パスピエが語る、2016年以降の表現モード「ビートに新しいエッセンスを入れたい」

パスピエが見せる新しい進化

 パスピエから2016年第2弾シングル『永すぎた春/ハイパーリアリスト』が届けられた。前作『ヨアケマエ』のリリース時のインタビューで成田ハネダ(Key)は「バンドは2周目に入った。ここからまた自己紹介を始めたい」という趣旨のコメントをしていたが、今回のシングルもパスピエの個性と新しい進化が意図的に込められた作品に仕上がっている。今回も成田、大胡田なつき(Vo)にインタビュー。シングル『永すぎた春/ハイパーリアリスト』のコンセプト、制作過程などについてじっくりと話を訊いた。(森朋之)

「今後、“顔を隠す”という表現もあり得る」(成田ハネダ)

ーーシングル『永すぎた春/ハイパーリアリスト』のリリースに合わせて、パスピエのオフィシャルサイトで「大胡田なつきと成田ハネダ 初対談」が公開されましたが、あれはどなたのアイデアなんですか?

成田ハネダ(以下、成田):僕ですね。ずっと前から「音声インタビュー的なことをやったら面白いだろうな」って勝手に思っていたんです。リアルサウンドさんの取材で言うのもアレですけど(笑)、いまって文字の(インタビューを掲載している)ウェブ媒体が各ジャンルあるじゃないですか。文字には文字の良さがあるけど、発信のベクトルがもうひとつあってもいいのかな、と。音声だったら声のトーンも感じてもらえるだろうし、さらに意味合いが付加できると思ったんですよね。今回は自分たちのホームページにアップしたので、フォーマットとしてはかなり内側な感じなんですけど、初めて顔を出したことを含めて「新しいパスピエですよ」という発信をさせてもらっているなかで、自分たちでも補足できたらなって。どうして変わったのか、その意図を汲み取ってもらったほうがいいという気持ちもあったので。改めて大胡田とふたりで話すっていうのは、気恥ずかしい部分もありましたけどね(笑)。

大胡田なつき(以下、大胡田):私も「声が聞けるのはいいな」って思いました。ああいうふうにしゃべっていると、編集とかも出来ないし。

ーー対談のなかでも“顔出し”について触れていましたが、個人的には「“顔出し”って、そんなに重要?」みたいな気持ちもあって。新しい曲がきちんと伝わってくれば、顏を隠しても出しても、どちらでもいいというか。

成田:僕らもそっちよりの考えなんですよ、じつは。ただ、予想以上に……。

——“顔出し”に対するリアクションがあった?

成田:そうですね。今回もかなりインタビューを受けさせてもらったんですけど、第一声は9割9分「顔を出しましたね」だったので。改めて「メンバーが顔を出していないってことがトピックだったんだな」って思い知らされたというか。隠し方も曖昧で、よく見たら出てるし、ライブでも顔を出してたんですけど。

大胡田:そうだよね(笑)。完全に顔を出してなかったわけではないし、みなさんもあまり気にしてないのかなって思ってたんですけど、記事に取り上げていただくときに「ついに顔出し!」というのが多くて。私たちから「顔を出しました!」とは言ってないんですけどね。

成田:そうそう。「出しましたよね」と聞かれたら「そうですね」って答えるスタイルなので(笑)。顔出しに伴ってテレビに出させてもらったり、いままでやってなかったことにもトライさせてもらって。それもあったから、大胡田との対談で補足しておきたかったんですよね。

ーーいずれにしても音楽を伝えるための手段ですからね。

成田 そうですね。顔を出さないことで「じゃあ、ライブではどんなパフォーマンスなんだろう?」とか、よりピュアに音楽を求めてもらえた実感もあって。その良さはあったんですけど、ここまでバンドをやってきてーー今年の末にデビュー5周年になるのでーー発信する音楽にも肉付きがされてきたし、ずっと隠したまま10年も20年も続けるのは逆に非現実的な感じがしてきて。ただ、顔を出さないというのも手段のひとつだったわけだし、大胡田がよく言ってるように、今後、写真を撮るときに“顔を隠す”という表現もあり得ると思うんですよ。そのときにおもしろいと思えることを毎回やれたらいいな、と。



ーーなるほど。では、今回のシングル『永すぎた春/ハイパーリアリスト』について詳しく聞いていきたいと思います。前作『ヨアケマエ』のリリースのときは「これからバンドは2周目に入るから、改めて自己紹介していきたい」と言ってましたが、今回のシングルも当然、その流れにあるんですよね?

成田:はい。これまでのパスピエの“らしさ”を象徴するものは何だろう?と考えたときにたとえばニューウェイブっぽい音だったり、和のテイストが浮かんできて。それを2016年以降のパスピエとして表現しないといけないなと思っていて。お客さんに対してというより、それをやることで今後の自分たちが健康的でいられるんじゃないかと思ったんですよね。今回のシングルもタイアップが付いているわけではないので、身ひとつで披露するわけじゃないですか。だからこそ、昔から僕たちのことを知っている人たちにも、これから知る人たちにも届くような曲にしたくて。

ーーその意識はメンバーのみなさんも共有してるんですか?

大胡田:特に話したりはしないんですけど、たぶん、似たような気持ちだと思います。さっき5周年っていう話もありましたけど、活動を続けていくなかで、バンドに対する考え方も近くなってきてると思うので。

成田:うん、自然とそうなってますね。大半の時間を一緒に過ごしてるわけだから。

ーーサウンドだけではなく、精神的にもバンドらしくなっているのかも。デビュー当初は、成田さんの構想を実現するためのプロジェクトという印象もありましたが、いまは全然違ってますよね。

成田:だから見せ方も変えていかないといけないんでしょうね。バンドとしての肉体感から離れたことをやるのは、いまのパスピエにとっては嘘になると思うし、そこはアジャストさせていきたいので。

パスピエ「永すぎた春」

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