コブクロが考える、時代のど真ん中にある音楽 「どんなテーマで書いても統一感がある」

コブクロが語る、時代と音楽の関係

 名前のない世界から、時をこえた世界へ――。コブクロ、2年半ぶりのニューアルバム『TIMELESS WORLD』は、10年前のミリオンセラー『NAMELESS WORLD』の続編とも言うべき作品だ。それぞれのアルバムに収められた代表曲「桜」と「未来」との繋がりや、ジャケットの相似性など、様々な仕掛けもさることながら、楽曲の完成度の高さと込められた思いの深さが、ふたつのアルバムの最大の共通点。黒田俊介、小渕健太郎は、何を思ってこのアルバムを作ったのか。そして、今の音楽シーンにおいてコブクロとは何なのか。濃密なインタビューは、なぜか“最近またカラオケにはまってる”という小渕の発言から、ゆるくスタートする。(宮本英夫)

「シンプルに歌いたいと思うメロディラインじゃないと、残らない」(小渕健太郎)

ーーカラオケ、よく行くんですか。

小渕:行きますね。カラオケは変わらず好きですけど、ここんとこもっと好きで。なんかね、歌いたい衝動がすごいんですよ。自分のライブはもちろんなんですけど、友達がパッと集まって、自分以外の歌を歌う時間の楽しさったらなくて。それに影響されて新しい歌もできるし。

ーーあ、そんなことも。

小渕:ありますあります。カラオケの楽しさは、家でCDを聴くのとは違うんですよ。人が歌うということに対するエネルギー感なので。しかもその歌は、最新の歌じゃない。20年前の邦楽だったり、僕らが高校時代に聴いていたバンドだったりして。そうやって、古きものから新しいものが生まれるサイクルが、今は気持ちいいのかもしれない。

――それは、今回のアルバムを聴いてもすごく思いました。常に温故知新と言いますか、コブクロの曲には花鳥風月の要素がふんだんにあって、そこに時の流れという縦軸があって、ラブソングやメッセージがある。極端に言うと、それって万葉集の昔からあることだよな、と思ったんですよ。

小渕:なるほど。

――そういうことを、新しいアルバムを聴きながら、しみじみと考えたので。昔からずっとあるものを、温故知新していってるのがコブクロの歌なんだろうと。

小渕:あの、時々、音楽のルーツを聞かれるんですよ。自分でレコードを買ったのは、最初はチェッカーズとかマッチから始まって……とか。でもその前があったことに、最近気づいたんですね。僕の親は民謡の先生をやっていて、僕はその中で育ったんです。日本民謡というものは、みんなでエンラコラと仕事しながら、山に向かって“今日も頑張るぞ~”と歌うところから始まってるんですね。お祝い事にはお祝いの歌を、人が亡くなった時には悲しい歌を、みんなで歌うんですよ。だから大きな声で歌わないといけなくて、100メートル向こうで畑を耕してるやつと一緒に歌うのが民謡なんです。それが100年200年続く、古き良き日本民謡として歌い継がれている。それがもしかして、僕の本当のルーツなのかな?と。

――そうかもしれない。通じるものがある気がします。

小渕:日本民謡って、元を歌ってた人のCDはないんですよ。どれかが元になって、歌い継がれたものが録音されているだけで。三味線もただ、譜面しかなくて。

黒田:歌舞伎と一緒だな。口伝いで。

小渕:そう。そういうふうに、口伝いで伝わっていくもの。そこが僕のルーツなのかもなと思うようになって、“口元に残る歌をいかに作るか?”に特化している、最近の僕のあこがれの理由はそこにあるのかもしれない。そうなると、小難しい小手先はいらないんですよ。シンプルに歌いたいと思うメロディラインじゃないと、残らないから。歌いづらい歌は、なかなか残らない。そのためにいろんな曲を作るんですね。「SNIFF OUT!」みたいな曲を作ったら、また別の曲を作って、最後に「STAGE」みたいな曲ができたぞ、みたいな。全部に欲張るとやっぱり無理なので、いろんなものを作るんですけど、今はそういう、口ずさめる曲を作るというのが大きなテーマですね。特に活動再開(2012年)して以降は強く思います。

――確かに。あの頃から、ライブ先行でどんどん新曲をやるようになりましたよね。それは、そういう衝動があったから。

小渕:それもですし、本当に好きなものにしか惹かれない自分がいるんですよ。一度ああやって休んだりすると、また始める時に、ただなんとなくじゃなくて、これをやりたいんだ!という音楽的精神を、黒田も持ってほしいし、僕も持ちたい。そう思うと、おのずと歌いたい歌を作るという基本に帰りますよね。

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