Maydayが見せた、スタジアムバンドの風格と人懐っこさ ポルノ岡野昭仁も登場の武道館公演レポ

Mayday、スタジアムバンドの風格と人懐っこさ

 台湾の5人組ロックバンドMaydayが、2月3、4日に東京・日本武道館にて単独公演『「Re:DNA 〜2017 復刻版〜」at 日本武道館』を行なった。彼らが武道館に立つのは、2015年以来2度目となる。今回は、2月1日にリリースされたばかりの最新アルバム『自伝 History of Tomorrow』を携えてのパフォーマンスということもあって、いち早く新曲をライブで堪能しようと会場には多くのファンが詰めかけた。

 筆者が観たのは、2日目のステージ。開演時間の17時を回って客電が落ちると、青く光る無数のサイリウムが会場を幻想的な空間にする。そんな中、ステージの大スクリーンに「Mayday」のロゴが映し出され、大歓声の中ライブがスタートした。

 序盤は疾走感溢れるロックナンバー「モーター・ロック / 軋車」や、佐藤健主演ドラマ主題歌で日本語詞の「Do You Ever Shine?」、『トランスフォーマー博』(2014年)のテーマソングにも抜擢された「DNA」など、日本のファンにもお馴染みの楽曲を矢継ぎ早に披露していく。台湾では国民的人気を誇るバンドだけあって、アレンジも“スタジアム仕様”。MING(冠佑)のドラムスとMASA(瑪莎)のベースが大木の幹のように楽曲を支えれば、MONSTER(怪獸)とSTONE(石頭)のギターが様々な音色を使い分けながら楽曲を彩る。無駄な音を極力削ぎ落とし、一つひとつの音を太くすることによって、ステージから離れたオーディエンスにも全てのフレーズがしっかりと届くようにしているのだ。そして何より、ASHIN(阿信)のボーカル表現力の幅広さに舌を巻く。伸びやかなハイトーン・ボイスから、ドスの効いたバリトン・ボイスまで、巧みに使い分けながら情感たっぷりに歌い上げていく。

 かと思えば、ふとした拍子に「手作りっぽさ」や「素朴さ」を感じてほっこりさせられた。例えば、オープニングや幕間で上映されるメンバー主演のショートムービーは、まるで一昔前に日本で放送されていたドラマのようだし、演奏中に映し出されるCG映像も、ちょっと懐かしいテイスト。MCでは、メンバーの話す日本語は中国語に、中国語は日本語にリアルタイムで翻訳されてスクリーンに映し出されるのだが、どうしてもタイムラグが出来てしまうため、変なタイミングで拍手や笑いが起きたり、翻訳者のミスタイプによるリアクションが、メンバー達を混乱させたりするなど、ハプニングも連続。しかしそういうユルさが、アジアのスーパーバンドらしからぬMaydayの親しみやすさ、人懐っこさと相まって、彼らを一層魅力的に引き立てているようにも思った。

 しかし中盤からは、巨大な球体スクリーンがステージ上に現れ、そこに魚眼レンズで撮影した都会の雑踏や、宇宙から見た地球の姿、あるいは子宮の中で眠る胎児を映し出す大掛かりな演出も。それが「人生有限会社 / 人生有限公司」や、「満ち足りた想い出 / 知足」、「人生は海のよう / 人生海海」といった楽曲の歌詞世界とシンクロすることによって、まるで一編の映画を観ているような相乗効果を生み出す。さらに、ステージの両側にせり出した花道に2人のギタリストが立つと、その床がどんどん上昇していくというアクロバティックな仕掛けも飛び出しファンを驚かせた。

 ところでMaydayの楽曲には、ビートルズやオアシスなどブリティッシュロックの“匂い”を感じさせつつ、80年代の日本の歌謡曲が持っていた“湿り気”もある。例えば、中盤に演奏された大作「The Yet Unbroken Part of My Heart / 我心中尚未崩壞的地方」は、アコギの弾き語りから徐々に盛り上がっていくところなど、Oasisの「Wonderwall」を思わせる。それどころか「John Lennon+僕 / 約翰藍儂+我」では、“いつかビートルズと呼ばれたい”などとてらいなく歌う。アレンジもバロックポップ風で、後半には「All You Need Is Love」のオマージュともいえるようなシンガロングまで登場する。その一方で、「春の叫び / 春天的吶喊」や「乾杯」のマイナー調のメロディやケレン味のあるアレンジなど、芹澤廣明が活躍していた頃の昭和歌謡を彷彿とさせるのだ。この湿っぽさ、エモさは、会場の半分以上を埋め尽くす10代後半〜20代前半の男女には、どんな風に響くのだろうか。

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