姫乃たま、DARTHREIDERにラップのイロハ教わる「気持ちいいリズムを見つけるのが最初の作業」

姫乃たまがダースレイダーに教わるRAP術

1Verse――ラッパー入門~DARTHREIDERの場合~

姫乃:ダースさんは、どうしてラップをやろうと思ったんですか? あっ、そうか! さんぴんキャンプ直撃世代ですもんね。

DARTHREIDER:そうそう、1996年7月7日に日比谷野外音楽堂で開催されて、日本でラップとヒップホップを追求していたラッパーが大集結してさ。まだラップは日本語と英語どちらでやるのが正しいのか論争になっていたり、ニューヨークのラップ文化を継いだアンダーグラウンドの尖ってるラップはラジオ局から音楽じゃないから流せないって言われたり、一方でEAST END×YURIが「DA・YO・NE」で紅白に出場したりして、日本でのラップの印象とか立ち位置が定まってなかった時期なんだよね。主催者のECDさんが「J-RAPは僕が殺した!」って、自分達がやっている音楽に対する世間からの呼称に対抗する一幕もあって。

姫乃:やっぱりダースさんも、そこですごく影響されたわけですね。

DARTHREIDER:あ、僕行ってないの。

姫乃:えっ

DARTHREIDER:朝起きたら雨だったから、会場も野外だったし、やってないと思って行かなかったの。次の日、みんなその話で持ちきりでさ……。

姫乃:ええ……。ラップ自体は音源で聞いてたんですか?

DARTHREIDER:予備校に、医者の息子で全然医大に受かる気なくて三浪してたこうじ君っていうのがいて、その人が自習室でラジカセ担いで音楽流したり、ラップしてるの聞いてた。

姫乃:それでどうして自分もラップをやろうと思ったんですか?

DARTHREIDER:もともと音楽は好きでよく聴いてたんだけど、ギターはできないし、ピアノも弾けないし、ボーカルってガラでもないし、自分でやることは諦めてて、僕は聞く側だって思ってた。でも、こうじ君見てたら、あれ、なんか楽譜もいらないしできそうと思って。

姫乃:ラップってどうやって始めるんですか?

DARTHREIDER:ラップのCD借りてきて、どうやってやってんだろーって思いながら、家で歌詞カード見たり、自分でも歌詞書いたりしてた。当時は録音する機材がなかったから、ポケベルの留守番電話機能に自分のラップを吹き込んで、友達に聞かせるっていうのをやってた。19歳くらいかな。あ、ポケベルって何って話だよね。そこに電話をすると留守番電話が40秒とれるのよ。

姫乃:ポケベル……! 初めてライブに出演したのは、何がきっかけだったんですか?

DARTHREIDER:東大受験したんだけど、合格発表の日の夜に高円寺のドルフィンってところでこうじ君のイベントがあって、もし受かってたら1曲歌いに来いよって言われてたから本当に行って、ラップしたらめっちゃくちゃ面白くて。そっからもう大学のレクリエーションとか全部飛ばして、毎日クラブに行く日々。

姫乃:せっかく東大入ったのに!

DARTHREIDER:一回だけ東大生目当てのOLさん達と合コンやって、自己紹介で音楽やってますって言ったら、将来はどうするのって聞かれたから、音楽で生活していこうと思ってますって答えたら、「どうしてそんな茨の道を!?」って叫ばれて、即圏外になって誰も話し掛けてくれなくなった。僕の数少ない合コン体験……。

姫乃:うう、何回聞いても泣ける話……。デビューライブから次のライブってどうやって繋げていくんですか?

DARTHREIDER:オープンマイク(お客さんの飛び入り参加)があるクラブを調べて、一人で行ってたなあ。東大にはラップ好きな仲間はいなかったから、クラブで声かけて知り合い作ったり、時々殴られたり。

姫乃:なぜラップではなく手が出るのか……。

DARTHREIDER:元はといえば、ギャング同士の抗争から暴力をなくすためにラップで戦うようになったのにね……。まあ、僕は基本的にやられ役だから関係ないんだけどさ。でもクラブで仲良くなった人を自宅に呼んでラップして、一緒に曲作って、MICADELICってグループを作ったりもできたし。絵を描く奴とか、スケボーやってる奴もいたなあ。

姫乃:非常に青春っぽくて素敵ですね。

DARTHREIDER:みんなお金ないから、クラブのチケット代払えなくて、「出演者になれば払わなくていいじゃん!」って、5分しか出番ないのに15人で押しかけて舞台でラップしたら、途中で止められました。池袋bedのじょも君、あの時は呼んでくれたのにごめん!

姫乃:なるほど、今日東大を中退した理由がわかった気がします。

DARTHREIDER:学生課で、「(卒業するのは)物理的に無理」って言われて、すいませんでしたって感じ。本郷のキャンパス遠かったんだよ……。言い方悪いけど、父親が死んじゃって怒る人もいないと思ってフェードアウトしちゃったんだよね。大学3年生の時にちょうどP-VINEからCDも出てたから、プロはプロだ……ま、いけるだろと思って。その後またすぐに新譜も出したし、エイベックスからも出せたし、ビクターに移籍して、給料もちょっともらえてたしね。

姫乃:ダースさんってもちろんラッパーとしての経歴もすごいんですけど、運営側として活動しているのも特徴的ですよね。

DARTHREIDER:<Da.Me.Records>ってインディーズレーベルを立ち上げたんだけど、アーティスト自身がレーベルを運営するのってあの頃なかったから、多分初めてだったと思う。ビクターでコンピレーションCDのディレクター仕事を少しだけやってたんだけど、あれこれ人が挟まってるからお金かかるだけで、これ自分でもできるなと思って、自分たちで作った音源の流通まで始めたのがきっかけ。無名だから安価にしたのが当たって、リリースする度にチャートインしてたんだけど、だんだん規模が大きくなってきた頃に脳梗塞で倒れちゃって、本格的に手が回らなくなっちゃった。またひとりで好きな音楽でもやるかと思ってたら、漢(鎖グループ代表)から一緒に会社やろうって誘われて、今って感じです。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる