DAOKOの声はなぜクリエイターを魅了する? “歌”と向き合った「打上花火」を聴く

 そんなポップさとエッジーさを絶妙なバランス感覚で乗りこなしてきた彼女が、今回「歌」に真正面から向き合ったのが、岩井俊二の同名映画をリメイクしたアニメ映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の主題歌である「打上花火」だ。プロデューサーの川村元気氏は「(ヒロインである)なずなの声と重なるボーカリストが良くて、真っ先に浮かんだのがDAOKOさんだった。彼女の声は映画に感情やストーリーを与えてくれる」と、彼女の「声」が持つポテンシャルを高く評価したうえでの起用だと明かし、監督の岩井俊二も「彼女自身がアニメっぽい、二次元チックというか」と、浮世離れしたキャラクターに魅了されたという。

DAOKO × 米津玄師『打上花火』MUSIC VIDEO

 楽曲は、共作曲に米津玄師を、共編曲に米津と田中隼人(agehasprings)を迎えた盤石の布陣で制作。切ない鍵盤のフレーズと緩やかなテンポのトラップ的なリズムマシンの音色が組み合わさったAメロ〜Bメロ、それがフッと消え、打ち上がるように弾けて始まるサビ。DAOKOと米津の二声がユニゾンしたボーカルと、駆け上がるように展開するストリングスのアレンジが、聴き手の気持ちを高揚させてくれる。そしてなにより「夏の終わり」の情景をこれでもかというくらい鮮やかに浮かび上がらせるDAOKOの歌が、心に突き刺さってくる名曲だ。

 今回の『ミュージックステーション』の放送は、まさに夏の終わりともいえるタイミングということもあって、歌唱時にはより切なく胸を打ちそうだ。各分野のクリエイターを惹き付けてやまない彼女の声が、さらに広い地平へと届く痛快な瞬間は、もうすぐそこに迫っている。

(文=中村拓海)

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