米津玄師、ゆず、JUNNA、イトヲカシ、JAY’ED…J-POPは“他者”との共振で進化する

 アニメーション、ネットカルチャーなどと共振しながら、独自の発展を遂げている日本のポップミュージック。ガラパゴス化と言われたりもするが、欧米の音楽的トレンドとは一味も二味も違う変化を続けているJ-POPシーンには、世界のどこにもない個性を備えたアーティストが数多く存在する。今回はJ-POPの新たな進化を感じさせる新作を紹介しよう。

米津玄師『ピースサイン』通常盤

 TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』(日本テレビ系)のオープニングテーマとして話題を集めている米津玄師の新シングル表題曲「ピースサイン」には、米津が幼少の頃に強く惹かれていたアニメソング「Butter-Fly」(TVアニメ『デジモンアドベンチャー』(フジテレビ系)オープニングテーマ)の思い出が反映されているという。『ヒロアカ』HPに米津は「子供のころの自分はどうだったろう? 『ピースサイン』を作り始めてからはそういうことをよく考えます」とコメントを寄せているが、現在の自分と過去の自分をクロスオーバーさせたこの曲には、彼自身の音楽的原体験が含まれていると言っていい。さらにハチ名義で2010年に発表したボカロ曲「沙上の夢喰い少女」のセルフカバー「ゆめくいしょうじょ」も収録。豊かな情報量を持った歌の力に圧倒される。

米津玄師 MV「ピースサイン」 
ゆず『謳おう』EP

 今年4月に20周年記念ベストアルバム『ゆずイロハ』をリリース、アニバーサリーイヤーを彩る全国ドームツアーを終えたばかりのゆずから、早くも新作『謳おう』EPが到着。アコースティック・サウンドをテーマにした本作で彼らは、その原点とも言える“アコギと歌”をさらに深く追求している。特に印象的なのは「カナリア」。ヒップホップグループ・MOROHAのUK(Gt)とのセッションから生まれたこの曲は、シャープかつオーガニックな手触りのトラックを軸にしたナンバー。様々なジャンルを取り込みながら音楽の幅を広げてきたゆずのスタンスが端的に示された楽曲と言えるだろう。来週6月28日にはポップに振り切った『4LOVE』EPをリリース。20周年を越えても、彼らの創作意欲は尽きることがない。

ゆず「カナリア」(Short Ver.) 
JUNNA『Vai! Ya! Vai!』(通常盤)

 TVアニメ『マクロスΔ』(TOKYO MXほか)に登場する「戦術音楽ユニット“ワルキューレ”」のメインボーカル、美雲・ギンヌメールの歌を担当。“マクロス史上、最年少の歌姫”として注目されたJUNNA(現在16才)が『Vai! Ya! Vai!』でソロデビューを果たす。「ワルキューレ」の楽曲でもパワフルかつエモーショナルなボーカルで存在感を示していた彼女だが、ロック歌謡をテーマにしたデビューミニアルバム『Vai! Ya! Vai!』では、そのポテンシャルの高さをさらに強く発揮している。軸になっているのはタイトル曲「Vai! Ya! Vai!」。強靭なロックグルーヴと昭和歌謡的なメロディが共存するこの曲は、ソロアーティストしての彼女の方向性をしっかりと示している。不満、葛藤からの脱却を描いた「Catch Me」では作詞に参加するなど、彼女自身のキャラクターが感じられるのも本作の魅力だ。

JUNNA「Vai! Ya! Vai!」(short ver.) 

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