NMB48はアイドルシーンで屈指の“タレント集団”にーー横アリ公演にみた「独自の試み」の数々

NMB48は屈指の“タレント集団”に

「色んなことをやりつつ、自分たちらしさも極めつつ、それを皆さんに好きだと言ってもらえるグループであれるように、楽しむこと、楽しませることを一番に考えてやっていきますので、思う存分NMB48というグループを楽しんでもらえればと思います!」(山本彩・アンコールのMCより)

 NMB48はいま、アイドルシーンで屈指の“タレント集団”になりつつあるーー9月20日に神奈川・横浜アリーナで行なわれたアリーナツアー『NMB48 ARENA TOUR 2017』初日公演は、そんなことを思わずにはいられないほど、各メンバーが輝いて見えるライブだった。

 この日のライブは、NMB48にとって約2年半ぶりの関東圏ワンマン。ここ1年前後で、上西恵、薮下柊、藤江れいな、須藤凛々花、渡辺美優紀と、中心メンバーが次々とグループを巣立っていき、9月27日には木下百花まで卒業することになったNMB48は、果たしてどんな現在形を提示するのか。期待と不安が織り交ざった気持ちで会場へと向かったが、各メンバーが演出に携わったという公演の冒頭を観て、そんな不安は杞憂であると思い知らされることになる。

 最初の「overture」が流れ、メンバーが特攻服や改造制服をモチーフにしたヤンキー風の衣装で登場し「パンキッシュ」「マジジョテッペンブルース」の2曲を披露。しかし、白間美瑠は「最初からやり直したい! もっとかわいらしくオープニングを飾りたい」と提案し、再び「overture」が会場に流れ、彼女をセンターにキュートな衣装で「なめくじハート」を歌い踊る。だが、今度は木下が「ちょっと止めて! 卒業前にこれはキツい。もっとNMB48らしいオープニングをやりたい」と話し、横浜アリーナには3度目の「overture」が流れた。

 オープニングを2度やり直すという“天丼”も、そこに至るメンバーの絡みも、ライブというよりはよく練り込まれたコントのようで、そのスムーズさからツッコミにくいが、これは「NMB48らしさとは何か?」という一つのテーマに対するグループからの回答でもあるのだろう。カッコよさ、可愛らしさ、面白さ、元気の良さ、泥臭さ、艶やかさ。すべてグループがこの7年で積み上げてきたものであり、どれもがNMB48に欠けてはならない“らしさ”だ。アリーナとスタンドの間に円形のステージを作り、そこを各メンバーがアピールしながら走り回る「ナギイチ」「北川謙二」には、その要素が全てが詰まっているように思えた。

 そして、この日の演出やライブを語るうえで欠かせないのは、この日新設された“女性専用エリア”の存在だ。アイドル好きの女性客がここ数年で増えていることは明らかだが、専用エリア以外の割合も含めるとほぼ男女半々の客層というアイドルのライブは異様といえる。その光景を作り出した中心人物は、YouTuberとしてチャンネル登録者がNMB48本体を越える人気を博し、今年の『AKB48 49thシングル選抜総選挙』でも女性ファンを中心とした票で16位を獲得した吉田朱里なのだが、もちろんそれだけではここまでの割合にはならない。

 NMB48は当初から、各メンバーがそれぞれピン芸人かのごとくキャラクターの個性を強く打ち出し、現役メンバーはその個性をさらに磨き上げてきた。メンバー同士の関係性や各自のパーソナリティーは、他のグループよりも濃厚すぎて、まるで二次元のアイドルアニメコンテンツを消費しているような気持ちにすらなる(グループ内で山本彩や三田麻央を中心に漫画・BL本がやり取りされていることが関係あるかは不明だが)。筆者の近くにいるNMB48のファンも、男女ともにアイドルアニメコンテンツ好きの割合が多いのは偶然ではないかもしれない。ともかく、広く個人活動を繰り広げる中で獲得したファンが全て結集し、従来のファンや吉田を入り口とした女性ファンと混ざり合って、これまでに観たことのない客層と熱狂が存在しているのが今のNMB48のライブなのだ。

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