夏木マリはさらにラディカルになっていく 石野卓球、ゆず岩沢らと目指した新境地

 そのことは、他のアルバム収録曲で顕著に現れています。冒頭の「Happy Together」は、GIBIER du MARIEを思わせるブルージーでハードなロックに徹しているし、忌野清志郎が亡くなる1年前に曲を提供してくれたという「神様へ」も同じ路線で硬派なサウンドに乗せたボーカルを聴かせてくれます。また、フラワーカンパニーズの鈴木圭介が曲を書いた「マグダラのマリア」もロック色が強いとはいえ、どこかシャンソンのような情感を感じさせるのが面白いし、電気グルーヴの石野卓球とのコラボとなった「逆走BBA」にいたっては、若者への怒りを吐露しながらダンサブルなエレクトロ・ロックに昇華しているという異色作。

 しかし、それら以上に強烈な一撃が、自身で詞曲を手がけた「60blues」でしょう。そのタイトルから想像される通り、これまでの60数年の人生を総括するような内容の歌詞で、レイジーなスロウ・ブルースの演奏に乗せてドラマティックに語っていくのです。女優ならではの表現力というにはストレート過ぎるくらいですし、ここまで自分の感情をさらけ出したベテラン歌手も異例ではないでしょうか。ロック・ミュージシャンですら、年齡を重ねると落ちついた作品を作っていくはずなのに、夏木マリのラディカルでエキセントリックな表現方法は突風のごとく前のめりになっていて、とにかく圧倒されっぱなし。この新作を聴く限りでは、まだまだこの路線で突っ走って行くんじゃないかなと思わせてくれるのです。まさに、「今を楽しみたいよ ハシャギたい 葬式までさ」という歌詞の通り、ライヴハウス・ツアーを敢行中の彼女は、そのままキレッキレに夏木マリ・ワールドを継続してくれることでしょう。

■栗本 斉
旅&音楽ライターとして活躍するかたわら、選曲家やDJ、ビルボードライブのブッキング・プランナーとしても活躍。著書に『アルゼンチン音楽手帖』(DU BOOKS)、共著に『Light Mellow 和モノ Special -more 160 item-』(ラトルズ)がある。

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