クラムボン・ミトの『アジテーター・トークス』Vol.2 バンダイナムコスタジオ・内田哲也

クラムボン・ミト×『アイマス』サウンドP内田哲也が語る、アイドルアニメ・ゲームに“豊潤な音楽”が生まれる背景

 

「DJ経験のある作曲者は鳴らし方を知っている」(内田)

――『アイマス』シリーズはアーケードから始まり、現在はライブも行なうようになりました。ゲーム環境もスマートフォンがメインになるなど、ハードとソフトは徐々に進化しています。その過程で曲作りやディレクションに変化はありましたか?

内田:アニメの楽曲を制作する際には、1回で聴いて残るような曲ということも意識しました。2回も3回も見てくれるわけじゃなくて、放送を1回見て離れてしまう人も中にはいるかもしれないという認識がサウンドチームにあったので。

ミト:ライブを通した変化はあったと思いますよ。「Star!!」(アニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ』1st SEASONオープニング・テーマ)や「Shine!!」(アニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ』2nd SEASONオープニング・テーマ)は、アレンジも含めて大きな会場で鳴らされるための曲のように聴こえましたし、逆に「READY!!」(アニメ『アイドルマスター』オープニング・テーマ)や「CHANGE!!!!」(アニメ『アイドルマスター』新オープニング・テーマ)にはその要素を感じなかったから、実際に内田さんがどう考えていたのかが気になります。

内田:おっしゃるとおりで、以前はライブの音にコンプレックスがあったのは確かなんです。「READY!!」や「CHANGE!!!!」をライブ会場で鳴らした時に、何かもっと良く響かせることができるんじゃないかと。

ミト:それは、スタッフやクリエイターチームが現場でその熱を感じるという経験をしないとフォーカスされないからだと思いますよ。アニメが終わった後の舞浜や横浜アリーナのライブでは、その経験を経たうえでの広がりを感じました。クラムボンも、家で作ってライブハウスで演奏するくらいの音楽だったのが、フジロックや野音で演奏したことにより、不思議なものでそこに合う音になっていったんですよ。

内田:確かに、大きな会場で聴いたときにはじめて「ここはこうしたほうがいいのかな」と気付けた部分が多かったんですよね。盛り上がり方もそうですし、細かいところだとキックの鳴り方も思っていたものと違ったんです。ミトさんはどうしてそこに気が付いたのでしょうか?

ミト:私、アニソンDJ(agraphとのユニット・2animeny DJs)をやっているので、フロアで他の曲と並べて掛けると見えてくるものがあるんですよ。

内田:確かにDJ経験のある作曲者は鳴らし方を知っていますね。例えば遠山(明孝)さんや井上くんのようなコンポーザーの曲は、割と大きいところで鳴らしてもちゃんと鳴ってくれます。小さいスピーカーじゃ聞こえない部分をどのくらいまで出せばいいのかという絶妙な部分も知っているんですよね。以前は僕は慣れていなかったので、逆に出しすぎちゃって、音が回った結果、あまりよくない状態になってしまったこともありました。

ミト:それ僕ら世代のベーシストあるあるですよ(笑)。低音を大きくして、ベースが気持ちよく弾ける状態って、実はバランスが悪いんです。ラインがしっかり見える程度にしておいて、低音をそんなに出さないぐらいが、一番バンドとしてハマりがよくなるんですよ。これは、トラックを作っている人間じゃないと回避できないんですよ。これに関してはドラムも同じで、打ち込みができる人はキックのバランスがわかっている。だから、プレイヤーである人こそ打ち込みをやったほうがいいと若い人には伝えたいですね。

(取材・文=中村拓海/写真=竹内洋平)

 

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