KEMURI 伊藤ふみお&津田紀昭が明かす、不屈の音楽精神「未来は明るいと言いたかった」

KEMURIが語る音楽への不屈の精神

「KEMURIである以上、流行り廃り関係なくやり続けたい」(津田紀昭)

ーー初めて海外に行った時のこととかは覚えていますか?

伊藤:最初は1997年でしたね。アルバムのレコーディングで行って、4、5本ライブやって。そのときはレンタカーと、友だちの車の2台で移動したんだけど……もうね、珍道中ですよ(笑)。ナビも携帯電話もないから、地図を頼りに。あれっ、今となってはどうやって移動してたんだろう?っていう感じだね。初めて行ったハコは、カリフォルニアの谷あいにあったんだけど、着いたら真っ暗で。西部劇に出てくるような、木造のログハウスだったんだよ。タウンホールみたいなさ。

津田:そうそう(笑)。そこではメインバンドのベーシストからアンプを借りることになってたんだけど、僕らの出番までに手配が間に合わなくて。慌ててPAと直接繋いで演奏したのを覚えていますね。

伊藤:お客さんも一体どこから集まってくるの?って感じで。暗闇の中からまるでゾンビみたいにゾロゾロ集まってきて(笑)。最終的には超満員になってたけどね。メインのバンドは地元で有名だったから。

津田:とても気持ちよく演奏できたし、すごく楽しい思い出になってる。

伊藤:色々あったなあ。メキシコへ行って、子供に金を巻き上げられそうになったこともあったし(笑)。翌年の1998年にはアメリカでスカが大ブレイクして。仲が良かったレス・ザン・ジェイクも、超人気バンドになった。で、今度は彼らをヘッドライナーにして、7バンドくらいで全米40箇所を回るというツアーに僕らも参加した。7週間くらいかけて回るんだけど、そのときは移動手段として4トンくらいのトラックを借りたんですよ。荷台に無理やり三段ベッドを取り付けたような車。

ーー快適でした?

伊藤:それがね、もんのすごく揺れるわけ。ガダガダ...じゃなくて、ドーン!ドーン!って(笑)。全然寝れないわけですよ。それはもう大変だったなあ。そのとき、レス・ザン・ジェイクはコーチで移動しているわけですよ。すっごい羨ましかった。

津田:車の中では、毎晩パーティーをやっているわけですよ。「いいなあ……」って思いながら眺めていました。

ーー今はSNSの普及などで、自分の好きなバンドを世界中から検索できるようになりましたけど、当時海外の人たちは、KEMURIの音楽とかどうやって知っていったんでしょう。

伊藤:あの頃はファンジン文化っていうのがあって。同人誌ですよね、手書きの。自分で買ったCDについて自由に書いて、A4くらいの紙にコピーして二つ折りにしたみたいな。せいぜい5、6ページくらいかな。本当にアマチュアレベルから、かなり立派なものまで沢山存在していた。そこで情報を集めた人たちが見にきてくれたんですよね。その頃の僕らは、Roadrunner Recordsってところに所属してたから、そこの広報がプロモーションしてくれて。それで受けた取材のうちの、結構な割合がそういったファンジンでした。

ーーへええ!

伊藤:あとはカレッジ・ラジオね。大学のキャンパス内で、学生向けの放送をしているラジオ局が、インディシーンを支えているところもあって。ツアー先に着くと、地元のラジオ局のインタビューを受けたりもしましたよ。ツアーマネージャーから小銭もらって、それで公衆電話からラジオ局に電話して「KEMURIのボーカリストの伊藤です」って言うわけ。なんで俺が電話しなくちゃいけないんだろう……とか思いながら(笑)。ファンジンのインタビューもそんな感じだったしね。で、そのうちにメールインタビューっていう方法も出てきて、しばらくは電話インタビューとメールインタビューを並行してやっていましたね。

ーー貴重なお話ですね。さて、今後の展望はどのように考えてますか?

