LiSAのパレードはまだ始まったばかり アリーナツアーに見たエンターテイナーとしてのポテンシャル

LiSAのパレードはまだ始まったばかり

 LiSA初のアリーナツアー『LiVE is Smile Always~LiTTLE DEViL PARADE~』のさいたまスーパーアリーナ公演が6月24日、25日の2日間にわたり開催された。6月17日の神戸ワールド記念ホールからスタートしたこのツアーは、5月にリリースされたばかりのニューアルバム『LiTTLE DEViL PARADE』を携えて3都市で計4公演、約5万人もの動員を記録するものとなった。本稿ではこのうち、6月25日公演について記す。

 初のさいたまスーパーアリーナ公演、しかも2日連続という快挙を成し遂げたLiSA。前日の24日公演は彼女の誕生日だったこともあり、約1万6000人の観客とともに盛大にお祝いすることとなった。その幸せな余韻を残しつつスタートしたこの日のライブは、前日以上にリラックスしてアリーナライブを楽しむLiSAの姿を目にすることができた。

 今回のツアーはニューアルバム『LiTTLE DEViL PARADE』のコンセプトを引き継ぎつつ、周りと少し違った“普通じゃない”自分を肯定し、「自分らしく、毎日を精一杯生きよう、一緒にパレードしよう」と背中を後押しすることがテーマ。ライブのオープニングや幕間で上映されたムービーでもそういった趣旨のストーリーが展開され、会場に集まった“LiSAッ子(=LiSAファンの総称)”たちの注目を引く。すると、ギターを抱えてステージに登場したLiSAが「さいたま〜っ!」と絶叫し、「LOSER  〜希望と未来に無縁のカタルシス〜」からライブをスタートさせた。ヘヴィなビートとアグレッシブなギターサウンドが場内に鳴り響くと、会場一面がペンライトでピンク一色に染め上げられる。往年のグランジロックを思わせるこの曲で会場の空気を掌握したLiSAは、「さいたまLiTTLE DEViLの皆さん! 暴れる準備はできてる?」と問いかけ、そのまま「Brave Freak Out」に突入。彼女がアリーナ中央に設置されたセンターステージまで延びたランウェイを駆け抜けると、メインステージ前方からは炎が吹き上げ、会場中を緑のレーザー光線が飛び交うという演出で場内の熱気をさらに上昇させる。そこから人気ナンバー「oath sign」へと続くと、会場の盛り上がりは早くもこの日最初のピークに達した。

 たたみかけるように3曲連発したLiSAは、「昨日のうちにさいたまスーパーアリーナは温めておきました!」と宣言。この日会場で仮眠した際に人生初の金縛りに遭遇したエピソードを明かし、「そのとき、サンバのメロディが聴こえてきて(笑)。まだこの会場にはLiTTLE DEViLたちがいるみたいです」とオーディエンスを煽る。そこからダンサーチーム“メガドーナツ”のメンバーを交え、ライブおなじみの振り付けで「Merry Hurry Berry」をLiSAッ子たちと一緒にダンス。さらにニューアルバムから「JUMP!!」「Rally Go Round」「Peace Beat Beast」と、比較的ポップサイドの楽曲を連発していく。特に「Peace Beat Beast」ではセンターステージに用意された、LiSAの声などがサンプリングされたパッドを使ってフロアとの一体感を高めていった。

 「オレンジサイダー」では歌詞に合わせて浴衣風衣装に着替えたLiSAが、鍵盤ハーモニカを演奏する一幕も。夏の清涼感をほんのひととき感じられたかと思うと、そこから一転して「the end of my world」「Empty MERMAiD」とヘヴィサイドの楽曲を連発する。ここまで10数曲、最初のMC以外ではほとんど休憩らしい休憩もないまま、LiSAはステージ上をところ狭しと動き回る。昨年秋の横浜アリーナ公演ではまだアリーナライブに対してどこか余所行き感が見受けられたが、この日の彼女からはそういったモードは一切感じられず、むしろ「ここが私の庭」と言わんばかりに、この広々とした会場を完全に掌握しているように見えた。そして、あれだけの運動量にもかかわらず、彼女の歌からは一切の疲れが見えない。むしろ曲が進むにつれて、その歌声の“伸び”と“艶”はだんだんと増しているとさえ感じられた。この日のライブはLiSAというシンガー、エンターテイナーの凄味をまざまざと見せつけられた1日になったことを、ここに強く断言しておきたい。

 オープニングから続くアニメーションムービーが幕間に流れると、バックバンドやダンサーの面々とパレード風衣装に着替えたLiSAが、「キモチファクトリー」に乗せてステージ上をパレード。LiSAッ子たちとのコール&レスポンスを経て、「そしてパレードは続く」では息の合ったダンスを披露して観る者を楽しませてくれた。

 場内がハッピーな空気で充満されると、ここで会場の明かりが暗くなっていく。オーディエンスも手持ちのペンライトを消灯し、センターステージを灯す限られた明かりのもとで、LiSAはキーボード、アコースティックギターをバックに「リングアベル」をしっとりと歌唱。終盤の合唱パートでは、一体感の強い観客のコーラスに対して思わず「サイコーっ!」とこぼす場面もあった。された場内が暗転し、メロディアスなピアノフレーズが流れ始めると、センターステージには天高くそびえる巨大なドレスを身にまとったLiSAが「シルシ」をアカペラで歌い始める。ちょっとしたブレスまでもがしっかりと聴き取れるこの環境下で、LiSAは時に優しく、時に力強い歌声を場内に響かせ、聴く者の心を鷲摑みにした。さらに、曲の進行にあわせてドレスのスカート部分にはプロジェクションマッピング的な映像が次々と映し出され、彼女が最後のフレーズを感情豊かに歌うと会場は感動的な空気に包まれた。

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