『MIND CONDUCTOR』リリースインタビュー
YURiKAが考える、アニソンシンガーの特徴と目指す道「“曲推し”をもっと増やしたい!」
「アニソンシンガー」。今でこそよく使われる言葉だが、少し前までその存在は今ほど大きなものではなかった。ざっくりとそれはアニメの主題歌を担当する歌手のことを指すが、元来それはアーティスト活動におけるひとつのオプションとして、あるいは声優業の一環として行われていたため、アニソンシンガーそのものを職業として志す人というのは、極めて稀であったと言ってよい。
しかし今、どうだろう。数々のアニメ主題歌の大ヒットや、LiSAやMay’nといった新しいスターたちの活躍は、新世代の誕生を招いた。つまり「歌手」ではなく「声優」でもなく、「アニソンを歌う人」になりたいと夢を抱く世代の誕生だ。今年から始まったTVアニメ『リトルウィッチアカデミア』のオープニング主題歌を担当するYURiKAもその一人である。1月から始まった同アニメの主題歌で晴れてアニソンシンガーとしてデビューし、5月24日には『MIND CONDUCTOR』をリリースする彼女の歩みを、ここに記録したい。(荻原梓)
「アニソンの魅力って、一番はライブにある」
ーーYURiKAさんは幼いころから歌が好きだったそうですね。
YURiKA:3歳の頃にピアノを習い始めたんですけど、練習がすごく嫌で。その時からピアノを弾くより歌ってるほうが楽しいと思うようになりました。埼玉県の蓮田市出身なんですけど、周りに田んぼと畑しかないところで。そこで大きい声で歌ってると、ばあちゃんが喜んでくれるんですよ。それで歌うのが楽しいな、と子供ながらに思ってたのが幼稚園の頃です。
ーーその頃はどんな歌を歌ってましたか?
YURiKA:その頃はアニソンではなく、モーニング娘。やミニモニ。がすごい好きで。幼稚園の卒園文集の時にはもう「歌手になる」と書いてました。
ーー本格的に歌手の道を目指そうと思ったのはいつ頃でしょう?
YURiKA:小学校6年生の時にAKINOさんが歌う「創聖のアクエリオン」(アニメ『創聖のアクエリオン』主題歌)がCMで流れていて。CMって普段なんとなく見てるじゃないですか。でもその時にサビの歌詞とメロディがドカンと来て。この数秒間でこんなに興味をそそられるのってアニソンしかない、とその時に思って。それで「歌手」というより「アニソンを歌う人」になりたいと決めてました。
ーーそれからこれまでずっとアニソンを歌うことを目指してきたのでしょうか?
YURiKA:そうですね。ただその時に、なりたいと思ってもなり方がわからなかったんです。特にアニソン限定となると難しくて。田舎だったのでネット環境もないし、オーディションってどこでやってるかもわからないというレベルだったんです。今でこそいろんなやり方があるじゃないですか。動画をあげてみたりとか、ライブをひたすらやったりとか。私は高3のときにはじめてアニソン限定のオーディションがあることを教えてもらって、受けてみたんです。
ーーさきほど“田んぼで”というキーワードが出ましたが、YURiKAさんの歌声を聴いてると“青い空、白い雲をバックに大草原!”みたいな景色が浮かびます。そういう面に影響を与えているような、子供の頃から参考にしてた歌手はいましたか?
YURiKA:実は今回の2ndシングル表題曲の「MIND CONDUCTOR」やデビュー曲の「Shiny Ray」は、今までの私の歌い方と全然違うんですよ。もともと私は浜崎あゆみさんが好きだったんですね。ビブラートをガンガンにかけたりっていう”歌い上げる系”の人をよく聴いていたので、むしろYURiKAになってからの歌声に自分自身が戸惑うことがあったり。
ーーじゃあ、もともと好きだったモー娘。とか浜崎あゆみとかのほうがどちらかと言うと近かったんですか。
YURiKA:そうですね。アニソンもこう、たとえば水樹奈々さんとか、歌い上げる系のアニソンを今まで歌ってきました。
ーーへえ! コブシを積極的に入れてみたり?
YURiKA:そうです。なので今の歌い方のほうが新しいんです。自分の中では。
ーーデビュー曲の「Shiny Ray」の時は色々と直されたりもしたんでしょうか。
YURiKA:はい。しゃくり、ビブラートは無しでとか。
ーー意外でした。現在の歌い方で参考にしてる歌手はいますか?
YURiKA:やっぱり、「創聖のアクエリオン」を歌っていたAKINOさん。なんていうんですかね、どのアニメの主題歌を歌ってもAKINOさんってわかるんですよ。声の存在感がすごくて。私はどちらかというとデビューしたばかりなので、今は作品に引っ張ってもらってる面があると思うんです。けど、現在トップでご活躍されてるLiSAさんやMay’nさん、水樹奈々さんたちは、どの作品の主題歌を歌ってもみなさん自分の色が残っているので、そういう方々に憧れます。
ーーたとえば子供の頃にモー娘。が好きだったのでアイドルに憧れるとか、浜崎あゆみが好きなら(アニソンに限定せずに)歌手になりたいという方向には行かなかったのはなぜでしょう。
YURiKA:「創聖のアクエリオン」に出会うまではそう思ってたんだと思います。
ーーそれほど『創聖のアクエリオン』の衝撃が強かったと。
YURiKA:大きかったですね。当時ちょうど、『涼宮ハルヒの憂鬱』や『けいおん!』といったアニメ由来の音楽が盛り上がってた時期でもあったので、アニソンに影響されることも多かったんだと思います。
ーー『創聖のアクエリオン』の時期(※筆者注:アニメ放映は2005年。その後CM効果で2007年頃に再び大きな話題を呼ぶ。)だと「アニソンシンガー」と言っても、一般の方はまだピンと来ない頃だったと思うのですが、その頃から一貫して「アニソンを歌う人になりたい」という目標がブレずに来れたのはなぜでしょう?
YURiKA:アニソンが好きでずっと聴いていたからですね。それと、アニソンの魅力って一番はライブにあると思っていて。たとえば色々な方が出演するイベントだと、言ってしまえばお目当てじゃない方とかも出るじゃないですか。でもアニソンのイベントだと、みんなでその場を楽しもうという空気というか、(サイリウムを)この曲はこのカラーでとか、このアーティストはこのカラーでとか、サビの時に色を変えようとか。それって曲に対する愛情がないとできないことだと思うんですよね。
ーー“曲推し”、あるいは“アニメ推し”が多いと。
YURiKA:そうなんです。だからアニソンのライブのお客さんの愛情表現がすごい好きで。みんな自由に楽しみながらのライブも良いとは思うんです。座って静かに聴くとか。でも、私はみんなで力を合わせて盛り上げようみたいな、そういうライブの一体感がすごく好きなんです。それがアニソンをずっと好きでいられてる理由かなと。
ーー確かにアニソンのライブの盛り上がり方ってすごいですよね。後方のお客さんまで全員漏れなく曲に合わせて動いてます。
YURiKA:そうなんですよ。私ライブがすごい好きで。今回のカップリング曲の2曲目の「Fairy Way」もライブで歌ったらきっと盛り上がるだろうなあと思ってますし、3曲目の「Beautiful Future」は「MIND CONDUCTOR」と全然違う歌い方にしてるので、こうやって色んな曲に挑戦していくうちに、みなさんがイメージしてる私と、私がなりたいアニソンシンガー像みたいなものが近づいていくんじゃないかなと。