SMAP・木村拓哉、V6・岡田准一、嵐・二宮和也……ジャニーズとテレビドラマの深い関係を解説

 それまで学園ドラマは、スーパーマン的な教師の活躍ですべてが解決するような現実離れしたストーリー展開が特徴だった。それに対して、『金八先生』は中学生の実情にあったリアリティを追求した。具体的には、生徒ひとり一人が抱える受験や恋愛、将来や人間関係の悩みを丁寧に描いた。したがって、生徒ひとり一人がクローズアップされ、それぞれの生徒が主役の回があった。

 その結果、この新しいスタイルによって生徒各自のキャラクターがよりくっきりと出てくるようになった。そして視聴者は、それを通じて生徒に感情移入しやすくなると同時にそれぞれの魅力に引き寄せられていった。その代表が「たのきん」の3人だった。

そこには、アイドルファンとアイドルの関係性にオーバーラップするものがある。『金八先生』は、いわば自分にとってのアイドルを発見する喜びを視聴者に与えてくれたのである。だからこそ、ファンの好みによって人気も一人に集中することはなかった。「たのきんトリオ」自体は厳密にはグループではないが、ジャニーズアイドルがソロではなくグループ主流になっていく原点も、ある意味ではここにあるように思える。

 その後、学園ドラマからジャニーズの若手が世間に発見され、人気が出るというパターンは、松本潤、亀梨和也、赤西仁(元KAT-TUN)、高木雄也(Hey! Say! JUMP)、中間淳太(ジャニーズWEST)、桐山照史(ジャニーズWEST)らが生徒役で出演した2000年代の『ごくせん』シリーズ(日本テレビ系)くらいまで続く。

 一方1980年代後半には、学園ドラマをベースにしながら恋愛ものの要素が入ったドラマも出始めていた。田原俊彦が小学校の教師役に扮し大ヒットした1988年の『教師びんびん物語』にもその雰囲気はあるが、続く1989年の『愛しあってるかい!』で恋愛要素はよりはっきりと前面に出てきた。両番組とも、フジテレビ月9枠のドラマである。こうして振り返ってみると、学園ドラマから恋愛ドラマへとシフトしていった月9の歴史の一面が見えてくる。

 俳優・木村拓哉は、そのシフトのなかで登場した。彼のブレイクのきっかけにもなった1993年の『あすなろ白書』は、大学を舞台にした学園ドラマであり恋愛ドラマである。そこで木村拓哉が演じた取手治は主役ではなかったことも、先ほど書いた学園ドラマの視聴者によるアイドル発見パターンに当てはまる。その後人気を決定づけた『ロングバケーション』(1996年放送)では芸大卒業直後、同じく『ラブジェネレーション』では社会人3年目と、役の設定もステップを踏みながら、学園から離れていった。こうして見ると、恋愛ドラマの時代を象徴するアイコンになった木村拓哉は、学園ドラマ出身ジャニーズ俳優の進化形だったという見方も可能だろう。その後彼が、そこからさらに役柄や出演作品の幅を広げていったことはご存知の通りだ。

 学園ドラマできっかけをつかみながら、俳優としての幅を広げていったジャニーズは他にもいる。『ツインズ教師』(テレビ朝日系)でドラマデビュー、『白線流し』(フジテレビ系)に主演した長瀬智也もそのひとりだ。特筆すべきは、クドカンこと宮藤官九郎との相性の良さだろう。『池袋ウエストゲートパーク』『タイガー&ドラゴン』『うぬぼれ刑事』(いずれもTBSテレビ系)など数多くのクドカン作品に主演した長瀬は、クドカン脚本の根底に流れるテーマである「青春の永遠性」を最もよく体現する俳優だと言える。

 クドカン作品に出演経験のあるジャニーズは他にも多く、そのなかでV6・岡田准一、嵐・二宮和也、関ジャニ∞・錦戸亮などは、コンスタントにドラマで主役を務めるポジションになっている。映画の世界の話ではあるが、岡田准一と二宮和也がそれぞれ一昨年、昨年とジャニーズ勢として続けて日本アカデミー賞最優秀主演男優賞(岡田は最優秀助演男優賞とのダブル受賞)に輝いたことは、まだ記憶に新しい。

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