パスピエがバンド“2周目”で突き詰めること「説明に困るような純度の高いものを目指したい」

パスピエが“2周目”で突き詰めること

「今年はちょっと『記号的な感じ』にしたい」(大胡田)

――カバーの話が出たので3曲目「金曜日の天使」についても訊きたいのですが、電気グルーヴ、コーネリアスときて、今回は近田春夫&ビブラトーンズ。楽曲のセレクト含め、渋い選出が続きますね。

成田:今年はシングルを含め、表面として見せていく部分では、ある程度やりたいことも固まっているので、そこに対して逆張りしたいという気持ちはあります。それに加え、カバーをするうえで若い世代がやらなさそうなものであり、個人的に良いと思っている曲を再提案したいという取り組みですね。僕らを通じて10代の子がビブラトーンズにハマるとしたら、それは本当に嬉しいことですし。

――確かに、近田さんを通っていない世代にとっては新鮮なのかもしれません。カバーだと、大胡田さんが普段使わないようなフレーズを歌っているのもまた聴きどころですよね。今回だと<メンソールの洋モクが>とか(笑)。

大胡田:「洋モク」はさすがに使わないです(笑)。

成田:でも、当時の尖ってる言葉って面白いよね。

大胡田:良いですよね。パスピエの歌詞にも古文的な、昔風の言葉を入れることはあるんですけど、20~30年前の言葉ってなかなか使いづらいですから。近いけどすごく遠く感じるというか。その言葉をリアルに使っていた人がまだ生きていると、使いにくいですよね。だからこそ、歌っていて楽しいですし、乗り物に乗っているような気持ちになります。

――続いてアートワークにも触れたいのですが、今回はこれまでのシンプルな感じがなくなっていて驚きました。中を開くと劇画調にもなっていて。

大胡田:『Live at 日本武道館“GOKURAKU”』のジャケットを描いたことをきっかけに、白黒にハマり出しまして。『ヨアケマエ』のジャケットに女子高生を描いたのは、歌詞の<革命は食事の後で>を思いついたあと、自分の中で革命的だった時期として高校生時代がそうだったなと思ったので。

――大胡田さんの描くアートワークには、時折セーラー服の少女が登場しますね。

大胡田:私の中で、セーラー服を着ていた時期って“黄金時代”なんですよ。小さいころから着たいと思っていて、大人になった今でも憧れる気持ちがあって。どこへでも行けるし、どこにも行けなかったりするというか。アートワークに関しても、書き込みをしたり色を塗ったりと、『娑婆ラバ』までの作品である程度やりたいことはできたので、『ONOMIMONO』や『わたし開花したわ』のように、2色のみを使うという制約を掛けていた頃の表現に一回戻ろうかなと。成田さんが“2周目”と言っていましたが、私のアートワークに対する考え方もそれに近くて。

――今回は絵のタッチも変わりましたか?

大胡田:白黒を描くうえで漫画っぽい線にしたいなと思って、原稿や下書き、トーン貼りに色塗りまで一通りできるソフトに変えたんです。中面には集中線も描いてみたりと、いまはすごく楽しいんですよ(笑)。

――ただ、背景はこれまでの白塗りからカラフルなものに変更したりと、シンプルな表現には戻りつつも、少し手心を加えているように思えます。

大胡田:はい、今年はちょっと「記号的な感じ」にしたいなと思って。だから女の子も模様のように配置して、すごく意味があるわけじゃないんだけど、意味があるようにしているんです。

――パスピエが得てきた記号性を、ライブの場やフェスにおける30分の出番で表現することについて、成田さんは以前「外向きのセットリストを用意して、フェスミックスCDでより深いところに入ってきてもらう」と発言していました。『娑婆ラバ』や『ヨアケマエ』の楽曲が加わり、今後はどう変化していきそうでしょうか。

成田:まさにメンバーとも話し合っているのですが、フェスに参加はしても、その中に溶け込むのではなく、パスピエはパスピエらしくいたいと思います。『娑婆ラバ』や『ヨアケマエ』の楽曲が加わって、対外的なライブをどうするかというのは、夏以降のテーマになってくるでしょうね。

――今後リリースするであろう楽曲については、どういったテーマを?

成田:曲作りに関しては、個人的に“ミドルテンポなアッパー”をテーマに掲げています。ただ、ミドルテンポといっても、現在のロックバンドの多くがBPM170以上のものをアッパーとしているなかで、その水準から下げる音楽をやっても見劣りせず、かつ新しいものを見せて盛り上げていきたいんです。ただ、盛り上げるにはアッパーな曲を作らないといけなくて、テンポはミドルでもそれっぽく聴こえる曲をと思ったのが「ヨアケマエ」で。その勢いを途切れさせないように、今年はシングルをいっぱい出そうと考えています。

――成田さんは先ほどパスピエが“2周目に入った”と言いましたが、シングルを多くリリースするのは2周目の感覚を掴んでいくという意味合いもありそうですね。

成田:そうですね。改めて自己紹介をしないといけない年だと感じていて。それをするにはアルバムという塊じゃなく、名刺代わりになるシングルを何作も出す必要があるかなと考えているので、期待して待っていてもらえれば嬉しいです。

(取材・文=中村拓海)

■リリース情報
『ヨアケマエ』
発売:2016年4月27日
価格:
【初回限定盤】 ¥1,111(税抜)
【通常盤】 ¥1,000(税抜)
※初回限定盤仕様
スペシャルパッケージ仕様

『Live at 日本武道館”GOKURAKU”』
発売:2016年4月6日
価格:¥4,000(税抜)
※初回プレス仕様:豪華ジャケット仕様・ライブフォトブック付
(ジャケット写真は初回プレス分を表示。通常プレス分は三角形部分が金色でなく白抜)
※メンバーによる副音声収録
※オフショット映像収録

■ライブ情報
「パスピエ presents 「印象E」」
大阪公演
6月13日(月) 大阪・なんばHatch
開場 18:00 / 開演 19:00
出演:パスピエ+androp

名古屋公演
6月15日(水) 名古屋・Zepp Nagoya
開場 18:00 / 開演 19:00
出演:パスピエ+フジファブリック

東京公演
6月17日(金) 東京・新木場STUDIO COAST
開場 18:00 / 開演 19:00
出演:パスピエ+UNISON SQUARE GARDEN

■オフィシャルサイト
http://passepied.info/

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