NEWSの4人に感じる、アドラー的な生き方 ドラマ『嫌われる勇気』原案を元に分析

加藤シゲアキが示す、劣等感の克服

 加藤は、これまで多くの劣等感を克服してきたように見える。アイドルとしても小説家としても活躍している姿に尊敬の念を抱くが、一方で人としての痛みに敏感であったり、傷つきやすい繊細な心が、一般人のそれと大きく変わらないところに人間らしさを感じるのだ。ジャニーズの王道といえば、誰からも愛されて、何をしても優秀なキラキラな王子様。そんなジャニーズらしさと、人と仲良くなるまでに時間がかかったり、運動が得意ではなかった加藤のパーソナルな部分を比較してしまうと、劣等感を抱きやすい環境だったように思う。

 そして、NEWSの辿ってきた歩みもグループ活動ができなかったり、メンバーが次々と脱退してしまったり苦難に満ちたものだった。他のグループと比べたら「なぜ自分たちばかりが」という考えが浮かんでもおかしくはない。アドラー心理学では、劣等感は向上していく上で必要不可欠なものとして取り扱われており、その解消方法として「なぜ(Why)自分はダメなのか」ではなく、不完全な自分を受け入れて「どうやって(How)よりよい自分になるのか」と考えることが大切なのだとされている。まさに加藤が踏み出した小説家として一歩は、「どうやって(How)自分がNEWSに貢献できるか」の先にあったもの。NEWSの現状、自分自身の得意・不得意を真正面から受け入れたことで、劣等感をバネにした印象だ。

 テレビ番組で小山慶一郎と共にNEWSを思って涙を流す姿を見せたり、ラジオで思ったことをスバッと言い切る独自のスタイルが確立したり、レギュラー番組『NEWSな2人』(TBS系)や『白熱ライブ ビビット』(同)などで様々な現場に足を運んで多くの人とふれあったり……。心と体を張ったチャレンジが増えており、奮闘する姿が視聴者から支持されるようになった。ドラマ『嫌われる勇気』でも、弱い男性という新たな顔を演じていることで多くの人の心を掴んでいるのだ。加藤が伸び伸びと生きている姿そのものがファンを元気づける。ありのままの自分で他者に貢献することこそ、まさにアイドル。「ジャニーズとはこうあるべき」の劣等感を克服した、新しい活躍の道だろう。

小山慶一郎が抱く、NEWSという共同体感覚

 リーダーである小山を表すのは「共同体感覚」という言葉。他者を信頼し、他者の役に立ち、他者に貢献した自分を受け入れていること。生きる喜びや幸せは、こうした他者との関わりでしか得られないというのが、共同体感覚。「人は1人では生きていけない」とは、あまりにも有名な言い回しだが、実際にそうなのだ。ファンがいなければアイドルは存在しないし、読む人がいなければ記事もないのと同じ。私たちが何かを成し遂げるときには、必ず他者との繋がりが必要になる。

 他者からの批判に屈しない手越、他者との適切な距離感を保つ増田、他者との劣等感を克服した加藤。ともすれば、他者との関わりを克服している3人は、個として強くなったことで、すでに1人で生きていける自信を持っていることだろう。実際に、テレビやラジオ、雑誌など、ソロでの活動も見受けられる。だが、NEWSというチームになれば、ソロでは成し得ることができない、より大きな目標を叶えることができる。そこで、3人のメンバーという他者をつないでいるのが、リーダーである小山なのだ。

 小山は、メンバーに対して全幅の信頼を寄せているのがよく分かる。ラジオ番組『KちゃんNEWS』(文化放送)でメンバーが登場したときには、どんなに自分と違う意見であっても、一度「そうね」「なるほどね」と受け入れ、その上で考えを述べる。ニュースキャスターという仕事に適性があったのも、きっと他者を信頼して、受け入れることができるからではないか。常に、現状を踏まえて、どうしたら自分が役に立てるのかを考えて、行動する。そしてメンバーやファン、さらに社会全体が幸せになることを、自分の幸せとして感じられるのだろう。

 今の世の中、他者を蹴落としてでも、自分にスポットライトが当たるように振る舞う人も少なくないだろう。その中で他者を重んじ、NEWSの成功が自分自身の自己実現だと思える小山こそ、ドラマ『嫌われる勇気』でいうところのナチュラルボーンアドラー(生まれながらにアドラー心理学を体現している人)なのではないか。

 長々とアドラー的な視点で分析してみたが、もちろんそんなことを考えなくともNEWSは、とても魅力的だ。だが、もし今の生き方にモヤモヤしたり、他者との関係性に行き詰まったら、NEWSの一人ひとりの考えを深く知ってみるのもいいかもしれない。彼らが、きっと生きる参考書になって元気と勇気をくれるはずだ。

(文=佐藤結衣)

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