津田:やっぱり、スカパンクというスタイルはずっと変わらず継承していきたいですね。そこはこだわりというか、KEMURIである以上、流行り廃り関係なくやり続けたい。「やっていかなきゃ」っていう、使命感に近いものがありますね。スカパンクって、僕らがやりだした頃にはすでに自分よりも若い子たちのジャンルっていうイメージだったんですよ。オペレーション・アイヴィーとかレス・ザン・ジェイクとか。そのシーンでは最年長クラスでデビューして、そこから20年経って未だにやっているわけですからね(笑)。僕らに影響を受けて、スカパンク・バンドを始めた連中も今結構いますけど、やっぱり僕らのやってるスカパンクとは違うわけじゃないですか。だからこそ、僕らが鳴らすスカパンクはちゃんと残していきたいっていう気持ちは強いですね。

伊藤:最近、カセットで音楽を聴くことが多くて。あまりの音の良さに驚いているんですよね。世の中の流れはレコードからCD、そしてデジタル配信っていうふうに進んで来ちゃったけど、果たしてそれで良かったのか? って思っちゃうくらい(笑)。カセットって音が劣化するって言われるけど、なんかあの温かみのある音にヒントがある気がするんだよね。

ーー劣化していく感じも良かったりしますよね。ぜひ、KEMURIも『サラバ アタエラレン』のカセットテープ盤を出してください。

津田:そういえば、自分たちのライブ音源をカセットにダビングして、それを海外ツアーで売ったりしてたよね。インデックスを自分で書いて、LAに住んでいるアメリカ人の友だちが描いたイラストをケースに入れてさ。

伊藤:あのデザインとかめちゃくちゃカッコ良かったよね。僕らの専属カメラマンをモデルにしてて。

津田:それをCD化しましょう(笑)。

ーー『サラバ アタエラレン』のカセットテープ盤はオマケにして。

伊藤:それ、いいなあ!(笑)

(取材・文=黒田隆憲)

■リリース情報
『サラバ アタエラレン』
発売:2016年6月22日
価格:【CD+DVD】 ¥2,500(税抜)
 【CD】 ¥1,200(税抜)

〈収録内容〉
CD
1. サラバ アタエラレン
2. Crappy Go Happy 
3. Dancing in MOON LIGHT
4. PAIN(Electric Version)

DVD
KEMURI 20th Anniversary Japan Tour “SKA BRAVO” At STUDIO COAST 2015.9.27
1.New Generation 
2. Knockin' on The Door
3. Prayer
4. Kanasimiyo
5. Live Up To Ya Rights!
6. Yellow Survivors
7. What Else
8. Tiny Square Room
9. Workin' Dayz
10. Ohichyo
11. PMA (Positive Mental Attitude)
12. Along the longest way...
13. Ato-Ichinen
14. 白いばら

■ライブ情報
KEMURI presents 「SKA BRAVO 2016」
8月24日(水) 大阪BIG CAT w/STREETLIGHT MANIFESTO
8月25日(木) 名古屋クラブクアトロ w/STREETLIGHT MANIFESTO
8月26日(金) 東京TSUTAYA O-EAST w/STREETLIGHT MANIFESTO

KEMURI WORLD TOUR 2016 in JAPAN
9月10日(土) 福岡 DRUM LOGOS
9月17日(土) 札幌 ペニーレーン24
9月24日(土) 新潟GOLDEN PIGSRED
9月25日(日) 金沢 AZ
12月2日(金) 仙台 Rensa

KEMURI WORLD TOUR 2016 (UK)
10月3日 Bristol, O2 Academy
10月4日 Sheffield, O2 Academy
10月5日 Birmingham, O2 Academy
10月6日 London, O2 Academy Brixton

KEMURI WORLD TOUR 2016 (US)
7月15日 Denver, Colorado Ogden Theatre 
7月16日 Las Vegas, NV Vinyl @ Hard Rock Hotel
7月17日 Tempe, Arizona Marquee Theatre
7月18日 Los Angeles, CA Club Nokia
7月19日 San Diego, California House of Blues
7月20日 Santa Ana, CA Observatory
7月21日 San Francisco, CA Regency Ballroom
7月22日 Portland, OR Wonder Ballroom
7月23日 Seattle, WA Showbox

■オフィシャルサイト
https://kemuri.com/

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