乃木坂46、5年目のバースデーライブで開いた“第2章”の扉

乃木坂、5年目BDライブで開いた“第2章”の扉

 「次の5年間も、楽しいことや辛いことがあるかもしれないけど、みなさんと一緒に新たな坂を登っていけたらと思います」(生駒里奈・3日目MCより)

 乃木坂46が、2月20日から22日にかけて行なった『5th YEAR BIRTHDAY LIVE』は、グループの転換点を明確に提示した充実の3日間であり、同時に「5年」という大きな変革のタイミングを感じさせるライブだった。全てを取り上げるにはあまりに情報量が多すぎるため、本稿では3日間の中から象徴的だったいくつかの出来事を、分析も交えつつ紹介したい。

橋本奈々未卒業公演が「寂しい」が「悲しくはない」理由

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「皆さんが帰った後も心にこびりついて離れないライブにしたい。網膜にこびりついてやる!」(橋本奈々未・1日目MCより)

 1日目は、『5th YEAR BIRTHDAY LIVE~橋本奈々未の卒業コンサート~』と題されたように、グループ内外で多大なる存在感を発揮し続けたメンバー・橋本奈々未の卒業公演も兼ねたライブだった。彼女が最初で最後の表題曲センターを務めた「サヨナラの意味」でスタートし、橋本が中心となって各シングルから1曲ずつを選抜したというセットリストに沿って進行。とはいえ、自分を中心に据えたセットリストではなく、要所で当時の研究生メンバー曲である「ボーダー」や、自身が好きだというアンダー曲「ここにいる理由」を挟むなどしっかりとグループの未来を提示する優しさも見せた。また、橋本が一番好きな楽曲だと言い続けてきた「生まれたままで」では、念願叶ってパフォーマンスに参加した。

 橋本とはシンメトリーのポジションになることが多く、彼女をよきパートナーとして支え合った白石麻衣は、序盤の「偶然を言い訳にして」で本人より先に涙を見せる。ファンの前でめったに泣かない橋本は、本編が終わっても涙を流すことはなかった。このまま最後まで行くのかと思いきや、1人で登場したアンコールの冒頭、自身のソロ曲であり卒業ソングの「ないものねだり」について「<ないものねだりしたくない>って歌ってるけど、こんなに素敵な景色を何度も目の前にしてるのに、別の道を進みたいと思うのが、一番のないものねだりだと感じています」と号泣。最後の最後に見せた彼女の飾らない素顔に、多くのファンがもらい泣きをするなか、橋本はグッと涙をこらえ「自分で選んだ道の先に正解があると信じてます」と同曲を歌唱。その後白石からの手紙が読まれ、最後は再び「サヨナラの意味」。終始彼女の推し色である緑のペンライトが会場を包み込む中、1人のアイドルがその大きな役目を終えた。

 橋本奈々未という人は、周囲から「アイドルらしくない」と評されるキャラクターも含め、グループにとっては代替不可能な存在だ。しかし、この公演は決して橋本が不在になることを悲しむのではなく、ある種の寂しさは感じさせつつも、彼女の新たな一歩を優しく見届けるものだった。それはグループが充実期を迎えており、しっかりと送り出す体制が整っているからこそ。決して当たり前の光景ではない、ということは記しておきたい。

不在となった「混ざり合い」の象徴

 今回のタイミングでは、橋本が卒業を迎えたことに加え、別の場所・代々木第一体育館では、グループに縁のある人物ーーAKB48の小嶋陽菜が卒業コンサート『こじまつり』を行なっていた。小嶋は白石麻衣にとってレギュラー番組での共演歴も長い「アイドルが憧れるアイドル」の先輩であり、2グループが溶け合った「傾斜する」(こじ坂46)や「混ざり合うもの」ではセンターを務めた、いわば乃木坂46とAKB48の橋渡しの象徴だ。

 『5th YEAR BIRTHDAY LIVE』の2日目であり、『こじまつり』前夜祭の21日には、生中継をしながら両会場で「混ざり合うもの」がパフォーマンスされた。披露前に横山由依(AKB48)が「(このコラボが)最初で最後になるかもしれない」とコメントしていたことが強く印象に残っているのだが、確かに橋渡しとなっていた小嶋が不在になり、“公式ライバル”という名目で立ち上がった乃木坂46が独自路線で覇権を手にしようとしている現在において、今後2つのグループが「混ざり合う」必然性は薄まっていくのかもしれない。

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