ジャニーズとスポーツの深い関係とは? 事務所黎明期から『究極バトル“ゼウス”』までの50年史

 今年2月11日、TBSテレビ系で放送された『究極バトル“ゼウス”』。櫻井翔をキャプテンとするジャニーズ軍と有吉弘行をキャプテンとする芸人軍に分かれ、アーチェリー、レスリング、サッカーのPKなどスポーツをベースにしたゲームで勝敗を決める。今回は、2015年に続いて2回目の放送だった。前回は負けたジャニーズ軍が芸人軍に「土下座」をするというシーンもあり、話題になった。今回はそれを受けて「第2章~逆襲のジャニーズ~」とのサブタイトルもつき、今後シリーズ化しそうな気配もある。

 見どころも多かったが、「ゼウスレスリング」などが個人的には記憶に残る。上半身裸に下半身は柔道着で帯を締めるというスタイルの二人が砂場でレスリング対決、相手の肩を5秒間地面に付ければ勝利というルールだ。どの試合も熱戦だったが、特に印象的だったのがHey! Say! JUMP・山田涼介とNON STYLE・井上裕介の再戦。両者精根使い果たした戦いは結局時間切れ引き分け。前回勝った井上が山田の今回の健闘と成長をたたえると、リベンジならなかった山田が悔しさをにじませつつも「レスリングの本たくさん読みました」と笑顔になった場面には彼の卓越したアイドル性があふれ出ていた。

 今さらではあるが、ジャニーズとスポーツのつながりは深い。元をたどれば、ジャニーズの歴史は50年以上前、ジャニー喜多川が東京・代々木のワシントンハイツで結成した少年野球チーム「ジャニーズ」に始まる。そこに参加した少年たちをメンバーに元祖ジャニーズが生まれた。そのことひとつ取ってみても、ジャニーズとスポーツは切っても切り離せない。

 例えば、「バク転」などもスポーツ的な要素があるからこそ、ジャニーズの代名詞になったように思える。私自身、かつてフォーリーブスのバク転をはじめて目の当たりにしたときの驚きは忘れられない。それまで曲の途中でそんなアクロバティックなことをする歌手は皆無だったのだ。その後少年隊など、さまざまなグループにバク転は引き継がれてきた。それが有名になるにつれ、シブがき隊などはバク転ができないことをよく自虐ネタにしていたものだ。ごく最近だと「体育会系ジャニーズ」がキャッチフレーズでもあるA.B.C-Zの塚ちゃんこと塚田僚一が公演中にステージでバク転連続30回という離れ業を演じて話題になった。

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(C)タナカケンイチ

 テレビでも、かつてはアイドルが出演する運動会、水泳大会、野球大会などが人気だった時代があり、ジャニーズはその中心になっていた。1970年代にすでにフォーリーブスや郷ひろみらの活躍もあったが、とりわけ1980年代のたのきんブーム以降、その傾向は強まったように思う。トシちゃんチームとマッチチームに分かれて、というようなジャニーズ同士の対戦形式が可能になったというのも大きかったのだろう。また当時は松田聖子や河合奈保子、さらに小泉今日子、中森明菜など女性アイドルが続々登場していた頃でもあり、テレビ局としてもアイドルを一堂に集わせる格好の企画だったに違いない。

 もちろんスポーツ自体が、アイドルの魅力をストレートに伝えてくれるジャンルでもある。ジャニーズのような男性アイドルについて言えば、まず「カッコよさ」が魅力として挙がるだろう。運動会や水泳大会であれば、最後は必ずチーム対抗リレーになってアンカーはジャニーズ対決、というのがベタではあるが盛り上がる場面だ。あるいは野球であればここぞと言う場面でヒットを打つ(三振を取る)とか、サッカーであれば大事な場面でPKを決める(阻止する)というかたちだろうか。それはそのまま芸能人としても「持ってる」ということにもなる。

 「素」の部分が自然に出るという点でもスポーツはテレビ的に優れている。競技や試合に真剣に集中する姿は、それだけで私たちを惹きつける。こういうときには、テレビの特性でもあるクローズアップが最大限の効果を発揮する。もちろん、逆の姿も魅力的だ。ベンチや控え席で談笑したりじゃれ合ったりする姿やミスしたり負けてしまったりしたときの悔しそうな姿も、同じくらいアイドルの「素」の魅力を私たちに伝えてくれる。

 スポーツのビッグイベントでのサポーターという関わり方も増えた。1990年代以降、V6を皮切りに嵐、NEWS、Hey! Say! JUMP、NYCboys、Sexy Zoneがバレーボールの世界大会の大会サポーター就任を機にCDデビューをしてきた。またオリンピック、サッカーのワールドカップ、野球のWBCなどでもジャニーズのタレントがサポーターや関連番組のキャスターを務めるケースも多くなった。

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