楽が好きな人には必ず引っかかるものがあるはず。ヨーロッパでHR/HMというとイギリスやドイツ、北欧の印象が強いですが、フランスにもこうして長きにわたり伝統を守り続けてきたバンドがいることを、この機会に知ってもらえたらと思います。

【ダゴバ / Dagoba】「インナー・サン」MV

 最後の1組は、今年デビュー30周年を迎えた日本のヘヴィメタルバンド、OUTRAGEです。80年代前半にMetallicaや、その彼らが敬愛したNWOBHM(New Wave Of British Heavy Metal。70年代末のパンクシーンを経てイギリスの登場した、新世代のブリティッシュヘヴィメタル)バンドなどから影響を受けたOUTRAGEは、ここ日本で欧米にも匹敵するスラッシュメタルサウンドを確立。90年代に入ると『THE FINAL DAY』(1991年)や『SPIT』(1993年)といったアルバムを海外でリリースし、Nuclear AssaultやG.B.H.、Pantera、Corrosion Of Conformityなどの来日公演ではサポートアクトを務めるなどして、洋楽メタルファンからも高く評価されてきました。1998年にはボーカルの橋本直樹が一度脱退するものの、2008年には奇跡の復帰。以降もマイペースな活動を続けており、最近では『LOUD PARK 17』での熱演が記憶に新しいところでしょう。私もここで久しぶりに彼らのライブを観たのですが、往年の代表曲と最近の楽曲をバランスよくミックスしたセットリストに「過去を引き継ぎ、今を生きる」という彼らの信念を強く感じたところでした。

OUTRAGE『Raging Out』

 その『LOUD PARK 17』開催直前に発表された最新アルバム『Raging Out』はデビュー30周年にふさわしく、彼らの“これまで”と“現在”、そして“これから”がバランス良く混在した、王道のヘヴィメタルアルバムに仕上がっています。時代によってはその当時主流だったモダンなサウンドからの影響を打ち出してきた彼らですが、本作では自身のルーツと真正面から向き合い、オールドスクールなハードロックやタフでハードな爆走ロックンロール、ヨーロッパの香りがするパワーメタル、Metallica以降のスラッシュメタルなど、彼らが“どこから来たのか”がかつてないほど克明に描かれています。しかし、それらが単なるノスタルジーで終わることなく、しっかり“今のOUTRAGEの音”として表現されている。30数年にわたり活動してきた彼らだからこそできる、豪快な表現方法なのかもしれません。間違いなく本作は、彼らのキャリア上でも重要な作品になるはず。だからこそ、国内のみならず海外のリスナーにも胸を張って届けたい1枚です。

Outrage - Doomsday Machine

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

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